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第5回「愛知万博検討会議(海上地区を中心として)」議事録

愛知万博の目的について(国、愛知県から説明)

□ 谷岡委員長

それで結構でございます。その主張につきましてはご議論の中で展開いただければいいと思います。では早速議論の方に入らさせていただきます。第一に、今日は愛知万博の目的についてという事で、国のほうから通産省の山田さんお願いします。

□ 通産省 

山田博覧会推進室長 万博はご存知のとおり大事業であります。国にも関係者は多くその考えを統合するということは困難でありますので、いわば万博専従者であります私の思いを今日お話をさせていただければと思います。
まず、万博とは何かということから考え始めてみたいと思います。大変大きなそして準備に時間のかかる、多くの労力を必要とするお祭りであり、そしてその挑戦的な実験の場であると考えます。開催の目的は、とすればさまざまだと思います。地域振興であったり産業振興であったり国際貢献であったり、あるいは現世的な利益を増進するということもあるなと思います。ただ、ここで強調しておきたいのは、その役割と言えば、万博がまず一過性で非常に大勢の人間が同時期に見る、あるいは触るという共通の体験をするという特徴をもった意思伝達手段と考えられるということです。すなわち、万博はコミュニケーションの道具であるというふうに考えております。大阪万博のときは多くの人がいわば人類共通の夢と信じられていたような将来の夢を分かち合い、明日のエネルギーへと変えていった、そんな気がしておりますが。今回の万博の目的は、人によってまた様々でしょう。でもここで重要なのは、「ではこの21世紀のこの段階において万博という意思伝達手段を使って考え、そして伝えるべきメッセージ、それがあるか。」と言うことだと思っております。
世界の現状を見ますと、これまでさまざまな委員からさまざまな形でご指摘があったように、人口の問題ですとか、食糧問題、あるいはCO2の問題とか、人類共通ともいうべき課題が山積みされており、この課題を解決していくためには、もちろん技術、あるいは制度的な枠組みというのは必要です。しかしそれに頼っても何ともならない、あるいはこれまでの発想、例えば、資源を堀りそれを使って何かを作り消費し捨てる、いわば直線的なものの考え方では何とも対応しきれない、あるいはこういう経済の仕組みでは対応しきれない問題も多くあるように感じられるわけです。こういう問題の対応と言うのは、多くの人々が自らあるいは連帯してその発想やら生活習慣を変えていくということも含めて、あわせて必要になってくる。そんなような課題が多いのではないかと思っています。そういう人類共通のともいうべき課題にどういうふうに対応していけば答えが見出せる可能性があるのか、ここで万博と私は申し上げたいのです。もちろん「万博で人類共通の課題が解決できる」そんなふうには思っていません。でも、多くの人々が楽しく体験を共有し、しかも一過性であるがゆえに新しい試みの挑戦しやすいこういう万博は、新しい取り組みをわれらがはじめるきっかけとして非常によい場であり機会である。こういうふうに思うんです。21世紀に国を挙げて万博を行うという意義はここにあるのではないかと思っております。本当に出来るのか、「言うは易く、行うは難し」と言ったところだと私は思っております。しかしもちろん簡単ではないでしょう。と申しますのは、「こうすれば問題は解決し人類の将来はばら色です。」というふうに示したところで、そんなことを信じる方はほとんどいらっしゃらないでしょう。むしろ目指すべき方向としては、世界の知恵を集めてその上で「このような課題があります。」「背景の事情はこのようなもので。」等などわかりやすく説明して、それからまた、「対応としてはこんな選択肢があります。」「これをやったらこういう問題があるし、こういうよい点もある。