マンモスプロジェクト
子供から大人まで人気があるマンモスは地球環境についても考えさせてくれる動物です。マンモスが絶滅した原因としては、約1万年前の地球環境の変化(急激な温暖化)で彼らの生息環境が失われてしまった、あるいは、ヒトの乱獲によるもの、などの説があります。マンモスの展示を通じて、「地球環境の変化」あるいは「ヒトと自然の関係」などを考えるきっかけにしたいと、マンモスプロジェクトに取り組んできました。
「ユカギルマンモス」は最近発見された成体のオスのケナガマンモスです。マンモスの特徴である2本の大きな牙を持つほか、頭部と左前肢には体毛や皮膚、筋肉までもが残っており、空想ではない、マンモスのリアルな姿を私たちに教えてくれます。このような保存状態の良い、成体のマンモスの発見は100年に一度といっても過言ではなく、また発見から現在に至るまで冷凍状態が保たれていることから、学術的にも非常に価値の高いものです。サハ共和国政府およびロシア連邦政府の協力を得て、この貴重なマンモスについて、世界初の試みとなる冷凍状態での海外輸送および展示を実現することができました。
ユカギルマンモス国際学術共同研究プロジェクトとして、ユカギルマンモス発見現場での調査や室内研究などへの参加や支援を行い、最新の研究成果を展示にも反映させました。中でも、絶滅生物であるケナガマンモスのミトコンドリアDNAの全塩基配列の解読に世界で初めて成功したことは、現生のゾウの仲間とマンモスの仲間の類縁関係や、その分化過程についての、長年の論争に決着をつける重要なものです。このほか、特別なX線CTスキャン装置を利用して、マンモス体内の解剖学的情報を得ることにも成功するなど、ユカギルマンモス研究プロジェクトは、マンモス研究史上に残る画期的なものとなりました。
様々な困難を乗り越えて実現した日露共同マンモスプロジェクトを通じ、サハ共和国から多数の方が来日し、また日本からの訪問者が増えるなど、これまでにない深いレベルでの学術・文化面などでの「交流」が始まりました。また、グローバル・ハウスやロシア館での展示だけでなく、博覧会会場のあちこちにおいて、マンモスに関連させた展示や標本解説の工夫、マンモス・グッズ等が見受けられ、マンモスを切り口とした博覧会テーマの掘り下げや博覧会全体の盛り上がりにもこのプロジェクトは貢献しました。