EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

愛・地球博で得た環境志向の技術と感覚に、近未来の都市像を見た。

北川 啓介
名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻助教授

 

 建築に関する国際シンポジウムや国際会議、ワークショップを通じて愛・地球博に関わりました。その一つは、ウィーン工科大学と東京大学、東京造形大学、名古屋工業大学による学生ワークショップ(主催:名古屋国際デザインセンター)。「自然の叡智」がテーマで、「サスティナブルな建築像」がサブタイトルです。6月にオーストリア・パビリオンで各大学の学生によるワークショップを行い、9月に国際シンポジウムを開きました。学生達に「自然の叡智」をテーマに知恵を出し合い創造する場を提供し、その成果を形とし発表しました。ディスカッション、創造活動、展示もあり、若き叡智を持ち寄った国際交流と言えます。もう一つ、6月1日〜6月10日にかけて「インターナショナル・フォーラム・オブ・ヤング・アーキテクツ(IFYA)」という国際会議に関わりました。国内外の若手の建築家を集め、名古屋都心部の3カ所を課題に未来都市像を形にする試みです。また同じ課題で東海地方の様々な大学の学生を対象としたプレワークショップも4月〜5月に開催しました。

 博覧会のテーマに深く関わる「サスティナブルな建築像」について述べれば、「サスティナブル」という言葉が建築の分野に浸透してきたのはここ数年のことですが、今や建築において「サスティナブル」は欠かせないキーワードになっています。その背景には環境に対する人々の意識が大きく変わったことがあり、特に名古屋では藤前干潟の埋め立て反対運動が大きなターニングポイントだったと思います。以来、逆に名古屋市は、ゴミの分別を徹底しゴミの減量を推進しました。これが1999年の冬。この意識変化が博覧会にも大きく影響し、建物自体のリユース、リサイクル、リデュースを前提とした先駆的な会場計画につながったと思います。

 愛・地球博に関わるワークショップや国際会議等に参加することによって、若い学生達の環境を考える視野が広がったり、知識や分析力も深まったりしました。一例をあげれば、学生達がグローバルループを歩いた時に「万博会場には車が走っていない。車がないのに、人が集い、多くのイベントが開催されている。都市計画の視点で言えば都市の未来像につながっていくと思う」という感想を口にしていました。いわば、未来の街を連想できる会場でしたね。私も微妙な高低差をもつ幅のある歩行空間が各建物をつなぐということは、さまざまな状況を柔らかくつなぐ一つの手段として評価します。人が思い思いに歩ける幅の広いスペースが、未来の街づくりの大きなヒントになったと言えます。

 学生に限らず私達建築の専門家にとっても、愛・地球博で得た感覚は今後とも生きていくでしょう。土壁や茅葺き、竹など伝統的な材料と新しいテクノロジーとの組み合わせが広げた建築の可能性。瀬戸会場となった海上の森の自然環境を守るために、私たち建築関係者が自主的に研究したり提案したりした経験。開催までのさまざまな議論、市民・住民の反応や行動、意識の高まりは、建築における環境技術とともに今後の都市づくりに大きく貢献していくと思います 。

2005.8.23 談

 

<プロフィール>
愛知県名古屋市出身。名古屋工業大学大学院工学研究科社会開発工学専攻博士後期課程修了後、名古屋工業大学工学部助手、同大学院工学研究科講師などを経て2005年から助教授。博士(工学)。

 

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