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テーマの理解度・浸透度

愛・地球博で試みたバリアフリー社会を支える先端的な基盤技術。

鎌田 実
東京大学大学院工学系研究科教授

 

 愛・地球博の会場内で、6月21日から約2ヶ月、「障害者等ITバリアフリー・プロジェクト」に関する実証実験を行った。2003年度に立ち上げた経済産業省の予算によるNEDOのプロジェクトで、NECなどの企業が構成するコンソーシアムが実施主体、プロジェクトリーダーを私が努めた。内容は、ボランティアや介助者のサポートなしに視覚障害者等の方が安全に間違いなく目的地まで行けるように誘導するシステムの研究・開発だ。従来、RFID(Radio Frequency ID)のタグや赤外線、FM電波など、障害者等を誘導するさまざまなシステムがそれぞれ個別に提案されてきたが、複数のシステムがあると複数の端末を持つ必要があったが、それを一つの端末にまとめ、さらに実用化・普及するための標準化まで視野に収めた、世界でも例のない先端的なシステムの開発に努めている。

 ハードウェアは携帯電話用につないで使う軽くて便利な誘導情報の受信機の開発が中心で、ソフトウェアに関してはどのタイミングでどんな案内情報を発信すれば視覚障害者にとって一番有為な誘導になるかを実験した。会場での被験者数は、視覚障害者が約180人、車いすの方が40〜50人、聴覚障害者や高齢者、下肢が不自由な人などを合わせ延べ250人。RFIDのタグを埋め込んだ誘導ブロック(点字ブロック)の情報を杖の先で読み取り、それを無線でレシーバーに飛ばす実験や、視覚障害者の方に赤外線センサーをつけた眼鏡をかけてもらい、赤外線誘導によるハンズフリー機器の便利さを体感するとともに機能性の検証などに取り組んだ。

 博覧会場で実証実験に取り組んだ理由は、実際の都市よりは安全だが一般の来場者が大勢いる状況なので実証実験にふさわしい環境だからだ。1年以上前から準備をし、調整を重ね、多くの方の協力のもと目標とする成果を上げることができたと考える。実験では視覚障害者、聴覚障害、下肢の不自由な方、高齢者も参加し有為なデータを蓄積できた。その成果をベースに、将来的には健常者をも含め多様なニーズをカバーするユニバーサルデザインにつながるものにしていきたいと考えている。というのは、バリアフリー社会の実現のためには機器の開発にとどまらずインフラの整備に巨額の予算が求められる。しかし、障害者等の人々が街に出てアクティブに働いたり活動したりすれば社会の活力になるし、さらに健常者にも使えるシステムであればビジネス化につながり、コストダウンや普及が飛躍的に進むことが期待できる。情報コンテンツもビジネスになれば作る人も増えるだろう。視覚障害者を中心とした障害者等に向けたものという意識で設計しているが、結果的に多くの人が使って便利さが社会全体に広がれば素晴らしい。そのきっかけとなる実証実験を、愛・地球博という未来を感じさせてくれる場で行えたことを大いに自己評価している。

2005.8.29 談

 

<プロフィール>
専門は、機械工学・車両工学・生活支援工学。国や交通関係団体の委員会や検討会の委員や座長、NEDO障害者等ITバリアフリープロジェクト・プロジェクトリーダー等を務める。工学博士。自動車技術会理事、日本福祉のまちづくり学会副会長、日本生活支援工学会理事。
「障害者等ITバリアフリー・プロジェクト」 http://www.itbarrierfree.net/

 

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