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テーマの理解度・浸透度

日本の最先端技術を、世界に向けてプレゼンテーションできた絶好の機会。

坂村 健
東京大学大学院情報学環教授/副学環長
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長

 

 愛・地球博においては、ユビキタス社会を志向したさまざまな先端技術を使った実証実験やプレゼンテーションが、多くの来場者の目を捉えることができた。世界的にも日本のユビキタス・コンピューティングの分野は先行しており、しかも最先端技術が会場に持ち込まれていたからだ。「愛知万博ユビキタス観光ガイド実証実験」やユニバーサルデザインに貢献する「自律移動支援プロジェクト」などの実証実験に参加した私のもとにも、オーストラリア、カナダ、オランダ、ドイツ、フランス、中国、韓国、シンガポールなど、世界の国々から反響があった。また、博覧会場の外ではあるがユビキタス技術を駆使した近未来住宅「PAPI」をトヨタとともに作ったが、ここにも多くの外国からの視察団が訪れた。愛・地球博で日本が誇る最先端の技術を世界の人々に見てもらえたということで、大きな成果があったと考える。

 博覧会全体ではICチップを埋め込んだ入場券をはじめ、インターネットを使った予約システムや情報提供システムなど、多くの試みが行われていた。さらに今回の万博で特徴的なのは、実際に会場へ行った人々がブログや自身のホームページなどを使って、それこそおびただしい情報を発信したことだ。情報が情報を生み、その情報がさらに多くの人を呼んだのではないかと感じる。予想入場者数をはるかに超える入場者があったのは、インターネットによるところも大であろう。今まで行われたどの万博よりも情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)が使われた博覧会であり、ICTの使い方としてのモデルになったと思う。
 愛・地球博が成功したかどうかに関してはさまざまな見方があるが、私は入場者数の規模よりも、どれだけ内外に対して影響を与えられたかということが一番大きいと思う。少なくともITやユビキタス・コンピュータの分野では、世界に対してインパクトを与えられたのではないかと思う。

 全体的な感想を述べれば、当初の計画立案から開催に至るまでには、いろいろな議論があり、絶えざる試行錯誤があったと思うが、立派に開催できていると感じる。会場に行き各所を散策してみるとわかるが、できる限り自然を壊さずに会場を設営したことや、閉会後に環境や景観を元に戻そうという試みは、万博史上初めてのケースではないか。従来は、環境をできるだけ元に戻すということはほとんど考えられたことはなく、会場跡地は住宅用地や公園に転用されることがほとんどだったからだ。したがって、今回のこの大胆な試みについては、現時点ではなく、時を経てから初めて正当に評価されるのではないかと考える。言い換えれば、今回の万博の会期は開幕から閉幕までではなく、終わった後に会場跡地の自然や景観を元に戻すまで、そしてそれを適切に評価するまでのプロセスを見届けるべき一大プロジェクトだと思っている。使っている素材も再生され、別の場で再利用されるとか、移築移転しやすくため壊しやすくなっているという計画や試みの行く末を最後まで見せてほしい。また、これこそが皆が一番大きな関心と興味を持っている部分ではないかと思う。
 一夜の夢のような一大イベントや終わった後はゴミの山というような過去のイベントとは全く異なる「自然の叡智」を学んだ環境博だから、私達も最後まで見届けなければならないし、閉会後の成果に対しても大きな期待を抱いている。自然に戻す過程や、素材のリサイクル状況を刻々伝えるホームページの世界に向けた公開や、5年後にどうなったかというツアーなどを組んで、「あの時の万博の場所がこのようになった」というところまで体験させてくれると面白いなと思う。これからも期待して見守っていきたいが、その見守る過程にも多いにICTを活用していただければと思っている 。

2005.9.13 談

 

<プロフィール>
東京生まれ。専攻はコンピュータ・アーキテクチャー(電脳建築学)。工学博士。1984年からTRONプロジェクトのリーダーとして、まったく新しい概念によるコンピュータ体系を構築して世界の注目を集める。現在、TRONは携帯電話をはじめとしてデジタルカメラ、FAX、車のエンジン制御と世界で最も広く使われており、ユビキタス(どこでも)コンピューティング環境を実現する重要な組込OSとなっている。さらにコンピュータを使った電気製品、家具、住宅、ビル、都市、ミュージアムなど広範なデザイン展開を行っている。2002年1月よりYRPユビキタス・ネットワーキング研究所長を兼任。

 

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