EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

愛・地球博を通じて環境意識に目覚めた日本人は、もう眠らない。

C.W.ニコル
作家

 

 愛・地球博の開催を通じて、愛知県や名古屋市をはじめ中部圏の人々の中で、自然環境や地球環境は遠い存在ではなく、自分達の身の回りにあるものだという意識が強くなったと思います。あるいは目覚めた、といってもいいのかも知れません。この環境への目覚めは、名古屋市南部の藤前干潟の保全活動をきっかけとし、その後の名古屋市民の徹底したゴミ分別の実践などを経て、今回の万博を機に顕著になったと感じています。

 私は、日本の森を再び野生動物の棲める豊かな森に戻したいとの思いで、17年前、長野県の荒廃した里山を少しずつ買い、再生活動を始めました。以後、さまざまな生き物が暮らせるようになったこの森を永遠の森にするために、「財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団」を立ち上げ、森を寄付しました。この森で起きることが日本中の森がよみがえるための一助となることを願ってのことです。
 森を大切にする理由は、土壌があり、微生物、昆虫、小動物、鳥類が生き、さらにさまざまな植生があり、それらが全部つながっていることが体感できるからです。また子供達に対する教育効果もあります。子供達が健康的な森に入ると、彼らの心の窓がぐんぐん開いていくのが感じられます。私達は、空気、水、森、川、海とつながっています。そして他の生命は私自身とつながっているし、全く別の人ともつながっています。ですから、愛・地球博の会場で、多くの人々が森林を体験できたことは素晴らしいことだったと思います。

 万博から離れたところでは、日本の森はあいかわらず危機的な状況に置かれています。例えば、松枯れの問題。車窓から見るだけでもわかるほど、死んだ松がいっそう増えています。事態はいっこうによくなっていないし、解決しようとしていないようです。手入れをしていないから、多くの森が死にかかっている。最近、妙高の森を歩いたら、害虫により70%以上のナラが死んでいました。健康的な木はある程度水分を保持していますが、死んだ木は乾燥し燃えやすくなり大規模な山火事の原因となります。不健康な森は、森の中の生き物だけでなく、私達の暮らしを危険にさらすということを知ってほしいと思います。

 愛・地球博では、多くの市民が環境問題への意識を高めました。これからは、高まった意識が具体的な行動に結びついてほしいと願っています。山歩きにペットボトルに入った水を持ってくることの異常さに気づくように、現在のライフスタイルを見直し、悪化した環境の異常さに敏感になっていきたいと思います。江戸時代に戻ろうというのではありません。せめて昭和30年代の日本の姿に近づけたいものです。その時代は食べ残しの食糧を捨ててしまうことはなく、古紙やガラクタはリサイクルされていた時代でした。井戸水や湧き水も安全に飲めた時代です。私は以前から、日本人が環境問題に目覚めたら、他のどの国よりも動きが速いと思っていました。愛・地球博でわき上がった地球環境を守ろうとのうねりが閉幕とともにしずまったとしても、目には見えない海底の流れがいっそう強くなっていくと信じています。海上の波より永続性と力を持っているのは海の底の流れ(undertow:引き波、底流)ですから。

2005.9.23 談

 

<プロフィール>
南ウェ−ルズ生まれ。17歳でカナダに渡り、カナダ水産調査局北極生物研究家の技官として海洋哺乳類の調査研究に当たる。以後、エチオピア帝国政府野生動物保護省の猟区主任管理官、シミエン山岳国立公園初代公園長カナダ水産調査局淡水研究所の主任技官、また環境保護局の環境問題緊急対策官等を歴任。1980年、長野県に居を定め、執筆活動を続けるとともに、1984年より森の再生活動を実践するため、荒れ果てた里山を購入。『アファンの森』と名付け再生活動を続ける。2002年、この森での活動や調査等をより公益的な活動とし全国展開するために(財)C.W.ニコル・アファンの森財団を設立。1995年7月、日本国籍を取得。代表作は『勇魚(いさな)』『小さな反逆者』『C.W.ニコルの黒姫通信』など。

 

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