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捨てずに活用、オカラクッキー・オカラ乾パンを開発-中部千年共生村(愛知万博)のワークショップで実演します-

平成17年2月18日

試作クッキー(愛知の魚:クルマエビ)

試作クッキー(愛知の魚:クルマエビ)

愛知県産業技術研究所食品工業技術センターでは、タンパク質、食物繊維、ミネラルなどの栄養成分を豊富に含むオカラを食品資源として有効に活用する技術開発に取り組み、乾燥オカラの粒度、配合割合、配合順序など原料と工程を検討することにより、小麦粉の25%を乾燥オカラに置き換えた乾パン・クッキーの製造技術の開発に成功しました。
このオカラ配合乾パン・クッキーは、愛知万博において中部9県が共同で開催する中部千年共生村のワークショップにおいて、4月22日から4月26日まで、小中学生を対象に資源の有効利用の必要性を啓蒙する参加型の実演製作品として採用されました。

1.研究の背景

我が国の豆腐・油揚げ等の生産額は約3,375億円、使用される大豆の量は約50万トンで、発生する生オカラの量は70万トンに達しています。このうち総菜などの食品加工用原料として利用されているのは約4%と僅かで、焼却処理される場合だけでなく、飼料、肥料として使用される場合もお金を払って引き取ってもらっているのが現状です。また、平成13年に施行された食品リサイクル法により、平成18年には食品循環資源(食品廃棄物のうち有用なもの)の20%のリサイクル等が義務つけられ、オカラの新たな利用法の開発が必要となっております。
愛知県は全国第2位(14年工業統計)の豆腐・油揚げの生産県で、排出されるオカラの量は、推定5万トン/年と膨大なものになっております。特に中小企業が多い豆腐業界では、廃棄物としてのオカラの処理は経費負担が大きく、企業経営を圧迫しています。
そこで愛知県産業技術研究所食品工業技術センターでは、タンパク質、食物繊維、ミネラルなどの栄養成分を豊富に含むオカラを食品資源として有効に活用する技術開発として、オカラを微生物で発酵させ、アミノ酸などの旨み成分が豊富な漬け床の開発や我が県が全国有数なお菓子の生産県であることからお菓子への利用技術に取り組んできました。

2.研究の内容と成果

におい、着色がほとんどなく、粒度も揃った高品質の乾燥オカラが製造されるようになり、その用途開発を求められていました。そこで、食パン、乾パン、クッキーの小麦粉を乾燥オカラで置き換える製造条件を検討しました。食パンでは、少量添加の場合は、しっとり感が有って良いという官能審査結果も出ましたが一定量以上添加すると蒸しパンのようになってしまいました。これは、オカラが小麦粉よりも保水力が大きいために、食パンを焼く条件では全体の水分が最適にならないためと考えられます。このことから、高温焼成と低温焼成の二段階で焼かれる乾パンがオカラを添加する食品として適していることが明らかとなりました。また、水をほとんど使用しないショートブレッドタイプのクッキーもオカラの保水力の影響を受けにくく、オカラを添加する食品として適していることが分かりました。
乾燥状態でオカラと小麦粉を混合して、オカラを製品全体に均一に分散させる方法よりも、オカラ以外の材料を全体の捏ね時間の約4分の1の時間捏ねてから、オカラを添加する方法がオカラの吸水量を抑制できることも分かりました。

(1) クッキーにオカラを添加する方法

  • オカラの粒度が150メッシュ(0.1mmのふるい目を通る大きさ)以下ならば、異物感が無く、口当たりがよい。
  • 小麦粉の種類と無塩バターのなどの配合割合で硬さを調節する。
  • 小麦粉などの生地はオカラ添加前に十分撹拌する。

(2) 乾パンにオカラを添加する方法

  • オカラの粒度はクッキー同様、150メッシュ以下がよい。
  • オカラの吸水分を見越して加水量をやや多めにする。
  • 小麦粉の種類とショートニングの配合割合で、膨らみ具合と硬さが調節できる。
  • オカラ以外の原料に加水、混合して十分吸水させてから、最後にオカラを添加する。

以上のように、特別な処理をしなくても、小麦粉量の25%以上をオカラで置き換えすることが可能となりました。

産業技術研究所食品工業技術センターは愛・地球博の「食べてみよう・作ってみよう・ためしてみよう」のメインテーマで中部9県が共同で開催する中部千年共生村ワークショップにおいて、環境教育や知育、体育、徳育に次ぐ教育として注目を浴びている食育の教材として、この成果をもとに「オカラクッキー」を提案し、ワークショップで4月22日(金)から4月26日(火)まで参加します。内容は万博キャラクターのモリゾー・キッコロをモチーフとしたオカラ配合クッキーの参加者による製作と50型ディスプレーによる展示を予定しています。

3.URL

(2月19日(土)午前9時からホームページに掲載)

4.試作品

(1) オカラ配合クッキー(ショートブレッドタイプ)の例/**

原料:小麦粉、乾燥オカラ、無塩バター、砂糖、食塩、水
   色素(抹茶、カボチャ粉末、ココアパウダー、イチゴジャム)

(左)愛知の魚:クルマエビ、(右)愛知の鳥:コノハズク

(左)愛知の魚:クルマエビ、(右)愛知の鳥:コノハズク

(2) オカラ配合乾パンの例

原料:小麦粉、乾燥オカラ、ショートニング、砂糖、食塩、ドライイースト、水

オカラ配合乾パン

オカラ配合乾パン

ワークショップ参加者には、無地のモリゾー・キッコロのクッキーの製作とオカラ配合乾パンの試食をしていただく予定です。

5.製造工程の概略

用語説明

○ オカラ

豆腐、油揚げ製造の副産物で、豆乳として抽出されなかった大豆の不溶成分(大豆重量の25%~30%)と搾りきれずに残った豆乳からなる。水分が70%~80%あるため、原料大豆の1.4倍ほどの重量になります。

○ 乾パン

水分の非常に少ないパンのこと。携行食、保存食として開発されたもので、大型と小型の2種類がある。非常食や農水省の災害用備蓄乾パンは縦8cm、横5.5cm、厚さ1.5cmの大型の物で、水分は6%以下である。陸上自衛隊や航空自衛隊は縦3.2cm、横1.8cm、厚さ0.7cmの小型のものである。一般に市販されている物は、小型の物です。

○ ショートブレッド

小麦粉、無塩バター、砂糖、食塩だけで作ることができる、イギリスの伝統的な素朴な焼き菓子です。ショートとは脆いと言った意味です。

○ 食品リサイクル法

「食品循環資源の再生利用の促進に関する法律」の通称で、食品廃棄物の発生を抑制するとともに食品循環資源の有効利用を促進することで、環境への負荷を軽減しながら持続的な発展ができる循環型社会の構築を目指して制定されました。取り組む順位は「発生の抑制」「再生利用」「減量」の順です。個々の食品関連事業者は、再生利用等の実施率を平成18年までに20%に向上させ、既に目標達成している事業者は、実施率の維持向上に向けて取り組む必要があります。

○ 食育

一人一人が健全で安心できる食生活を実践できるよう、「食」について関心を持ち、日頃から食の安全、食品の選び方や組み合わせ方、食文化などの知識を深め、自ら考える習慣を身につけられるようにする取り組みで、文部省、農林水産省などが学校教育の一環で実践しています。古くは、豊橋生まれの村井弦斎(1863~1927)が「食道楽」の中で、「小児には、徳育よりも、知育よりも、体育よりも食育が先」と述べています。

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