こういう悪い問題がある。」こんなものを出した上で、「さあ皆さん、どの道を通りますかお考えください。」と問うていくのではないかと思っています。そして表現方法も大切だと思います。難しいだけではだめですし、また手抜きをしても通用しないでしょう。今の時代、人々の目は非常に肥えているわけです。本当に感動や共感を呼ぶと言ったものは本物に接したとき、あるいはぎりぎりの努力の仕方、それに接したときだと思います。出来るだけ多くの人たちに、心に残る体験をしてもらいたい。明日に関係する、自然の叡智のテーマのもとで森の中での万博というものを目指す意義というのは、こういうところにも在るのではないかと思っています。この体験を終えてある人は一人で考え始めるでしょう。また家族や友人で相談、話し合う人もいるかもしれません。また万博会場のそこで隣の人と相談する人もいるかもしれません。もちろん対応の選択肢作りに、いわば準備の段階から参加される方も当然いらっしゃるでしょう。そこから何かの行動が始まるかもしれません。一人一人の小さな経験が、きっかけが、全体としては大きなうねりとなっていく。そういうふうになるかもしれません。そのうちいくつかが、例えば、愛知方式と呼ばれるようなものになって世界中に広がっていくとすればそれは大変すばらしいことだと思います。もちろんこの中にはハードとソフトが結びついた、しかも万博における挑戦あるいは実験の成果を引提げて将来の日本をリードするような産業あるいは人材が生まれてくること、これもあると思います。
余談になりますが、ファーストフード・動く歩道・洋式便所・などがはじめて実験されたのも大阪万博だと聞いております。過去に名前を残した万博同様、今度の万博はやはり難しいことに挑戦をしていくという立場になると思います。中身においても、運営方法においても、ではそういう万博をどこでなら実現できるのか。世界の人たちは日本でならそれが出来るのではないかと言ってくれました。私ども、その期待に応えたいと思っております。国としても自ら課すべき役割についてはきちんとそれを果たしていきたいと考えております。そして私の思いでいえば、「では日本の中でこれがどこなら出来るのか。」それはまさにこの地域だと考えております。なぜかというと、コミュニティー的新市民と申しますか、自立性が高く、しかも専門性も持つ一方で郷土を愛する気持ちが非常に強い。そういう市民が層をなしているところ。それが相当数いらっしゃるようなところ。しかも世界に冠たるもの作りの集積があるところ。そしていずれにしろ実験であり、挑戦をするわけですから、それを支えるだけの経済的、人的な懐の深さのあるところ。これが叶うところはわたしはここをおいてしかないと思う次第であります。この場で繰り返したいのは挑戦する気持ち、そしてそれを応援する気持ちです。地元ではすでに商工会議所さんの方で“1会議所1事業”というのを展開されようという運動がはじまるとか。やはり、さすがだなあと思います。もちろん博覧会協会さんも率先していろんな知恵を出していただかなければいけないというふうには思っております。大切なのは博覧会について、協会であれ誰であれ、誰かが知恵を出したら一生懸命応援する、励ますことだと思うのです。そしてその役割を一番期待できるのは、まさに地元の皆様だと思います。新しいことの挑戦することの難しさ、そのときに難しいと言わないでどういう解決方法があるのかということの尊さを今日お集まりの皆様、何よりもよくご承知のことだと思っています。皆様の手でこの地において挑戦する気持ち、それを励ます気持ちというのを育てていただきたいと思います。最後になりますが、万博そのものは一過性です。しかし、その成果は末永くソフト面、ハード面で街づくり、森づくり、人づくり、しいては国づくり、世界づくり、地球づくりにつながっていくものです。どうか地元のため、日本国のため、世界のためにこの地で万博を育てていただければと思います。以上です、ありがとうございました。

