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オオタカ餌場環境の代償的な配慮としての森林施業の現地計画について

これまでの調査結果(食痕調査・定点観察調査)から、青少年公園地区外の森林に生息するオオタカが青少年公園地区会場の一部を餌場(狩り場)として利用していることが確認されている。しかし、国際博覧会開催に伴う工事等によりこれらの餌場(狩り場)利用が減少する可能性があることが指摘されている。
そこで、当協会では、会場外の森林において樹木の除間伐をはじめとする施業を実施し、オオタカの餌鳥類の生息環境を整備することによって、青少年公園地区外の森林に生息するオオタカの餌場環境について代償的な配慮を目指していくこととした。
施業対象区域については、密生状態となった森林が多く、林床を広く見渡せる林は少ない状況となっているため、現状でのオオタカの餌鳥類などの生物の利用性は低いと考えられる。したがって、オオタカ及びその餌鳥類をはじめとする多種多様な生物の森林利用を可能とするため、林内空間の大きい森林や現状のまま遮蔽林等として維持していく森林等をモザイク状に配置するような施業方法を選定した。
なお、この森林施業の計画については、「国際博会場関連オオタカ調査検討会」の指導・助言を得て作成したものである。

1.整備方針

(1)施業実施区域の大部分は保安林指定区域(土砂流出防備)であるため、その機能を損なわないような施業方法を用いる。
(2)多様な動植物が生息・生育できるよう、多様な森林構造を配置する。
(3)森林としての状態を持続するために、上層木は切らない。ただし、衰退状態の樹木はその状況により伐採することがある。
(4)オオタカが林内で移動して採餌できるように、現状で密生している中~小径木を伐採して、樹間距離を確保する。また農耕地・草地と隣接する箇所は枝の一部を切る。
(5)山地崩壊、土砂流出が発生しやすい箇所での伐採は行わない。
(6)希少植物保護上の観点から、湿地及び湿地性植物の分布地とその上流域は施業対象としない。また、施業実施区域内の樹木の伐採に関しても、希少種は対象としない。

2.施業時期・期間

初回施業(除間伐を伴う)は本年内の着手・完了を目標とする。なお、その後の維持管理(下草刈り作業程度を予定)については、平成18年3月(会場撤去工事終了)までに年1回の施業を実施していくこととする。

3.施業実施区域

施業実施区域は、地権者との交渉、諸機関との調整を経た上で確保した会場外の3エリア(面積約51ha)のうち約14haを対象としている。なお、これらの対象区域の設定に関しては、事前に「地形」「地質」「土壌」「林況」「希少植物(博覧会に係る環境影響評価調査において指定した「注目すべき植物種」を対象)の存在」等に関する現状を把握した上で、希少植物の損傷防止、風害・乾燥害・斜面崩壊・水循環等への悪影響の回避、さらには周辺への風致に配慮するとともに、森林としての機能が今後とも持続可能と判断した区域を施業実施区域として設定した。

4.施業内容・方法

(1) 施業実施区域における整備区分と方法

施業実施区域における整備区分については、「地形」「林況」等を考慮して、施業の密度調整の程度による数段階の区分を設定した。さらに、除間伐対象樹木の選定については、「林況」「樹種」「胸高直径」等から現地における除間伐の可否を決定していくこととする。

(2) 施業方法

1 樹木の除間伐

密生状態の林の中から伐採樹木を選定して、除間伐を行うことにより、小中型鳥類(オオタカの餌鳥類も含む)が生息できるような空間や、オオタカにとっても狩り場利用しやすい空間の整備を目標とする。

2 枝落とし

樹木の枝を切り落とすことにより、森林内の透視度を高め、小中型の鳥類やオオタカにとっても森林内での移動がしやすい環境の整備とともに、林内の光環境を改善することにより、多種多様な林床の植物の生育を促すことを目標とする。

3 下草刈り

生い茂る灌木や雑草を刈り払うことにより、多種多様な林床の植物の生育を促し、昆虫類をはじめとする動物が生息できる環境の整備とともに、小中型の鳥類にとっての餌場、またオオタカにとっても餌場となりうるような環境の整備を目標とする。

(3) 非整備区域の取り扱いについて

施業を行う区域以外は、野鳥のための餌鳥類繁殖林・逃避林・遮蔽林・コリドー等と位置づけ、現状維持していくこととする。

(4) 伐採木の集積方法について

原則として、伐採木は森林内のコンター(等高線)沿いに集積する。また、土砂流出防備の観点から必要な箇所(侵食発生地・傾斜45度以上の直下等)にも伐採木を適切に集積する。また、これらの集積場所に関しては、林床の希少植物の生育ならびに植生回復過程に配慮することとする。