EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

愛・地球博で蓄積した「知的財産」を残して、日本はもちろん、アジア・世界へ発信したい。

森嶌 昭夫
財団法人地球環境戦略研究機関理事長
名古屋大学名誉教授

 

 先端テクノロジーについては、NEDOの新エネルギー実証プラントも含めて各種の新エネルギーを組み合わせ、博覧会自体を実証実験の場にした点が非常に意欲的である。リニモの導入や無人操縦のバス(IMTS)の導入、ロボットなど、会場の至る所にいろいろな最先端技術が導入されていることを評価している。バイオラングはヒートアイランド現象に対して効果があったし、竹を多用した日本館の建築上の実験も興味深い。忘れていけないのは、華々しい先端技術だけではなく、森の中の散歩道の浸水性の舗装材や端材、リサイクル材を使った建造物など、いろいろな実験をしていることだ。木炭を土中に埋めて排水性を高めた所もある。このような人目につかない技術についてもデータやノウハウを広く公開してほしい。最先端技術でなくても、伝統的な技術や忘れかけられた技術を再生して、安くて途上国で使えるようなエコロジー技術に注目したい。日本の農業やアジアの国々に貢献できるはずだ。博覧会協会が「自然の叡智」という理念の下に、いろいろな試みをしている。それらが費用対効果を含めて、どのような結果をもたらしたのかを評価し、発表すること自体が大きな財産になるし、博覧会というイベントを越えてアジアや世界のためになるのではないかと思う。さらに細かいことを言えば、グローバルループの下の植生はどうなったのかについて光を当てて評価をするとか、使用済み材の再利用はどうなったのかなど、さまざまな実験についても評価し、発信してほしい。現時点では私には評価できないが、大きな財産になるはずだ。今回学んだ自然の叡智を、すべて英語で世界へ発信しなければ、人類共通の財産にはならない。

 新しい社会システムに対する影響については、6ヶ月の会期では評価が難しい。しかし、日本館やグローバルハウス、他のパビリオンなども、環境教育臭がかなり強い展示なのに来場者は楽しんでいたようだ。博覧会自身がシステマティックに企画したのかどうかはわからないが、どのパビリオンも「自然の叡智」というテーマに真っ正面から向き合っているように思う。だから環境教育の巨大なメディアとして博覧会が機能したのではないか。リピーターもいるが、1600万人の人が環境教育を体験した。しかも人々が一日どっぷり浸かって体験することによって、たとえ社会システムそのものに影響を与えなくても、一人ひとりの価値観に何らかの影響を与えると思う。開会式の時の天皇陛下のお言葉にも環境問題が強調されていたことが、日本の社会をよりエコロジカルな方向に向かわせるきっかけになった。最終的には2000万人の人が、頭と身体で環境教育を体験した初めての機会となるだろう。これからのライフスタイルに影響を与えるであろうことは容易に想像できる。社会システムそのものを直接取り上げなかったとしても、社会システムの変革への大きな契機になる可能性はあると考えている。イベントなのにこれだけ真面目にやっていいのかと思うほど真面目な博覧会であったと評価している。

 私は、この博覧会の市民の参加に関しては、かなり初期の頃から関わってきた。海上の森の件で当時県や協会が市民に対する対応の仕方が適切でなかったこともあって、地元住民との集会等が紛糾し、市民集会で司会を務めた私が野次られたこともあった。この間の経緯では行政や協会の情報開示の姿勢が問われていたと感じるが、その後環境アセスメントなど協会は真摯に対応してきた。博覧会が開幕してからは、長久手会場や瀬戸会場の市民村では想像以上の市民団体が参加し、前例がないほど成功しているのではないか。生き生きとした表情の参加者達が印象的である。市民参加と言ってもアメリカなどでは市井の市民はあまり参加しないように思う。エリート市民というような、学識者や弁護士、元公職者が市民として参加しているように思うが、日本の市民参加は誰でも参加している。市井の庶民が多く参加していることを評価したい。企画や運営に関して、もう少し市民の意見を聞く余地があったのかも知れないが、市民参加の実験場としては成功したと思う。市民側からすると、大きなイベントに参加する仕方や喜びを体験したし、行政側からすると市民を取り込む方法論を身につけたのではないか。また、子供達の積極的な参加も評価したい。

 国際交流や相互理解の点では、日本という国が極東の島国である点でもともと物理的に難しいところがある。それにも関わらず、外国からの来場者は多かったと思う。また、外国からのイベントの参加、パビリオンの参加という意味では成功したと思う。はっきりと言えることは、日本側からの国際化という意味では大成功だと思う。今まで全く知らない国との出会いがあった。大国ではない、行ったことも見たこともない国の風景や産物、文化の一端に触れることができたのも良かった。外国の人に理解してもらえる、外国の人が来てくれたというのも重要だが、自国以外の人や文化を我々が体験できたことが大切である。

 最後に、博覧会全体としての計画・立案、準備、開催、評価などをしっかり記録して今後の財産として残してほしい。組織としても、例えばこの経験を世界に発信していくための財団などを残したらどうか提案したい。

2005.8.26 談

 

<プロフィール>
東京大学法学部卒業後、ハーバード・ロー・スクール大学院修了。東京大学法学部助手、名古屋大学法学部助教授、同教授、イェールロー・スクール客員研究員、ハーバード・ロー・スクール客員教授、名古屋大学法学部長などを経て、1998年から財団法人地球環境戦略研究機関理事長。名古屋大学名誉教授。2005年国際博覧会に係る環境影響評価会座長、中央環境審議会会長、 愛知県環境審議会会長、原子力委員会委員など歴任。

 

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