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押井守監督 最新作『めざめの方舟(はこぶね)』製作発表 ― 押井ワールドの新展開 ―

2005年1月21日

2005年愛・地球博(愛知万博 3月25日から9月25日、愛知県長久手町、豊田市、瀬戸市で開催)で、民間企業7社が共同出展するパビリオン「夢みる山」のテーマシアター『めざめの方舟(はこぶね)』の概要がまとまりました。

「夢みる山」は、積水ハウス・中部日本放送・東海テレビ放送・中日新聞社の4社が共同展示するテーマシアター『めざめの方舟(はこぶね)』と、シヤチハタ、日本ガイシ、ブラザー工業それぞれが個別出展する計4つの展示ゾーンからなります。

▼テーマシアターのコンセプトおよびタイトル

『めざめの方舟(はこぶね)』(英語表記Open Your Mind)は、企業パビリオン「夢みる山」のテーマシアター。積水ハウス、中部日本放送、東海テレビ放送、中日新聞社の民間4社が共同出展し、来場者に「20世紀に壊れかけた地球環境を取り戻そう」と呼びかけます。総合演出は最新作のアニメーション映画『イノセンス』が、カンヌ国際映画祭(第57回)に日本のアニメ映画史上初めてノミネートされた押井守監督が担当します。タイトルの『めざめの方舟』には、「シアターに入った瞬間、実写とコンピューター・グラフィックス(CG)を駆使した映像と巨大な美術造形群に圧倒され、日常感覚と縁を切り、普段使わない五感を呼び覚まし、地球環境にめざめてもらいたい」との思いが込められています。

▼世界初の体感型映像空間

シアターは円筒形で、床、壁、天井が映像と照明で演出されます。
床には、50インチのプラズマ・ディスプレー・パネル(PDP)96台を敷き詰め、これをネットワークでつなぎ、高精細映像を縦約9メートル、横約10メートルの大画面に一枚絵として映し出す世界初の「床面プラズマ・マルチ・ディスプレー・システム」が設置されます。

天井は太古の森をイメージし、降り積もった落ち葉の間からキノコがニョキニョキと生え出した様を黒皮の鉄製の造形物で表現しています。所々に世界初の長径5メートルのアクリル製タマゴ形スクリーンが取り付けられ、透明感のある立体的な映像が展開されます。また、天井中央部には、押井監督が「パビリオンのコア(核)であり、宇宙モデル」と話す、精霊「汎(ぱん)」と呼ぶ巨大な人形(天井人型投射体)も存在し、来場者も含めて館内に存在するもの全てがスクリーンという、押井監督独特の世界観の中で、「自然に対する畏敬(いけい)の念を来場者に体感してもらう」企画です。
上映時間は約10分間のプログラムとなっています。

▼施設概要

シアター規模:楕円形(長径29m、短径25m)の床面で出展面積800m2、高さ20m
収容人数:200名/1回(1階床面30名 スロープ170名)
入場サイクル:15分(上映時間約10分)

▼動線計画

▼美術概要(押井監督のコメントより抜粋)

※汎(ぱん)は「あまねく」の意。汎神論の汎。

自然と人間をつなぐ森羅万象の象徴となる精霊「汎」は3つの顔と6つの手を持ち、多様な価値観、複雑な人間の感情・考え方などを表現している。

精霊は、「天と地の間にあるもの」であり、人間を取り巻く世界を包括した象徴。
また、「宇宙モデル」であり、「パビリオンのコア(核)」としての存在でもある。

天を地に、地を天に...。
環境の記憶の森を内側から袋返しにした空間を造る。そして、その空間をスクリーンとし、時空を超えた環境の記憶を映像として映しだす。

天である床には強い光りを放つ96台のPDP。地である天井には大地がはらんだ巨大なタマゴが生命のうごめきを照射する。天地をつなぐ壁と中空には揺らぐ紗幕のオブジェを配す。これらの造作物は全てがスクリーン。

