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ニュースレター No.14

No.14 2005/05/02

Contents

News

Love The Earth サラ・ブライトマン&アジアン・フレンズ コンサート

東儀秀樹さんとサラ・ブライトマンさん

 愛・地球博では、「愛・地球でつながろう!」を基本理念に、万博のテーマを表現する様々なイベントが企画されている。「Love The Earth」はその中のシンボル的なイベント。自然や地球とのつながりを再認識することを、音楽という世界の共通言語によって伝え、啓発してゆくもの。

 その一環として、4月12日夜、「Love The Earth サラ・ブライトマン&アジアン・フレンズ コンサート」が、愛・地球博会場で開かれ、英国の世界的なソプラノヴォーカリスト、サラ・ブライトマンさんがアジアのアーティスト3人と競演した。

コンサートは午後七時前に長久手会場のEXPOドームで始まり、ブライトマンさんがスパンコールをちりばめた白いロングドレスで登場。東京フィルハーモニー交響楽団の演奏をバックに代表曲「TIME TO SAY GOOD BYE」など8曲を熱唱した。ロンドンミュージカルでブライトマンさんの名声を一気に高めた「オペラ座の怪人」の楽曲のイントロが流れると、期待に胸膨らませたファンから大きな拍手が沸き起こった。3オクターブの音域を持ち、「世界で最も美しい歌声」と評される透き通った歌声は、観客の心を魅了した。


 また、日本の雅楽師、東儀秀樹さん、中国ニ胡(にこ)奏者のチェン・ミンさん、古箏(こそう)奏者のジャン・シャオチンさんが、ブライトマンさんの紹介で次々と登場。チェンさんがジャンさんと共に「LAST EMPEROR」など3曲を、東儀さんが、「NEW ASIA」など3曲を演奏した。ニ胡と古箏のやさしく美しく、そしてどこか懐かしい響きは会場の人々の心深くに染みわたり、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)の深く澄み切った音色は、西洋発祥のオーケストラの楽器が生み出す音色と溶け合いながらも、その独特の響きによって、会場に神秘的な世界を現成した。

コンサート最後の挨拶

 アンコールでは、「SCARBOROUGH FAIR」を全員で共演。ブライトマンさんの声と3人の楽器の音色が一つになり、約3,000人の聴衆から大きな拍手が送られた。

 この日、西洋と東洋が一つになって、世界に「Love The Earth」というメッセージが発信された。このイベントでは、今後も、世界的チェリストのヨーヨー・マ氏の公演などが予定されている。

パビリオン紹介 : Nature Contact 日立グループ館 ユビキタス・エンターテインメント・ライド

日立グループ館 外観

 北ゲート近くの 企業パビリオンゾーンB PDFに入ると、まるで、渓谷を流れる滝のように建物の一部を削って水が流れるパビリオンがひときわ目を引く。「Nature Contact 日立グループ館 ユビキタス・エンターテインメント・ライド」だ。

 パビリオンのテーマは、「Nature Contact ~日立のITで蘇る希少動物達とのふれあい~」。

 ユビキタスとは、いつでもどこでも映像・情報サービスを受けることができること。ここは携帯表示端末技術や映像処理技術などの最先端ユビキタス技術によって、絶滅の危機に瀕する希少動物を映像上で蘇らせ、来場者が希少動物と触れ合うことができるパビリオンだ。万博入場券には0.4mm角のミューチップ(超小型ICチップ)を埋め込まれ、1枚1枚に固有のID(認識番号)が付与されているが、この万博入場券と連動した様々なサービスの提供もこのパビリオンの特徴だ。


プレショーゾーンで使用する「Nature Viewer」

 受付で万博入場券を渡し、名前と顔写真を登録すると、情報表示端末「Nature Viewer」が渡される。「Nature Viewer」は日立グループの最先端技術である、モバイル機器向け燃料電池、大容量小型HDD「iVDR mini」、ミューチップリーダーが搭載された端末。重量は約600g。日本語の他、英語、韓国語、中国語の4ヶ国語に対応している。

