EXPO 2005 AICHI JAPAN
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テーマの理解度・浸透度

未来社会を先取りしたさまざまな技術が、人々の心を魅了した。

村井 純
慶應義塾常任理事・慶應義塾大学環情報学部教授
WIDEプロジェクト代表

 

 愛・地球博では、世界初の試みとしてICタグを埋め込んだ入場券を使用したり、会場で先進の情報端末「愛・MATE」などを使ったりと、ユビキタス社会を見すえたIT技術の導入や大規模な実験が行われました。このICタグやいくつかのパビリオンで来場者を楽しませてくれた高解像度の映像システムなどは、要素技術としてはすでに確立し(つまり最先端技術に安定感が出てきたころの完成度であり)、利活用へと発展するステージの技術が多数使われました。万博は歴史的にも一般の人々が驚きと期待をもってこのような技術に出会う場所です。その意味では、そのレベルの技術が参加者によって経験され、かつ、日本の技術も多く紹介される仕組みですので、高く評価してよいと思います。

 また、このような「セミ実用」技術の裏には、かなり挑戦的な実験も行われました。例えば「愛・MATE」を使った「あて先のない情報移動」のような最先端の通信技術が、アトラクションとして使われていましたし、高解像度ハイビジョンやスーパーハイビジョンを遠隔制御で使うという技術は、ラボから飛び出した初めての試行の機会だったと思います。このような実験は、愛・地球博で得た経験をフィードバック要素としてさらに発展していきます。その意味でも研究開発に対する大きな貢献が蓄積されたわけです。

 愛・地球博におけるテクノロジ分野での一番大きな挑戦は、環境分野へのテクノロジの貢献でしょう。新しい交通システムやロボットの技術も人と環境を考えたテクノロジの役割です。しかし、要素要素に着目すると、さまざまな先端技術がハーモニーを奏でて集約され、ひとつの目的を実現していることがわかります。人は要素の技術でなく、その結果を評価します。人のその目的への要求を支える要素の技術がなければ、目的は達成しません。このようなフィードバックの輪が形成されることが、わかりやすく楽しい先進技術こそ、たくさんの人と触れることの大きな意義だと思います。

 総じて今回の博覧会は、多くの困難の中、これだけの明確なテーマで先端技術を集約させ、かつ、挑戦的な実験を含め、たくさんの来場者との接点を作る機会ができたことは評価に値します。特に、その来場者は予想を上回ると聞いています。社会の楽しみが多様化するなか、これだけ多くの人を魅了したのは関係者の「根性」だと思います。敬意を表したいと思います。10年、20年たったときに、「2005年の愛知の万博で初めてこれが紹介されたんだってさ」というテクノロジがあふれていることでしょう。それが万博です。

2005.8.27 談

 

<プロフィール>
1984年慶應義塾大学理工学研究科博士課程修了。1990年慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て1997年より教授。2005年学校法人慶應義塾常任理事就任。1984年JUNETを設立。1988年WIDEプロジェクトを設立、その代表として指導にあたる。内閣官房 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)本部員、情報セキュリティ政策会議構成員等を務める。

 

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