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ニュースレター No.19

No.19 2005/07/11

Contents

News

愛・地球賞選定

 財団法人日本国際博覧会協会は、6月16日、地球環境問題の解決と人類・地球の持続可能性に貢献する国内外の100の地球環境技術を選定し、「愛・地球賞」(共催:日本経済新聞社)を授与すると発表した。同賞は、愛・地球博の公式褒章事業。
 万博公式参加国・国際機関、国内自治体、及び、審査委員から推薦のあった236件の地球環境技術を13人の識者で構成する審査委員会(委員長・近藤次郎東京大学名誉教授)が選考した。順位はつけず、賞金は1件100万円。9月1日に名古屋市内で表彰式を行う。

トヨタハイブリッドシステムを搭載する「プリウス」

 受賞した100件の内訳は、国内56件、海外が44件(23カ国)。海外は、環境先進国である欧州を中心に、東欧、アジア、アフリカ、北米、中南米と世界中から選ばれた。
 受賞技術は大きく分けて、「地球温暖化防止とエネルギーの確保のための技術」(22件)、「資源の有効利用とリサイクルのための技術」(17件)、「新たな発展のための技術」(16件)、「飲料水と水資源保全のための技術」(12件)、「自然保護と再生のための技術」(12件)、「木材資源を活用するための技術」(9件)、「バイオマス資源を活用するための技術」(7件)、「環境汚染物資対策のための技術」(5件)の8分野。
 地球環境問題の中でも緊急の課題とされる「地球温暖化防止とエネルギーの確保」分野への受賞は、全体の5分の1を占めた。佐賀大学が開発を進めている海の表層と深層の温度の違いを利用してエネルギーを取り出す海洋温度差発電、また、ガソリンエンジンと電気モーターの2種類の動力源を組み合わせたトヨタ自動車のハイブリッドシステムなど、日本の大学や有力企業から、多数の技術が受賞したほか、パネルを短冊状にして表面積を増したオーストラリアのオリジン・エナジー・ソーラー社の新型太陽電池など、海外からの受賞も11件と半数にのぼり、この分野への内外の関心の高さを伺わせた。
 次に多数選ばれたのが、「資源の有効利用とリサイクルのための技術」の分野。廃プラスチックから燃料油を生産する韓国のシン・デヒョン氏の技術や15haの敷地内で20の企業が環境に配慮した製品やサービスを提供しあうネットワークを構成するオーストリアの新しい工業団地「エコパーク・ハルトベルク」など幅広い技術が受賞した。


ココヤシ繊維のジオテキスタイルネット(フィリピン館)

 「自然保護と再生のための技術」、「新たな発展のための技術」は、途上国の持続発展に貢献する分野での技術であり、海外の技術や取り組みも多く選定された。農業廃棄物として焼却・廃棄されていたココヤシ殻を利用し、ココヤシ繊維のジオテキスタイルネットを生み出す技術は、フィリピンのジャスティーノR.アルボレダ博士が開発。土壌流出の防止や斜面の保護に用いられるが、植物が土壌に安定したころ自然に分解し、緑化を促す。このネットは現在、フィリピン館にも展示されている。
 この他、熱帯雨林の火災監視技術(ブラジル国立宇宙研究所)や薪や炭を利用して湯を沸かすとともに発電も行う「キンキージ発電コンロ」(ウガンダ アーノルド・アヒムビシブェ氏)などの技術が選定された。

 受賞した100の技術は、地球環境問題解決のための人類の智慧の結晶。「愛・地球賞」は、自然の叡智に学んだ人類の叡智とそれに携わっている人々の活躍を、愛・地球博から世界に向けて発信する。


Pavilions

アンデス共同館(グローバル・コモン2)

アンデス共同館外観

 「アンデス共同館」は、南米大陸に位置する、エクアドル共和国、ベネズエラ・ボリバル共和国、ペルー共和国、ボリビア共和国という4つの国が共同して出展するパビリオンだ。

 進化論のヒントを授けた独自の生態系を持つガラパゴス諸島を有する赤道直下の国エクアドル。カリブ海に面し、中南米最大の石油大国として知られるベネズエラ。インカ帝国最大の都クスコやナスカの地上絵など古代の歴史に彩られたペルー。そして、標高3,600メートルという世界最高所に首都を持つ高山国ボリビアは、先住民比率が南米一であり、南米らしい暮らしと文化を現在も残している国だ。
 いずれの国も、南米大陸の西縁を南北に渡って貫くアンデス山脈を国土に持つこと、また、この山脈に発し、東流し、大西洋に注ぐアマゾン川の上流域にあるという共通点を持つ。


