サイト内検索

6 地下水

06-01

どの地点でどの程度のサンプルに基づいて透水係数を決めているのか明らかにすべき。
また、難透水層の形状を示す平面図を書くためにはかなりの現地調査が必要である。結局、難透水層の把握は、科学的に意味がない。  

見解

花崗岩地域では、一般的には、地表付近が最も風化が進み、下位に行くに従って風化作用が弱くなります。それに従い、地下水の流れやすさを示す「透水係数」も、下位になるほど小さくなります。一般に透水性があると評価される値は、10-4cm/secオーダー以上で、ここでは、10-5cm/secオーダー以下を難透水層としました(土質工学会:地下水入門、1990)。
15例の会場候補地とその周辺における透水試験結果から風化階級DH(極強風化花崗岩(まさ土))の下部に分布している風化階級CL(強風化花崗岩)の上面が難透水層の上面と判断したものです。
難透水層の形状の作成には、既存のメッシュ地質断面図、「名古屋・瀬戸道路事業」に係るボーリングデータ及び本事業で行ったボーリングデータを加えて解析を行っています。
この様にして作成された難透水層の形状は、準備書のp.410の図1-8-5に示されております。

参考
  DL:極強風化花崗岩(まさ土)
  DM:    〃
  DH:    〃
  CL:強風化花崗岩
  CM:風化花崗岩
  CH:花崗岩

06-02

「透水性の低い断層粘土に遮られることから、断層を越えて流入する量は少ない」との考えは問題がある。(他に同趣旨5件)
深層地下水に関する論述がどこにも触れられていないし調査もされていない。そのことが準備書の最大の問題点である。
地下水位に影響がないとした論点に矛盾がある。花崗岩地域における工事が、砂礫層地域の地下水位に影響がないとはいえない。

見解

難透水層の表面形状や、その上に分布する不圧地下水の水位データを基に地下水面の形状を把握しました(準備書のp.412の図1-8-6)。
次にその地下水面の形状や難透水層の表面形状を基に西側低地の地下水涵養域の分水嶺を求めました。(図1-8-6中にハッチをかけて示した部分の境界)
図1-8-5や図1-8-6をみると、特に地下水涵養域南側については、難透水層の尾根部付近の表面形状が断層に沿って非常に狭く、しかもほとんど断層線に接近し、なおかつ難透水層の上部の地層が薄いことから、西側低地への地下水の大部分は北側で涵養されることが分かります。
従って、断層よりも南側の吉田川付近で予定されている地形改変地域における地下水の変化があっても、西側低地で利用されている不圧地下水の地下水涵養域に影響は与えません。
また、西側低地への地下水涵養地域において、地下掘削などの工事の予定はありません。  

06-03

地形改変による浅層地下水の流動変化を定量的に把握する方法がないから、事後調査に下駄をあずける言い方である。
工事着工前に深層地下水流動に関する定量的な調査を実施し、影響を予測すること(他に同趣旨2件)
地下水の追加調査を実施してほしい(他に同趣旨1件)  

見解

準備書p.956の追跡調査計画に示すとおり、水文調査については継続して行うこととします。
なお、調査の実施にあたっては、地域整備事業の事後調査等と連携を図りつつ行うこととしております。  

06-04

不透水と思われてきた山地内部あるいは深層には、地下水が充満し流動している。そして地下水層では地下水は、流域範囲をはるかに超えてつながっている。  

見解

深層地下水は地下深所に賦存するゆえ、地層の分布状況によってはかなり広い範囲にわたって流動します。本地域においては、水圧の高い東方(花崗岩分布範囲)から本地域を流下し、さらに下流まで移動していると思われますが、移動速度は大変小さいと考えられます。  

06-05

新住事業で大きく地形改変すれば、工事中を含めてこれまでとは全く異なる水文環境が出現するのであり、その環境影響評価こそ行わなければならないはずである。地形改変と開発に伴って浅層地下水の大変動が起これば、深層地下水への影響が起こると考えるのは当然である。
事業による地形改変が大規模になされ、市街地が開発されれば、開発地域の地下水位の低 下は明らかであり、深層地下水の動きは、これまでとは逆に、周辺から開発地域にゆっくり と流動すると考えなくてはならない。その結果地下水位が低下して、湿地の存在が困難にな ることが予想される。
深層地下水が流動してBゾーンの地下水が低下するには、開発してからおそらく数年~10年を要すると思われるが、その影響を軽視することはBゾーンの湿地生態系の破壊に直結する可能性がある。  

見解

地下浅所の浅層地下水は、地形及び難透水層の表面形状変化に大きく依存します。従って、掘削規模や地下水面の高さにもよりますが、地形改変などが行われれば、水位低下の影響のある場合があります。そのような影響の低減を図るため、改変部では表流水をできるだけ地下に浸透させる対策をとりますが、浅層地下水が低下した場合の深層地下水への影響については、深層地下水は極めて緩慢に移動する特性や、会場候補地東側の相当広い、かつ地形から判断して水圧の高い供給源が控えていること等により、深層地下水が低下したり、それを補うべく水圧の低い下流から逆流することはないと考えます。  

