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ニュースレター No.18

No.18 2005/06/27

Contents

News

ジャパンデー・ジャパンウィーク開催

お言葉を述べられる皇太子殿下

 6月6日、愛・地球博開催国である日本のナショナルデー「日本の日」(ジャパンデー)が開催され、引き続き、12日までの1週間、「日本週間」(ジャパンウィーク)が開催された。

 ジャパンデー式典は、宮内庁式部職楽部による雅楽演奏で幕を開け、豊田章一郎財団法人2005年日本国際博覧会協会会長の挨拶、2005年日本国際博覧会名誉会長、小泉内閣総理大臣の挨拶に続いて、2005年日本国際博覧会名誉総裁である皇太子殿下よりお言葉を賜った。その中で殿下は、「(日本の日は)愛・地球博の主催国として私たちが未来の世代によりよい地球を残すために行っている努力を世界の人々に知ってもらうまたとない機会だと思います。この日本の日を契機に世界の人々が日本のこうした努力についての理解を深め、一致して地球環境問題に取り組む機運が一層高まることを希望して日本の日に寄せる言葉といたします。」と語られた。

チアガールによる華やかな応援

 そして、瀬戸日本館で上演されている群読叙事詩「一粒の種」を演じる若者たちが、力強くジャパンデー・ジャパンウィーク開会を宣言。その後、愛知県の大学の学生175名のチアガールが日本の民謡八木節にのせて会場一杯を使って華やかな応援を繰り広げた。
 続いて、日本の各パビリオンのアテンダントの入場に併せて、日本政府館や各企業パビリオンなどが紹介され、女優の竹下景子日本館総館長が日本パビリオンへの来場を呼びかけた。
 式典の最後には、世界的なミュージシャンであり、政府出展事業総合監督の渡辺貞夫さんと約200名の子ども達が登場。ご自身が作曲した愛・地球博メッセージソング「Share the World~こころつないで~」を、オーケストラと自らのサックス演奏にのせ、子ども達が声とボディランゲージで合唱し、式典を締めくくった。
 ジャパンデーアトラクションでは、渡辺貞夫さんと日本とブラジルの子ども達が出演し、ステージを盛り上げた。

 7日から12日までは、ジャパンウィークイベントとして、ジャパンウィークセレクション「日本音楽・伝統と今」と「渡辺貞夫リズムワールド『Meet the Expo』」、「渡辺貞夫リズムワールド(フィナーレ)」の公演がEXPOドームで行われた。

参加者も一緒になって踊ったジャパンデーアトラクション

 「日本音楽・伝統と今」では、7日に、「奏」をテーマに、奈良、平安時代の宮廷音楽から江戸時代の三味線まで、時代を代表する調べが紹介され、8日・9日は、「踊」「叩」をテーマとして、全国の子ども達が、沖縄の「エイサー」を始め、四季の踊りや舞を披露し、力強い和太鼓の演奏を行った。10日は「集」をテーマとして、歌、踊り、楽器の演奏が一つになったステージが展開され、徳島県の阿波踊りを観客も一緒に踊るなど、ステージと観客席が一つになった。

 7~10日の「渡辺貞夫リズムワールド『Meet the Expo』」ではブラジル、セネガル、アメリカ、ポルトガル、そして日本の若者が民俗楽器の演奏や踊りで「地球のリズム」を表現。12日のフィナーレでは、集大成ともいえるステージが展開され、3,000人を超える来場者が、渡辺貞夫さん、そして総勢約370人の子ども達と一体となり、躍動感あふれる歌声やリズムで会場を揺らした。

Pavilions

南太平洋共同館(グローバル・コモン6)

南太平洋共同館外観

 大海原に浮かぶ大小の島々。頭上に輝くまばゆい太陽、青く透き通る珊瑚礁の海、咲き乱れる色鮮やかな熱帯の花々、そして、ゆったりとした時の流れの中で出会う素朴な島の人々の笑顔。「The Beautiful Pacific」、これが、南太平洋の11の島国が出展する南太平洋共同館のテーマだ。

 南太平洋のニュージーランド、イースター島、ハワイを結んだ広大な三角形の内側に位置する海域はポリネシア、その西側、赤道の北に広がる海域はミクロネシア、そして、赤道の南に広がる海域はメラネシアと呼ばれる。
 今回、ポリネシアからの参加国は、サモア、トンガ王国、ツバル。ミクロネシアからは、キリバス共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦、パラオ共和国。そして、メラネシアからは、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ共和国、フィージー諸島共和国だ。