この一風変わった映像装置が、人間存在の深えんに確としてある環境の縷々(るいるい)たる記憶を、我々に想起させ体感することを可能にする。

自然と人間をつなぐ森羅万象の象徴。
特に自然を動物で表現し、人間の体と合成させることで、自然に対する畏敬の念を象徴する。

6ヵ月間の会期中に3つの表現側面に合わせて、3つの頭部を2ヵ月ごとに交換する。

設定上は、他に「金鋼(こんごう)」「馬頭(ばとう)」「霊羯(りょうけつ)」が用意されている。

▼システム概要

シアターの特徴は、床、壁、天井に展開される映像が、それぞれ異なる方法によって演出される点にあります。

■世界初の「床面プラズマ・マルチ・ディスプレー・システム」

床面の映像は、押井監督が「普段平面で眺める映像が地面となる。2本足で立つ人間は映像の上に立ったとたん非日常的な感覚に包まれるだろう」と語っているように、今回の体感型映像空間の中心的な役割を果たしています。
プラズマ・ディスプレー・パネル(PDP)を採用したのは、押井監督の「作った映像をフルレンジで出したい」との強い要望から。50インチPDPは縦12台、横8台の計96台。これをネットワークでつなぐことによって、高精細映像を縦約9メートル、横約10メートルの一枚絵として映し出すこともできる世界初の「床面プラズマ・マルチ・ディスプレー・システム」を構築しました。

■最新のデジタル・ライティングによる照明システム

照明は、米国High End Systems社の映像と照明を融合した最新のデジタル・ライティング「カタリスト・DL1」を核にしています。
『めざめの方舟』は、映画館などの通常のシアターと違って 、天井を見ても、床面を見ても、壁面を見ても映像が全部違うという、視点を固定させない演出が特徴となっています。そのため、固定した画面としての映像を投射するだけでなく、画面そのものを動かすことができる「カタリスト・DL1」によって展開される映像が、演出上重要な位置を占めています。演出パターンによって異なる開閉をみせる天井紗幕、館内の内壁を全て覆う壁面スクリーン、床面映像の周りの「六将」への投射という、大きく3つの演出パートを「カタリスト・DL1」が担っています。

■世界初の長径5メートル・タマゴ形(3次元)アクリルスクリーン

天井部には、アクリル製のタマゴ形スクリーンが大小計8基取り付けられています。製作は、香川県のアクリル加工の世界的なメーカー・日プラ株式会社が行ないました。タマゴ形の半球面体の映像投射スクリーンで、プロジェクターによる映像を裏面から投射することで、アクリルの厚みとタマゴ形による球面の効果により、透明感ある独特の立体的な映像を表現することができます。長径が5メートルの大型スクリーンは3基、長径1.2メートルの小型スクリーンは5基あり、こちらは、照明によって演出されます。
このほかにも、太古の森をイメージして、すべて鉄で作られた巨大な美術造形が天井部を覆い、中央部には人型投射体となる精霊「汎」が取り付けられ、照明によって演出されます。

■14+1のマルチ出力によるデジタル音響システム

音響は、14+1のマルチ出力となっているのが特徴となっています。スピーカーは円筒形のシアターの内柱の上下6カ所に12台、床面上の来場者を狙ったスピーカーが天井2カ所に2台、床に設置されたサブウーファー4カ所に4台の計18台で、マルチ・トラック・システムからアンプの手前までデジタル伝送し、音質劣化を最小限に抑えています。
 音響も映像と同じように、来場者の聞く位置が特に設定されていないため、フォーカスをあわせない音場空間となっています。また、スロープ上を歩く人からするとスピーカーがすべて内側を向いていて、その外側に来場者が位置することになるため、サラウンド化するのが難しい空間となっています。この問題解決のために、音をコントロールするミキサーには最新鋭のデジタル・ミキサーを用いました。これによって完全に独立した音の構築が可能となっています。

▼プロフィール

■総合演出 押井 守 / Oshii Mamoru 

1951年8月8日生まれ。東京都出身。東京学芸大学教育学部美術教育科卒業後、アニメーションのプロダクションに入り『一発貫太くん』 『タイムボカンシリーズ・ゼンダマン』などのテレビ作品を演出。所属を変えて『ニルスのふしぎな旅』 『うる星やつら』を制作。その後フリーとなり、近未来の東京を想定したロボットアニメ映画『機動警察パトレイバー』を監督、関連コミックス1350万部、ビデオ100万本を売り上げ、宮崎駿、大友克洋両氏らとともに日本のアニメーション・ブームの火付け役となる。