 そして、「プレショー」へ。ここは、タイマイやクロサイなど、絶滅のおそれのある42種類の希少動物を紹介するゾーンだ。来場者は、首に下げた「Nature Viewer」をミューチップを埋め込んだアクセスポイントに近づけ、それぞれの希少動物のIDを読み取り、映像や写真データ等を好きな場所で再生する。


希少動物とのインタラクティブなコミュニケーション

 次に「メインショー」へ。16人乗りのライドで、「ジャングル」「サバンナ」「オーシャン」等、5つのゾーンを巡る旅だ。各ゾーンでは、希少動物の生息環境をリアルに再現したジオラマと3DCG(立体視映像)を融合した、最新の映像技術Mixed Reality(MR、複合現実感)を体験しながら、希少動物とのインタラクティブなコミュニケーションを楽しむ。

 ライドに乗車し、双眼鏡のようなアドベンチャースコープを目に当て、右手にはハンドセンサーを装着。ハンドセンサーは、希少動物とのインタラクティブなコミュニケーションを楽しむために使う。

 いよいよスタート。目の前に現れたガイド役のふくろう博士に、「ようこそ○○さん」、と突然自分の名前を呼ばれ、驚かせられる。ジャングルでは、右手にのせたバーチャルバナナを放り投げると猿たちが寄ってきて拾い上げる。また、突然、巨大なオリノコワニが口を開けて目の前まで迫り、思わず悲鳴。サバンナでは、車の警笛に怒ったクロサイが突進してくる。海中の旅では、巨大なマンタやイルカをじっくりと観察し、近づいてきた海亀を自分の手にのせ、自由に回転させることもできる。こんな動物たちを決して絶滅させたくない、と思う人も少なくないだろう。旅の最後には、動物たちに囲まれた自分の写真が目の前に映し出され、またびっくり。


 最後に「ポストショー」。万博入場券をディスプレイにかざすと、自分の名前が呼ばれ、先ほどの写真がスクリーンに映し出される。この写真は、自宅に戻って、日立グループ館のサイトにアクセスし、入場券に記載してある番号と来館した日付を入力すると、来館した翌日以降、万博開催期間中いつでも見ることもできる。至れり尽くせりの満足度の高いパビリオンだ。

Interview

ノーマン・モイヤー氏(カナダ) 愛・地球博 カナダ政府代表

ノーマン・モイヤー氏

 カナダ館では「多様性の叡智」というテーマを掲げ、我が国の自然環境と文化に見られる多様性を紹介しています。マルチメディアを利用した楽しい展示を通じて、カナダの森や海や平原において多様性がいかに大事かということを表現します。また、背景や経歴がそれぞれ異なる6人のカナダ人を紹介することで、カナダに住む人々の多様性もお見せしたいと思っています。

 愛・地球博について興味深い点は、まず、参加国、特に発展途上国の数が多いことです。発展途上国が参加できるように主催者が支援したことは、大変意味のあることです。それから、もう一つの大きな要素は、インターネット、ウェブサイトの効果的な活用です。万博は世界中のできるだけ多くの人に見てもらえるものでなければなりませんが、今回は、主催者や参加各国が開設するウェブサイトが、万博を世界に伝えるための重要なツールになっていると思います。我が国でも、ウェブサイト( www.EXPO2005CANADA.GC.CA )を通じた国内外への情報提供に大変力を入れています。

 当館の入口では、テクノロジーと人間を組み合わせた「テク人」と呼んでいる優秀なガイドが来館者をお迎えします。「テク人」とは、小型コンピュータや、カナダの風景や人びとの生活を映し出すスクリーンを身につけたパビリオンの案内スタッフです。ウェブカメラも装着していて、撮影した来館者の写真を私どものウェブサイトで紹介できるようになっています。


 パビリオンに来ることのできない方や、カナダの多様性についてもっと知りたいという方のためには、インターネットを介して参加できるようにしました。バーチャルスペースを設置し、カナダ人が自宅や国内各地の7つの協力美術館から、いつでも愛・地球博に接続できるようにしています。館内には3つのサイバー・エクスプローラ・ステーションがあり、来館者はカナダのバーチャルツアーができます。例えば、カナダの学校の子供たちに「多様性」をテーマとしたバーチャルギャラリーをデザインしてもらっていますが、世界中からインターネットを通じてそのバーチャルギャラリーを見て、カナダとカナダ人についてもっと知ることができるのです。サイバーステーションには、お互いにその場で直接対話ができるシステムも備わっていますから、是非、日本の子供たちも当館に来て、カナダの子供たちとの有意義な交流に参加してもらいたいと思います。

