EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

地に足の着いた夢を見せてくれた環境博覧会。

宇野 享
建築家 株式会社シーラカンス アンド アソシエイツ代表取締役

 

 直接的には愛・地球博には関わっていないが、長久手会場のグローバルループの構想を提示した菊竹清訓先生と原田プロデューサーによる建築雑誌での対談の司会を務めたことがある。菊竹先生はグローバルループの発案者であり、原田さんは実施設計をされていた。その時、菊竹先生が強調したことは、グローバルループという空中回廊は、愛・地球博に合わせて考えたものではなく、数十年にわたって菊竹先生達が国のプロジェクトとして研究し、日本の都市にどうやってオーバーラップさせるかということを考え続けてきたからこそ、今回グローバルループが成功した、ということだった。

 愛・地球博を現代建築の集合体と捉えて見ると、少し物足りなさを感じる。一方、環境博という視点からすれば、会期中よりも終わった後が重要だと思う。特にリデュース、リユース、リサイクルの3Rを追求する建築上の多様な提案が、閉会後、実際にどのように定着し、使用済みの材料がどう使われていくのかが一番重要だと考えている。中古の材料を使って新しい建築を建てる時に住民やクライアント側が理解・満足をしてくれるか。もしくは材料そのものの強度等も含めて、信頼性を担保できるかがすごく重要なテーマだと思う。博覧会の理念が市場原理の中で生きるかどうかだ。それは建築に限らず、NEDOによる新エネルギーの実証プラントについても同じである。言葉を換えれば、これからの消費者や市民の環境意識や行動が問われるのではないかということだと思う。

 具体的な各パビリオンの提案については、仮設の構造物・建築物だから実現できた工法や材料があることに注目したい。例えば企業パビリオン。限られた期間だけ耐久性があればよいということを前提として、新しい素材の可能性等が検証できている。発想から実現にこぎつけるそのプロセス自体にも価値がある。個人的に興味を持ったのはスペイン館の外壁デザイン。また三井・東芝館の「アクアウォール」の技術や、工事現場用の養生シートを活用した皮膜「オーロラウォール」はローテクではあるがそれが逆に新しく見えた。全体的に驚かされるような技術の提案は少なかったが、ただ実験室ではなく会場で検証できたということは大いに評価できる。一見してハッとするようなものは少ないという印象は、もしかするとそれは古い万博のイメージを追い続けているからであり、愛・地球博は参加者や観客が考える万博なのかなという気がする。私自身、建築家としての観察力、分析力が問われているような気がする。

 今後、私が生きている間に日本で万博が開かれることはもうない。その意味でいろいろな経緯を知ったり、コンペに参加したりと、実際に万博を体験できたのはかけがえのない経験だった。SFのような遠い未来の可能性を見せてくれたわけではないが、環境に対してローインパクトかつ実現可能な建築の姿を見せてくれた博覧会であったと思う。                          

2005.8.23 談

 

<プロフィール>
岐阜県出身。東京電機大学工学部建築学科卒業後、阿久井喜孝計画研究室を経てシーラカンス入社(現: CAn)。
現在C+A代表取締役、愛知淑徳大学、大同工業大学非常勤講師。

 

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