「自然の叡智賞」を受賞したベネズエラの展示

 前面に滝のように水が流れ落ちる共同館に入ると、ひんやりとした薄暗いトンネルのような回廊に入る。左手の壁面には、熱帯魚やサメ、イソギンチャクなど、様々な海洋生物の色鮮やかな写真や映像が続いている。ゆるやかな勾配の回廊を登っていくと、壁面の写真は、いつのまにか美しい砂浜や海鳥たちの写真に変わり、来館者は自分たちが海から出て、浜辺に出たことを知る。さらに進んでいくとアマゾンのジャングルの世界。アナコンダやカイマン(ワニ)、森林に住むナマケモノやアリクイなど様々な動物と出会う。鳥のさえずりや動物の声も聞こえてくる。さらに、高度はあがり、アンデス山脈の世界にはいる。高地のすがすがしい景観。そびえる山々。そこに生きる羊やラマとインディオの人々。
 海底からアンデスの頂(いただき)まで、多様な自然とそこで生きる人々の暮らしを短い時間に体験させてくれる不思議な回廊だ。同時に、心癒されるヒーリング空間でもある。

 さらに回廊を進むと広く明るい空間に出る。ここでは、各国が世界に向けてそれぞれのメッセージを発信している。

 5月26日に発表された「自然の叡智賞」の金賞を受賞したベネズエラのコーナーのテーマは、「人と自然」。雄大な自然と環境問題を垂幕や奥に飾られた写真で対比。モニターが置かれ、コーナーの正面に立つと、目の前の画面に自分の顔が映し出され、その上の画面には調和、愛、持続性など7つの言葉が順番に映る。来場者は、「あなたは環境に優しいですか」と問い掛けられる。


「大地」をテーマにしたペルーと「水」をテーマにしたエクアドルの展示

 ボリビアは、「火」をテーマに、伐採され焼かれた樹木の灰で、森林伐採の現実を表現し、森林保護を訴え、エクアドルは、「水」をテーマに砂浜に散乱するごみとこの国でしか取れないとされ、古来より尊重されてきた貝、スポンディラスの写真を展示し、環境保護のメッセージを伝えている。ペルーのテーマは「大地」。インカ文明を初めとしたこの国の古い歴史と文化を紹介しつつ、全てを生み出す母なる大地の偉大さを伝えている。


190度パノラマスクリーンのミニシアター

 この共同館に最近になって登場したのが、高さ7.5m、長さ12mの190度パノラマスクリーンのミニシアター。上映される作品のテーマは、「祖先からの呼びかけ」。一人の少女がシャーマン(神霊)の呼びかけに耳を傾けているシーンから始まるこの2分40秒の作品は、アンデス・アマゾンの美しい自然世界と自然破壊の現実を印象的な映像と音声で表現し、人々が手を取りあって環境保護に取り組む必要性を訴えている。パノラマスクリーンの効果で、自分が空中を上昇したり、森林の中を駆け巡っているような不思議な感覚を体験できるシアターでもある。

 この共同館では、現在、南米と日本をインターネットでつなぎ、現地の人々と来館者がリアルタイムで交流できる準備も進めているとのこと。進化し続けるこの共同館から目が離せない。


アルゼンチン館(グローバル・コモン2)

情熱的なアルゼンチン・タンゴのショー

 南米大陸の南回帰線付近から南極大陸の一部まで南北に広大な国土を有するアルゼンチンの気候や景観は実に多様だ。南米最高峰のアコンカグア、ジャングルの中に現れる豪快なイグアスの滝、中央部の広大な草原パンパ、パタゴニアの大氷河など、豊かな自然に恵まれた同国の出展テーマは「自然の力」。地域ごとに特徴ある自然の魅力や人々の暮らしを写真や地図、映像を駆使して紹介する。

 アルゼンチンは、グアラニー族を始めとする先住民と19世紀末以降にスペインやイタリアなどからやって来た欧州系を中心とする移民によって構成される多民族国家でもあり、多様な移民がもたらした文化は徐々に融合され、アルゼンチン独自の文化を形成した。その一つがアルゼンチン・ダンゴだ。

 ペアダンスの中で最も情熱的なアルゼンチン・タンゴは、欧州系移民の郷愁の表現とガウチョの弾き語るギター音楽とが融合し、19世紀末にブエノスアイレスで誕生した。本場のダンサーによるタンゴショーは、アルゼンチン館の一番の見ものだ。連日午前10時から午後8時まで1時間おきに披露されるショーでは、バンドネオンが奏でる物悲しい旋律に乗せて、見つめ合いながら官能的に足を絡め合う二人の息の合った動きに、瞬きする間もなく見入ってしまう。


