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テーマの理解度・浸透度

閉会後には、建築物、建設資材のリユースに注目したい。

木村 建一
国際人間環境研究所代表 早稲田大学名誉教授

 

 建築家の菊竹清訓さんが愛・地球博の総合プロデューサーになられた時に、博覧会場に作られる建築物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に関して協力してほしいと言われて、少しだけ関わってきました。その背景には、早稲田大学の理工学総合研究センターの私の研究室で“環境調和型建設ヤード”という産学連携の研究コンソーシアムを組織して活動していたことがあります。 “建設ヤード”とは、建物を解体した後に出る廃材をできるだけ別の建設現場でリユースしようとする仕組みの“場”です。廃材となった窓でもドアでもそのまま使えれば、環境負荷がきわめて少ないことに着目したところから始まった研究プロジェクトでした。現在日本にも家具や建材の中古市場はありますし、オーストラリアの人口15万人ぐらいのタウンズヴィルという町の中古市場も見てきました。私達の研究会で提案した建設ヤードは、具体的には、資材となる廃材を出すところと使うところとの間に、インターネットを使ったバーチャル・マーケットを運営する“場“です。インターネットを使って、需要と供給とを結びつけるだけではなく、配送や決済まで全部行うという仕組みをどう構築し、運営するかという事業化に向けた研究でした。

 この研究を進めている時に、愛・地球博に“建設ヤード”のアイデアを使えないかという照会がありました。博覧会は半年の会期後にはすぐに壊してしまうことになっていたため、その時に大量に発生する廃棄物をどう3Rするかということが問題になり、2年にわたって“建設ヤード”のアイデアを博覧会の施設に当てはめるための研究を行いました。特に、18m×18m×9mの標準ユニットの外国パビリオンについて、基本的な構造は標準化し、閉会後容易に解体ができるような設計上の要点をまとめて報告書を提出しました。
またそのほか、私達が考えていた基本的なこととして、解体された後にどこで使用されるのかを先に決めておいて、会場で半年間前借り使用をさせていただくという形で施設を作るようにすべきだと提案しましたが、この部分は実現されませんでした。何年も前から設計期間はあったのですが、実際問題としては、リユース材を予想して本用の建物をあらかじめ設計しておくというのは、口で言うのは簡単だけれど難しかったのでしょう。

 私が知っている限りでは、日本政府館でのリユースの試みはかなり先駆的なものだと思います。材料にあらかじめICタグを付けて管理しているのです。どんな材料、部材がいくつあるか分かるし、解体後に需要があればその行く先もフォローできる。この実験の成果は注目しています。ただ残念なことは、国の建物には古材を使えないことになっているとのこと。増築でも補修でもいいから、博覧会で発生する多くの資材を国の施設で率先してリユースしてほしいのです。政府には積極的に閉会後の3Rに取り組んでいただきたいと考えています。

 昔、パリの万博で残したエッフェル塔に匹敵する愛・地球博のものは何か、と考えたときに、それはリユース市場ではないかと思います。そこには現代の優れたIT技術が駆使され、バーチャルなリユースシステムによって効率よく需要先が決まるようになれば、他の施設への波及効果も大きいと考えます。

2005.8.23 談

 

<プロフィール>
早稲田大学大学院工学研究科建設工学専攻・建築設備専修修士課程修了。工学博士。早稲田大学第一理工学部助手、マサチューセッツ工科大学留学、早稲田大学第一理工学部専任講師、助教授等を経て、1973年教授。1999年より同名誉教授、国際人間環境研究所代表。日本太陽エネルギー学会会長、空気調和・衛生工学会会長、国際太陽エネルギー学会理事等を務める。

 

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