 万博とは、様々な世界の文化を紹介し、お互いに学び合うための理想的な場だと思います。「地球大交流」というのは素晴らしい言葉です。全世界の人の目が、愛・地球博に注がれることを願っています。

Column

群読 叙事詩劇 「一粒の種」

群読公演

 愛・地球博の数あるパビリオンの中で、来館者から高い評価を得ている人気パビリオンの一つが、瀬戸会場にある瀬戸日本館だ。

 瀬戸日本館は、「自然と生きる日本人の知恵・技・こころ~自然とつながる感性を取り戻そう」をテーマに、1階には7分間のプロローグが上映される映像空間、2、3階には、15分間の群読叙事詩劇「一粒の種」が行われる円形シアター、4階には2人の美術家によるアートギャラリーの3つのパートで構成されている。

 ここで、毎日15分間のライブ公演が十数回行われているのが、群読叙事詩劇「一粒の種」。群読とは役者たちが声を唱和する舞台演出のこと。2,000人以上の応募者の中からオーディションで選ばれた日本の若者66人が、2交代で公演している。

 まず、群読公演の前に1階でプロローグとして心地よい暮らしの原風景を音と映像で鑑賞する。
 ゆったりとした音楽とともに、沢山の和紙のスクリーン上に、花、太陽、川、雪が、そして、影絵のような月とすすきが現れ、蛍が舞う。音楽が突然アップテンポになり、無数の独楽(こま)が現れ、回り始める。様々な柄の扇子が宙を舞い、鮮やかな着物の帯が次々に川のように流れ出る。目を見張る美しい日本のいろどり。和太鼓、拍子木、鼓、掛け声など、様々な日本の音も映像と一つになる。息つく間もない7分間だ。


群読公演

 そして、いよいよ群読公演へ。2階にある円形シアターは300人以上の観客でぎっしり埋まっている。中央の円形の舞台を観客席が取り囲み、その観客席を、もう一つの舞台となる回廊が取り囲む。
 開演。照明が落とされ、透き通った女性の声が響く。神代を思わせる調べ。壁面のスクリーンに、炎、そして、岩に砕ける荒波の映像が映し出される。万物誕生のシーン。かすかに聞こえてくる巫女の祝詞。
 客席の間の通路から、舞台に向けて勢いよく沢山の若者達が駆け降りてくる。そして、客席の後ろの回廊にも沢山の若者が…。
 「変わらないもの」、男性の声。「変えてはならないもの」、男性全員の声。「変わっていいもの」、女性の声、「変わるべきものは」、女性全員の声。群読の始まりだ。
 中央の舞台から、後ろの回廊から、観客に放たれる言葉の数々。日本人なら誰もが幼いころに聞いたことのあるわらべ歌、童謡、童話の一節、祭りの掛け声の断片。
 「わっしょい、わっしょい」という祭りの掛け声で、若者たちがエネルギッシュに神輿を担ぎ、童女となった女性達が向かい合い、「せっせっせっ」と手を合わせて、かわいらしくわらべ歌を歌う。そして、静かに流れ始める楽曲“ふるさと”の調べ。


 2000年以上の歴史の中で、育まれた日本の言葉。その一つ一つの言葉と響きに、たまらない懐かしさ、弾ける喜び、切なさといった日本人だからこそ持つ様々な情感が引き出され、日本人以外の人々が聞けば、日本人の心の響きやきめ細かな情感に、言葉を超えて触れることのできる公演だ。

 一人のカナダ人女性は、「とてもエキサイティングな公演だった。日本語は判らなくとも十分伝わってくるものがあり、とても素晴らしかった」と公演後に語っていた。

 この公演の観客にはリピーターも多く、公演を重ねるたびに出演者一人一人の顔がきれいになっていく、という声がある。毎日の観客との真剣勝負が、若者達の心を研ぎ澄まさせ、そして豊かにしているのかもしれない。