 入館すると、まず、映像やパネル、貴重な展示品で、各国独特の歴史、文化、社会を紹介しているコーナーに入る。これは、そのまま、南太平洋、島巡りの旅だ。
 椰子やパンダナス(たこの木)の葉で作られた衣類や日常品、南太平洋独特のタパと呼ばれる樹皮布などに、島の限られた資源をいかに活用するかという人々の知恵が伺われる。

 バヌアツは、足首をつるで縛り、まっさかさまに飛び降りるペンテコスト島の成人儀式を映像と模型で紹介。バンジージャンプの原型だ。各国は映像の他、儀式に使われる巨大な仮面やカバ(胡椒科の木の根を砕いて作る飲料)を入れる木製の器など、様々な展示品で独自の伝統的な儀式や祝祭を紹介している。また、マーシャル諸島の小さな貝殻と木片を組み合わせた「スティックチャート」という独特の海図は、文字のない時代の高度な航海術を示し、来場者を驚かせる。

 次のコーナーの珍しい熱帯魚が群れている水槽には、近々、直径1m級の巨大なシャコ貝が運ばれてくる予定。南太平洋は、ジュゴン、ウミガメなどの希少生物を含め、多様な海洋生物が棲息する自然の宝庫でもある。

椰子の木とサモアの伝統家屋

 ここを抜けると、突然、広い空間へ。そこはもう南太平洋の島そのもの。トンガから実際に運ばれてきた椰子の木と、屋根と柱だけで作られたサモアの伝統家屋「サモアンファレ」が迎えてくれる。
 中央には大型外洋カヌー「カリア」の展示。これは、数千年前のカヌーをトンガで再現し、移送してきたもの。南太平洋の人々は、何世紀にもわたり、東南アジアから南太平洋に移住を繰り返して来たとも言われる。大きな丸太を繰り抜いた船体にパンダナスの葉で織った帆をかけ、荒波をものともせずカヌーをこぐ勇敢な人々の姿が思い浮かぶ。

カヌーをバックにした島々のダンスの公演

 カヌーの前にはステージが用意されている。館内で販売している椰子の実にストローをさしてジュースを飲みながら、ステージで繰り広げられる島々のダンスに興じるのは、この共同館ならではの楽しみ。

 この共同館は、「The Beautiful Pacific」を堪能させてくれると同時に、その美しい自然や独自の文化、歴史を守るために世界の人々が力を合わせることを訴えている。
 標高が数メートルしかないマーシャル諸島やキリバスそしてツバルといった珊瑚礁でできた国々にとって、地球温暖化による海面上昇は深刻な問題だ。海外から訪れる観光客のゴミ処理の問題も、南太平洋の島々が直面している重要な環境問題といえる。
 世界の人々と心を合わせて、「The Beautiful Pacific」を守りたい。

ブルネイ・ダルサラーム館(グローバル・コモン6)

ベラロン熱帯雨林を再現した館内

 南シナ海に面したボルネオ島北西部に位置する人口35万人の小さな王国、ブルネイ・ダルサラーム国(“東洋の宝石”)は、石油や液化天然ガスなどの天然資源に恵まれた、裕福な国として知られている。国土の80%近くを熱帯雨林が覆うこの国では、天然資源による収入のおかげで貴重な森林資源を大規模に開発することなく今日まで至っている。

 ブルネイ・ダルサラーム館のテーマは「グリーンハート・オブ・ボルネオ:ブルネイ 秘宝の王国」。同館のほぼ半分を占めるスペースには、熱帯雨林研究の分野で世界的に有名で、研究センターも置かれるベラロン熱帯雨林の雰囲気を再現している。現地に実際に敷設されているのとそっくりに作られた遊歩道を歩き進むと、動物や鳥の鳴き声、昆虫の羽音、人工の滝から流れる水の音が聞こえてくる。川縁に目を向けると、ワニやヘビ、サソリのオブジェが今にも動き出しそうな様子。花や木々も熱帯雨林そのままの姿に浮かびあがる。実際のベラロン熱帯雨林にある研究センターには世界中の研究者が集まり、続々と発見される新種生物の研究を行っている。

 首都バンダル・スリ・ブガワンにある東南アジア屈指の壮麗なモスクのレプリカも必見。

フィリピン館(グローバル・コモン6)

フィリピンの自然をイメージした館内

 先月26日に発表された自然の叡智賞でカテゴリーCの金賞を受賞したフィリピン館のテーマは「ウスボン:生命の種」。“ウスボン”とは、フィリピンの言葉で種子からの成長を意味する。

 パビリオンの正面外観は、「織物」と「詩」という2つのキーワードを基にデザインされている。細いアルミ金属材を文字通り織って作られた外壁は、豊かな伝統を思わせる織物とココナツの葉のイメージ。そこに、ミンドロ島の優雅な民族、ハヌノー・マンヤン族の詩がレーザーカットで切り抜いた古代文字で記され、日本語訳が添えられている。

