EXPO 2005 AICHI JAPAN
愛・地球博公式WEBサイト(閉幕時点) リンク集 サイトマップ
EXPOデータ集 後援・協賛 プレスリリース 表彰事項一覧
EXPOデータ集
EXPOデータ一覧
HOME > EXPOデータ集 > 「愛・地球博」の成果・評価について > テーマの理解度・浸透度 > 有識者インタビュー > 家田 仁
テーマの理解度・浸透度

日本やアジアの都市交通システムに貢献できる愛・地球博での実験。

家田 仁
東京大学大学院工学系研究科教授 (社会基盤学)

 

 名古屋を中心としたエリアには進取の気質があり、それが愛・地球博におけるリニモやIMTS等の新しい交通システム導入の取り組みによく現れている。もう一つ、トヨタ自動車が世界最大規模の自動車会社としての責任と使命を果たしたと思う。自社のためでだけではなく、地域と協力して地球環境にやさしい交通システムを積極的に開発・導入することで、これからの社会基盤づくりに貢献しようとする健全な姿勢を示した。

 博覧会のアクセス交通として大活躍したリニモについては、会期終了後の輸送量(需要)の確保が、経営上、非常に重要な課題となる。その場合に大事なことは、車の利用者が車を否定されることなくリニモを上手に使うこと。そのためには博覧会の交通手段として大規模に試みたパーク・アンド・ライドを今後も定着させることが求められる。一方IMTSは、さまざまなことを同時に解決することをめざした大変に優れた諸機能を見せてくれた。物理的に連結せず、電子的に非接触のカップリングを実現したこと。物理的にガイドするのではなくて、電磁気的に安全にガイドしていく能力。さらに全体を上手にコントロールする総合的な運転制御システム。これらの機能を総合的に実験し大きな成果を挙げたと思う。このような基幹技術を応用し、実際のニーズに応じたより現実的な交通システムを作り上げれば、日本の中・小の都市やアジアの諸都市の交通システムに大きな貢献ができると思う。ただ、エコフレンドリーな新しい交通システムはそれだけで成立するものではなく、仕事の仕方などを含め、暮らしぶりも変えていこうというアプローチが必要だと思う。

 博覧会の交通計画に関しては大きな混乱もなく、比較的具合よく処理できたように感じる。ただ長蛇の待ち行列は上手くマネジメントすれば、もう少し適切にコントロールできたのではないか。予約システムを含め、すべての課題をロジスティックスの専門家や企業と組んで解決をめざせば、来場者がもっとエンジョイできたかも知れない。また日本の都市交通の欠点は、複数の事業者がそれぞれのクローズドシステムを構築して、その中で最適化しようとすることだ。例えばリニモと地下鉄の結節点で生じる不便さは日本の交通全般に通じる課題だと言える。行政の問題というより、事業者と事業者、ユーザーが知恵を出し合い協力する「協働型マネジメント」が重要だ。これは今までの日本が不得意だった分野だ。ただ海上の森の自然保護の活動や、長い時間をかけて博覧会の開催を目標に住民・行政・企業が知恵を出して問題を乗り越えてきた経緯を見れば、博覧会の開催を通じて協働の大切さを学んだはずだ。この知恵は将来の交通システム構築の際にも活かせる。そういう意味でも愛・地球博は一つの大きなモデルになったのではないかと思う。

2005.8.29 談

 

<プロフィール>
東京都生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業後、1978年日本国有鉄道入社。 1984年東京大学工学部助手、助教授を経て1995年より現職。工学博士。 途中、西ドイツ航空宇宙研究所交通研究部客員研究員とフィリピン大学交通研究センター客員教授に派遣。 専門は、交通計画。

 

ページの先頭に戻る