南アフリカ館(グローバル・コモン5)

 南アフリカ館のテーマは「生命のリズム」。8万年以上も前の世界最古の現生人類の足跡とされる「イブの足跡」から、マンデラ前大統領の「自由への長い道」と1994年の民主主義の実現へと続く南アフリカの軌跡を辿ることができる。

バオバブの木をイメージした館内

 館内には、世界遺産認定地で「人類のゆりかご」とも呼ばれる人類化石遺跡群のスタークフォンテン洞窟で発見された約250万年前のアウストラロピテクス・アフリカヌス「ミセス・プレス」の頭蓋骨を始め、古代人類学研究にとって貴重な財産の数々が展示されている。

 また、4億年前から生き続ける「生きた化石」シーラカンスの実物大標本も圧巻だ。館内中央の仕切られたスペースでは、絶滅したと考えられていたシーラカンスが、1938年に南アフリカ沖合で発見された当時の貴重な記録や、シーラカンスの保護を目的とするモニタリング活動などの興味深い映像も公開している。

 苦難を乗り越えて平和的繁栄を享受する国へと発展した南アフリカが、環境にやさしく持続可能で多様な文化が共生する世界の発展に貢献しようとする姿がここにある。


Column

会場内で活躍するボランティア

車イスの貸し出し

 愛・地球博会場のゲートをくぐると、黄色いユニフォームを身につけた人々が、来場者を笑顔で迎え、会場案内マップなどを配布している姿がまず目に入る。ゲート付近での車イスやベビーカーの貸し出しを行っている人も、9つのケースに分類された会場内のゴミ箱の前で自分のゴミをどこに捨てたらよいのか迷っているときに優しく助けてくれる人も、そして、会場案内図の前で来場者に道案内をしている人もこの黄色いユニフォームをつけている。
 この人たちは、全てボランティア活動中の方々だ。

 現在、愛・地球博のボランティア登録をしている人の数は約29,000名。6割の方が初めてのボランティア体験だという。
 ボランティア登録をした人々は、185日間の開催期間中、5日以上参加することになっている。ちなみに、500名いるリーダーたちは、20日以上の参加とのこと。
 開催期間中に延べ10万人のボランティアが参加することが当初の目標とされたが、期間の半分以上を過ぎた現在、この目標を十分達成できるほどの熱心な参加状況とのことだ。


 勿論、地元の愛知県からの参加が最も多いが、その他、全国25都道府県からも参加。また、日本在住の外国人の方々の参加もある。平日は、子育てを終えた主婦や定年退職者の参加が多いが、土日になると学生や会社勤めの若い人々も多く参加しているという。

 活動内容は、最初にあげたもの以外に、車いすや障害者の来場者に同行しながらの介助や子ども達に愛・地球博の環境保護の取組み事例などを紹介する「キッズエコツアー」のガイド役など多岐にわたる。朝9時から夜10時まで、ボランティアの方々は、3交代(各4時間半)でこれらの活動を毎日行っている。

 愛・地球博のボランティアシステムの特徴は、万博自体を運営している財団法人日本国際博覧会協会とは別の組織として、愛・地球博ボランティアセンターを設け、活動全体を管理・運用していることだ。このセンターには、2002年12月の設立以降、5つの部会が設けられ、より来場者に近い立場にある市民の声やアイデアを聞き、実現することに努めてきた。子ども達のエコツアーもこの部会に参加したボランティアの方の提案から始まったという。

来場者からの質問への対応

 ボランティアセンターは、西、北、そして瀬戸の3つのゲートに設置されている。
 ボランティアに来た人はまず、このいずれかのセンターに行き、受付し、引継ぎをした上で、リーダーの連絡に従って、当日の活動に入る。センターの壁面に掲示された様々な情報を確認することも活動に入る前の大事な仕事だ。「ソフトクリームはどこで食べられますか」といったその日、来場者からあった質問とその回答方法や障害者の方を駐車場へ案内するときの注意点など、付箋紙に手書きで書かれた引継ぎ事項からは、来場者への温かな心遣いが伝わってくる。


ゴミ分別の案内

 自営の仕事を途中で抜けて、会場に駆けつけ、ゴミの分別の案内をしているという男性は、「僕の生まれたのが、大阪万博の年。せっかく35年ぶりに日本で開かれる万博なのだから、単に見るだけではなくて、私も万博に参加してみたかったんです」と語っていた。

 21世紀初めての万博、愛・地球博は、政府、企業のみならず、市民が参加してつくりあげる史上初めての万博。市民参加はこのような形でも実現している。そして、延べ10万人の市民参加の体験は、きっと自然と人間が共生する確かな未来づくりにもつながっていくことだろう。

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