□ 谷岡委員長

ありがとうございました。本当に感動的でした。いわば一過性のイベントであればこそ挑戦的になりえて実験的になり得る。そこで、思いっきりの実験をやるんだということを語っていただいたと思います。そういう意味では初めて官僚言葉ではない肉声の言葉を聞いたと思いますし、山田さん自身の一人の人間としての思いという形で述べていただきました。それが実は本当に大切なことなんだろうと思います。検討会議を通じて皆が変わりつつあるのかなということで大変うれしく思いました。では次に、県は森局長のほうから意見を述べていただきます。

□ 愛知県 森国際博推進局長

愛知県の森でございます。私からは、愛知の地域づくりの視点から見た「2005年国際博覧会の意義、重要性」について申し上げたいと思います。今世紀の節目を迎えておりまして、社会経済の各面においてなかなか展望が開けない、一種の閉塞感が漂っているような状況だと思います。そうした時代の中でありますだけに、困難ではありますけれども地域の総力を挙げて挑戦するこの2005年万博は、甲斐があり、幅広く地域の人材を育て、活躍できる機会ということで、2005年万博は絶好のチャンスであるというふうに考えております。特に重要なことは、通産省の山田室長からもおっしゃっていただきましたけれども、愛知県で行われるということで、私ども愛知に住む人たちがその主役になるかということが大変重要なことだと思っています。さまざまな知恵を出し合って、広く共感を得ることが出来るかどうか、地元の熱意といいますか、共感が出来上がるかどうか。これが開催の成否の決め手になると思っております。この会議の席でもメンバーのかたがたから指摘をいただいておりますけれども、新しい形での博覧会はそういうことに向けてすでにスタートしているというふうに認識をいたしております。2005年博覧会の主要なテーマはいうまでもなく環境でございます。21世紀は環境の世紀として社会経済のあらゆる面で環境という視点がより重きをなす時代であると思っています。そういう点で愛知県は大都市圏の一役を担う県でございますが、都市に近接をしてこの会場地となります海上の森をはじめとする里山が広がっておりますとともに都市公園をはじめ、さまざまなタイプの緑地空間がネットワーク上に展開するという特性を持っております。これを21世紀にむけて地球の大きな資産としてとらえまして、それを活かす形で人と自然の多様な関わりを具体的に示していきたいというふうに思っております。
具体的に申し上げると、例えば、海上南地区を博覧会会場として活用するにあたりまして、間伐材、これは県下には大きな森林がございますので、いたるところから間伐材が出てきます。徹底的にそれを利用した施設整備を図ったり、あるいは会場でのアトラクションの企画運営にあたって環境NPOの方々、NGOの方々、あるいはボランティアの方々の参加でありますとか、バックアップを全面的に得たいと思っております。
博覧会のプレ事業でございますが、国際機関の参加、協力も得ながら、環境分野の国際会議をぜひとも開催したいと考えています。 さらに、ご存じかと思いますが、豊橋市はごみゼロ運動の発祥地になっておりますが、この環境を主要なテーマとする万博の開催がきっかけとなって、人と自然の共生や、循環型地域社会の形成に向けたさまざまな地域活動が立ち上がって着実に成果を上げることが出来るよう県としてもしっかり体制作りをしていかなければならないと考えます。
最後に県民の暮らしに直接かかわる面だけでなくて産業活動へのインパクトも含めて特に以下の3点から21世紀の愛知づくりにとって大きな意味を持つ博覧会としていきたいと思っています。
一つ目ですが、愛知の産業は自動車産業を中心に非常にグローバルな展開をしていますが、21世紀に向けて環境問題等を産業がどのように取り組んで今後展開をしていくかということです。それにつきまして博覧会というのは大きなきっかけとなる、大きな道しるべにもなるというふうに思っています。そういったことを通じて環境でありますとか、情報関連、あるいは福祉等などにつきましても新しい産業の創出と既存産業の高度化の促進につながる機会としていきたいと思っています。それを可能にする仕組み作りにつきまして、県としてもすでに博覧会のテーマに沿った環境関連の研究開発プロジェクトの推進に取り組んでおりまして、そうした成果を地域企業の技術移転や会場計画への活用に仕上げていきたいと思っています。大企業だけでなく中小企業やベンチャービジネスが博覧会に積極的に参加し、その存在をアピールできるといったことも積極的に取り組んでいく必要があります。
第二点目でありますが、博覧会を契機に環境分野を中心に公式出席者であります、外国政府とか国際機関だけでなくて、まさに地域のNGO,NPOあるいはボランティアの方々が参加する形で世界の方々と交流を深めてお互いに刺激を受けあう場とする。そのツールとして、もちろんインターネットなども効果的に活用していただきたい。
最後に三つ目ですが、環境にやさしい博覧会を実現する上で、また会場外で大きな広がりを持つ博覧会としていく上でも、情報・技術革命への対応はきわめて今日的な課題でありまして、県といたしましても地域の特徴を発揮できるIT分野であります高度交通システムなどの実用化モデル的な導入の場としていきたいと思っています。そうした地域選択の一環として博覧会の前年の2004年でございますが、アジアで開催されるITS世界会議の誘致をぜひとも実現していきたいと考えております。この検討会議で海上南地区を中心とする会場整備のベースとなる方向付けを行っていただきました。その後には会場計画などの詰めを急ぐ中で、こうした点についても皆様のお力添えをいただきながら肉付けを行って、着実に実現に結び付けていきたいと願っております。以上です。ありがとうございました。