06-06

水文学的には切り土の分だけ地下水位が低下することになる。それに加えて、調整池に流入する分だけ、土地に浸透する地下水量は減少し、地下水位も低下すると考えなければならない。  

見解

地下水利用域の地下水涵養域において地下水に影響を及ぼす工事は行いません。それ以外の地域においても地下水への影響に留意した工事計画を検討します。  

06-07

深層地下水においては、断層破砕帯や節理の発達の程度によっては極めて透水性がよくなる場合がある。現場透水性試験は比較的簡単に測定できるのであるから、既存のボーリング孔を利用して各地で試験を実施し、花崗岩の「難水性」の実態を把握すべきである。  

見解

透水試験については、15ポイントにおいて実施されており、このうち、深層地下水の賦存する花崗岩の地層中では6ポイントにおける現場透水試験が行われております。この結果、同層の透水係数は10-5cm/secオーダー以下であることが判明しております。  

06-08

深層地下水流動に関する柳澤の調査手法は、地質構造が単純な本地域においては、それほど大規模な予算を投じなくても調査可能と思われる。是非とも実施すべきである。  

見解

花崗岩中の地下水の流動形態を把握するための数値計算が、最近行われ始めていますが、このような場合は、割れ目中の地下水の流れを、大きな空間を一つの単元として捉え、あたかも多孔質媒体であるとして数値計算を行っています。最近の報告では、宮北、藤崎(1992)(応用地質33巻1号)が吉備高原地域の花崗岩地域の深層~浅層地下水を対象として数値計算を行った例がありますが、これによると、CL級以下の地下水の流れはほとんどなく、まさ土(DH級)に賦存する地下水のみが流動すると考えてよい結果を得ています。
類似事例における計算の結果から深層地下水は、極めて非常に緩慢にしか動き得ないものと判断されます。  

06-09

新住事業の準備書・資料編p.21~24に、地下水流モデル、水循環モデルが示されているが、これが準備書にどう位置づけられているのか示されていない。これを利用して開発による水文環境の変化を定量化するためではないか。  

見解

水循環モデルは、準備書(p.419~p.424)その他(河川流量等)のところで使用しております。地下水流モデルは、準備書(p.415)地下水の予測で触れています。ただ、地下水流モデルは、図1-8-8(p.415)で示すように、地下水涵養域において掘削工事が行われる場合に使用する予定でしたが、地下水利用に影響を及ぼす地下水涵養域で掘削工事が行われないため、今回は、使用していません。  

06-10

日流量、比流量、クイックフローの図をみると、吉田川で降った雨がどこに流れていくのか不思議に感じた。素人にも分かる説明がほしい。  

見解

流量観測を行った吉田川流域の表層付近の土壌及び地質状況により、降雨はほとんどが、一旦地下に浸透することが考えられます。  

06-11

地下水位の予測と、生物多様性の評価は、矛盾しており、環境影響評価をやり直すべき。 

見解

地下水位の予測・評価は、地下水を利用している会場候補地に隣接する西側低地付近を対象としているものです。一方、生物の多様性の項目では、局所的な対象地域について言及しているもので、対象が異なっています。
従って、地下水位の予測結果と生物多様性の評価は矛盾するものではありません。  

06-12

湧水地点、湧水量、帯水層調査結果を示せ(他に同趣旨1件)  

見解

湧水地点、湧水量の現地調査結果については、環境影響評価準備書・資料編p.55に記載しております。また、帯水層については、環境影響評価準備書p.409の地下水涵養域の概要で示しております。  

06-13

地下水位の「回避・低減のための方針」は、地下水利用地域に影響を及ぼさないだけでは不十分。  

見解

地下水の状態の変化が直ちに影響する会場候補地に隣接する地下水利用地域で影響が生じないことを予測・評価しており、それより下流域で影響があるとは考えておりません。  

06-14

地下水現地調査は年間を通した資料で評価すべきで、また最低水位の月を示すべき  

見解

資料編p.53に記載しております。その結果によれば、通年調査している地点での最低水位は、12月に最も多く現れていました。  

06-15

地下水の水質については既存資料調査を追加し、特に瀬戸市において総水銀が環境基準を超過していることを明記し、水銀に着目した現地調査をすべき。  

見解

愛知県の「公共用水域及び地下水の水質調査結果」(愛知県 平成9年6月)によれば愛知県下の地下水の汚染状況を監視するため、地下水の水質測定計画に基づき実施されている概況調査の結果、平成8年度に瀬戸市山口町で総水銀が基準を超過したことが判明しております。
このため、汚染井戸周辺地区調査が実施され、汚染の原因は、周辺に水銀を多く使用している事業所等がなく、当該地域の矢田川累層に含まれる亜炭層には通常より多く水銀が含むといわれていることなどから、当該地域の地層・地質に由来するものと推定されています。
現地調査は、地下水利用が行われている井戸2地点で水質調査を実施しましたが、総水銀は検出されませんでした。