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テーマの理解度・浸透度

「自然の叡智」という理念を深め、具体化した、環境アセスメントのプロセス。

加藤 久和
名古屋大学大学院法学研究科教授

 

 博覧会の会場を選定し、それに伴う建設工事や博覧会行事を企画・実施するに当たり環境アセスメントをしなければならないということで、博覧会協会が環境アセスメントを進める上で専門家等からアドバイスを受けるため、「環境影響評価アドバイザー会議」を設けた。私は一委員としてこれに参加し、後に委員長を務めた。環境アセスメントの実施に関しては、博覧会の開催決定自体は環境影響評価法という法律が施行される前のことであり、直接同法の適用は受けないが、できるだけこの法律の精神に則ってやろうということで始まったものである。環境アセスメントの本来の姿というのは市民参加による合意形成のプロセスを重視するものであり、これを半年間だけ開かれる博覧会という特殊かつ大規模なイベントに適用しようとしたのは、日本にとって初めてのユニークな体験であったと言える。

この経緯を一口に言えば、「自然の叡智」という、ややつかみどころのない難解な理念をより具体化し、明確にしていくプロセスであった。環境アセスメントを進めるプロセスを通じて、「自然の叡智」というテーマにふさわしいアセスメントはどうあるべきかを議論したし、逆にアセスメントという手続きを経ることによって「自然の叡智」がより明確になるという役割を果たしたと思う。そもそも「自然の叡智」という目標を掲げた時にはそれが何を意味するかは明確になっていなかったが、いろいろと試行錯誤を重ねることによって、企業、国、政府や民間団体、市民団体も含めて、真剣にこのテーマについて議論し理解を深めることができたのではないかと考える。
 環境アセスメントを含め「自然の叡智」について議論が広がった結果、主会場は当初の海上の森から青少年公園に移ったわけだが、これは結果的に非常によかった。海上の森の使用を完全に止めていれば別の展開があったかも知れないが、海上の森が、森を中心とした自然との共生や自然の叡智に学ぶにふさわしい場になったのではないかと思う。今後も海上の森を中心とした瀬戸会場は何らかの形で、愛・地球博の成果や経験を次世代に継承していくような場になってほしいと期待している。

 また、瀬戸、長久手の両会場ともに環境アセスメントの結果を今後ともモニターし、フォローアップしていく必要があろう。私たちは環境アセスメントのプロセスを通して、ありきたりの自然の中に大切なものがいっぱいあるということを学んだし、大切なものは守らなければ荒れてしまうということを学んだ。そして、そのシンボルとして瀬戸会場や海上の森が全国の人々の注目を受けた。今後もこの自然が生かされ、守られていけば、「自然の叡智」という理念の継承の場としての価値を持っていくだろうし、そうなることを期待したい。

 私たちは国の枠を越え、もっと視野を広げて地球環境問題全般に貢献できるようになるべきだ。例えば水の問題や自然災害に対する取り組みについても、日本人として地球環境全体を一つのものとして捉え、世界は深刻な環境問題を抱えていることを知らなければならない。この点で、愛・地球博は、国際的な取り組みの体制をどうやって作っていくかを考えるきっかけになったと思う。博覧会を経て、私たちは地球的な規模で考え、連帯して行動しようという機運を盛り上げることができたのではないだろうか。

2005.9.6 談

 

<プロフィール>
1973年環境庁(現環境省)に入庁、企画調整局計画調査室長、地球環境部環境協力室長等を歴任。この間、国連環境計画、環境と開発世界委員会事務局など海外で長く活躍。1996年より現職。専門は環境法、国際環境法、国際環境協力論。

 

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