 館内に入ると、美しいパネル状の織物が壁や天井に張りめぐらされている。この織物をマルチスクリーンにして、フィリピンの観光地や人々の生活と文化、エコツーリズム地域、固有の動植物などを描いた音と映像のショーも上映される。

 床と展示コンソールにはココナツの処理材が使われている。館内でひときわ目を引く“エッセンス”と呼ばれるセクションは、76,000枚のココナツの殻でできた球体構造。フィリピン独特の香りやオイルを楽しめるスペースだ。2階部分のプライベートラウンジでは、フィリピン式健康法の極意、癒しのオイルマッサージを体験できる。

 パビリオン全体のデザインと、クリエイティブな要素や展示内容は、すべてココナツがモチーフになっている。種から幹、葉、樹皮、実から副産物まで様々に利用され、「生命の木」とも呼ばれるココナツは、フィリピン人にとっての完全性、相関性、相互作用性の象徴でもある。

Column

ロボットプロジェクト

 3月24日の愛・地球博開会式では、ロボットの演奏するトランペットの音色が会場に高らかに響き渡り、ロボットたちのパフォーマンスが世界の人々に強いインパクトを与えた。

 愛・地球博の開幕と同時に、会場の各所で、チャイルドケア、接客、清掃、警備、次世代車イスの5分野9種類のロボットが活躍を始めた。 2010年頃の実用化を目指したロボットたちだ。これらのロボットは、「遊びと参加ゾーン」にある「ロボットステーション」でメンテナンスを行う。来場者は、ここで、いつでもロボットたちと触れ合うことができる。チャイルドケアロボット「PaPeRo」の周りにはいつも子ども達が集まり、「PaPeRo」との会話を楽しんでいる。その他のロボットたちのメンテナンスの様子やデモンストレーションを見るのも楽しい。

 このような愛・地球博のロボットプロジェクトの一環として、6月9日~19日の11日間、モリゾー・キッコロメッセで「プロトタイプロボット展」が開催された。テーマは、「2020年、人とロボットが暮らす街」。主催は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と財団法人2005年日本国際博覧会協会。

 店舗や工場、病院などで働くロボット、災害現場や危険な場所で働くロボット、家庭で働くロボットなど、大学や企業から公募した試作ロボット8分野65種類が出展された。これらは、2020年頃の実用化を目指すロボット達だ。15年後の町並みを描いた展示空間の中で、ロボットが生活の様々な場面で活躍する様子が演出され、大勢の来場者に驚きと感動を与えた。

 ここでは、製造分野のロボット技術で世界の先端をいく日本が、そこで蓄積した技術やノウハウをサービス分野に活用し、ロボットと人間が共生する未来を提示している。

 サービス用ロボットの重要な開発コンセプトの一つに、人間の指示により、一台のロボットが、人間の周辺にある様々な家電やコンピューター等を操作するというものがある。例えば、「聞き分けアプリアルファ」。部屋のどこから指示を受けても、その声の方向を見て、返事をし、部屋の明かりやテレビをつけ、エアコンを調整してくれる。

インタビューする「リプリーQ1expo」(左)

 人間そっくりの姿形と動作を実現した「リプリーQ1expo」は、来場者にインタビューするリポーター役をつとめ、スムーズな会話をこなした。一方、ステージで漫才を演じるロボビー&ワカマルのようにロボットとしての可愛さを追求したものもある。サービス用ロボットとして人々に受け入れられやすいデザインを追求していくのも未来に向けての重要な研究テーマだという。

「鬼ごっこロボットASKA」と遊ぶ子ども達

 子ども達を夢中にさせた鬼ごっこロボット「ASKA」やステージで人間と踊ったダンスパートナーロボット「PBDR」のように直接人間と接触する機会の多いサービス用ロボットには、十分な安全対策が必要だ。今回も出展に備え、入念なチェックが行われたという。

ダンスパートナーロボットPBDR

 会場では、様々なデモンストレーションが行われたが、その全てがうまくいったわけではない。しかし、万博は、研究者にとって貴重な実証実験の場。研究室を出て、雑踏の中で実際にデモを行うという機会を得て、失敗もまた糧にして、ロボット技術はさらに進んでいくことだろう。

 35年前の大阪万博で、アニメ「鉄腕アトム」の生みの親、手塚治氏がプロデュースしたロボット館で見たロボットたちに感激し、ロボット研究者になり、今回の出展に関わった開発者もいるという。

 ロボットプロジェクトにより、ロボットと共生する未来を垣間見、目を輝かせた子ども達の中から、将来、きっとロボット博士が生まれることだろう。