EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

人と自然が交流し共生できる環境創造の新しいモデルに。

伊藤 政博
名城大学理工学部・大学院理工学研究科 教授
環境創造学科長

 

 2005年は、地球温暖化防止のための京都議定書の発効により、温室効果ガス削減への国際的な取り組みが本格化するという重要な年となった。このような時代の流れと歩みをそろえるように21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」が開催され、人間と自然との共生の道が提案された。
  そこでは、環境に配慮した会場作り、環境負荷の少ない交通手段の導入や新エネルギーの実証実験、子供達を含む市民を対象とした多様な環境教育の機会の提供など、さまざまな環境配慮の取り組みが多くの来場者の関心を集めた。閉会後の構造物の解体撤去にあたっても環境配慮ガイドラインが定められており、廃棄物などの再利用など使用後の再生利用を図られることになっているなど、環境万博としての数多くの斬新な試みが興味深い。

 さまざまな環境技術がそれなりにうまく集約されていたという意味で、長久手会場の日本政府館を評価したい。建物を繭のように包み込んだ竹のドーム、生分解性プラスチックの外壁、間伐材を用いた構造、あるいは太陽エネルギーや燃料電池など新エネルギーを組み合わせた電力供給、光触媒鋼板屋根、オゾン処理施設による中水利用、さらに海水魚の「鯛」と淡水魚の「鯉」が同居できる「水」など、先進技術の大規模な実験場となっていた。また、中部千年共生村の外壁には、インドネシア・ジャワ島に生息しているガの一種クリキュラの繭から採取した黄金の糸で作られた繊維パネルと和紙パネルが用いられている。生糸も和紙も生物資源であるためパビリオン解体後に埋め立てても土に還るという。
  水環境に関わる教育研究に携わる者として、小学生にも容易に理解できるよう迫力ある映像や音響などを駆使し、いくつかのパビリオンのみならず会場の地形そのものを用いて、地球規模での水循環や水の大切さ、水の不思議さ、素晴らしさ、魅力に関する展示が実験を交えて分かりやすく解説表現されており、非常に多くの来訪者が感動していたことに注目したい。これは地球環境の中で、水に起因する問題が人類の生存に深刻な影響を与えている状況を投影しているからだろう。ただ、近年、内外を問わず身近で頻発する津波、高潮、洪水などの水に関わる自然災害の深刻化を考える時、水の持つ恐ろしさについても体感できる工夫も必要であったように感じた。

  愛・地球博の瀬戸会場付近一帯は、かつてはほとんどの樹木が伐採され、禿げ山になっていたところであるが、その後、人が自然に働きかけ(植林)によって創造した里山の好例である。また、長久手会場の池(こいの池、かえで池など)は、そもそも調整池として整備された人工池であるが、万博の趣旨に則して会場の空間創出と景観に取り込まれ、会場の雰囲気としてうまくなじんでおり、自然との共生を演じていた。これも、環境の創造の一例と言えよう。

  博覧会終了後、会場跡地を含めて地域一帯を経年的に眺めたとき、10年、20年、あるいは50年後には、自然と人が触れ合える場がどのように創造されていくのだろうか。この地域が、海外からの人々を含め、多くの人が何度も訪れたくなる魅力的な場となれば、真の人と自然が交流できる環境創造のモデルとなるだろう。かつて116年前、激しい反対の中、パリ博を機に建造されたエッフェル塔が、フランスの国を代表する観光の名所名物になっている。会場の跡地と地域がどのような後世に残る環境が創造されていくだろうか、深い関心を寄せていきたい。                          

2005.9.6 談

 

<プロフィール>
愛知県出身。岐阜大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士、名城大学総合研究所員併任、2000年より現職。土木学会、日本水環境学会、日本自然災害学会などに所属。 専門分野は水環境学、水域環境創造学、海岸工学。

 

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