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日本でのユカギルマンモス標本のCT計測、三次元画像化成功 ‐世界で初めてケナガマンモスの成体の内部構造が画像化された‐

2005年2月3日

(財)2005年日本国際博覧会協会

ユカギルマンモスは、保存状態が良好でかつ他に類を見ない貴重な標本であり、切り開いたり、破壊したりして内部の様子を観察することができないため、日本におけるユカギルマンモスの総合的な研究計画における最大のプロジェクトとして、X線断層装置(CT装置)を用い、標本を壊すことなく内部の解剖学的情報を画像情報として取り出すことを当初より計画してまいりました。
今回、国際ユカギルマンモス学術研究委員会(委員長、サハ共和国トルスティフ教育科学大臣)副委員長の鈴木直樹氏(東京慈恵会医科大学教授、高次元医用画像工学研究所所長)をリーダーとするプロジェクトチームにより、ユカギルマンモスの頭部及び左前肢のCT計測を行い、画像データを取り出し三次元化することに成功しました。ケナガマンモスの成体の内部構造を非破壊で画像化したのは世界で初めてのことです。

1.作業の経過

(1)予備調査

  • 2004年7月、アジアゾウの骨格標本を用いた予備実験を実施。
  • CT撮像条件の割り出しや標本の輸送方法などを決定。

(2)CT計測用カプセルの製作

  • CT計測に際しても安全にかつ安定した冷凍状態のまま標本をCT計測するためのカプセルを設計、製作。
  • カプセルは複数の特殊な素材を用い、一切の金属を使わずに製作し、長時間標本を冷凍状態におけるだけでなく、生物学的にも環境から内部を隔離させることのできる構造。

(3)大型CT装置による計測

  • 2004年12月17日から22日、独立行政法人家畜改良センター(福島県西郷村)にある家畜用大型CT装置で計測し基礎断層像データを取得した。(通常の医学用のCT装置では全長2メートル、重さ250キログラムを超すユカギルマンモス頭部の検査は不可能)
  • 冷凍コンテナの中で、標本をCT計測用カプセルに詰め替え、カプセルごと慎重に大型CT装置に移し、約1週間かけて計測。

(4)画像解析

  • CT断層像データを、東京慈恵会医科大学、高次元医用画像工学研究所に運び解析を開始。同データは、数千枚に及ぶ。
  • 各断層像からは計測時に発生したいろいろなノイズの除去、空間的合成の後、三次元画像化する作業が進められ、さらに画像データベース化する作業を現在も続けている。

2.現時点での成果

  • ユカギルマンモスの内部は、顔面の筋肉組織や頭蓋骨内部の脳組織の存在などが明らかとなり、予想通りかなりの解剖学的情報を有していることが判明。
  • 脳の形状を三次元化し体積を計測した結果、現世のアジアゾウとほぼ同じ大きさを持つことがわかった。
  • ケナガマンモスの頭部には他のゾウの仲間と同じく、脳を包み込む形で、エアセルと呼ばれる空気を含んだ複雑な骨の構造がある。ユカギルマンモスではこの部分に均一に土砂が充満している状況が見られた。今後の詳しい解析が必要であるが、比較的保存状態の良い皮膚や脳組織の状態を考慮に入れると、ユカギルマンモスが死後間もない時期に水底に沈んだ可能性が示唆された。

3.今後の予定

  • 今後さらなる画像分解能の向上、精密な三次元画像化のための作業が続くと共に、詳細な解剖学的構造の解析、生理機能の解明を進めていく予定。
  • これらの研究結果とコンピュータグラフィクスを活用した三次元画像などは、グローバル・ハウス、マンモスラボにて冷凍標本とともに会期中展示公開する予定。

以上