サイボーグ化した人間の物語であるアニメーション映画『GHOST IN THE SHELL-攻殻機動隊-』は1995年、日本をはじめ米英で公開され、翌96年8月には米国の総合エンターテインメント雑誌『ビルボード』のホームビデオ部門で売り上げ第1位に。日本人の『ビルボード』第1位は、故・坂本九さんの歌『上を向いて歩こう(スキヤキ) 』が1963年に同誌のヒットチャートで第1位になったのに次いで2度目で、日本のアニメーションを名実ともに世界一にした。
日本のアニメーションは「ジャパニメーション」という造語を生むほど世界的に評価が高く、その旗手として脚光を浴び、斬新な演出を駆使する押井作品は、米ハリウッド映画『タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督や『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟、日本のテレビ番組や映画になった『踊る大捜査線』の本広克行監督ら国内外の著名な映像作家に強い影響を与えている。

自身の近作としては、2000年6月に脚本担当のアニメ映画『人狼(JIN-ROH)』が公開され、ポルトガル映画祭アニメーション部門でグランプリ受賞。2001年公開の近未来をテーマにした実写映画『 Avalon(アヴァロン)』はポーランドでのロケ作品で、第54回(2001年)カンヌ国際映画祭の特別招待作品となった。2004年3月に公開された最新作『イノセンス』も同映画祭の「オフィシャル・コンペティション部門」にノミネートされ、2度目の参加となった。実写、アニメーションなどのジャンルのない同部門へのノミネートは、57回を数えるカンヌ国際映画祭の歴史においても計6作品のみ。いずれもディズニーなどによる歴史的傑作(『ダンボ』 『ピーターパン』『ファンタスティック・プラネット』『シュレック』)ばかりで、アニメーション映画のノミネート自体が数十年に一度あるかないかの出来事。日本のアニメーション映画としては初めてのノミネートとなり、映画史に新たな歴史を刻んだ。カンヌ国際映画祭のノミネートには、商業性のほか、特に高い芸術性が求められることで知られており、押井作品が優れた芸術作品としても認知されたことを物語っている。また、『イノセンス』は、第25回日本SF大賞に選ばれたほか、今年2月末の米アカデミー賞のノミネート候補対象作品にも選ばれている。

1996年には、通商産業省(当時)と財団法人マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)共催の「マルチメディアグランプリ」(マルチメディアコンテンツ関連産業の総合的な創造・育成及び振興を目的に様々な分野の映像作品および制作者を奨励、表彰)で「コンテンツ産業界の発展に貢献」として“人物表彰の部”の最高賞「MMCA会長賞」を受賞。名古屋で1999年から隔年開催されている若手アニメーターの登竜門「ジャパン・デジタル・アニメーション・フェスティバル」では審査委員を務め、次世代の育成にも取り組む。このほか表現ジャンルは、さらにファミコン用ゲームソフトづくりをはじめ、小説『獣たちの夜』や雑誌連載の執筆など幅広く、マルチな才能を発揮している。

■プロデューサー:久保 淳 / Kubo Atsushi

1962年生まれ。神奈川県出身。大学在学中よりシネマプロデュース研究会に所属し、8mmの自主映画製作を始める。大学卒業後よりフリーの映像制作部を経て、91年、(株)ツインズ入社。デルジベット(ロックアーティスト)、南果歩(女優)、渡辺いっけい(俳優)等のマネージメント部門を立ち上げ、プロデュース。併せて映画、音楽のプロデュース活動も開始する。93年、ツインズを離れ、94年、音楽制作、映像制作プロダクションとして有限会社デイズ(現 株式会社デイズ)を設立。代表取締役となる。以降、多数の作品に関わりながら現在に至る。
音楽では、映画『人間交差点』『サッカーを100倍楽しく見る方法』、BSドラマ『女にも七人の敵』『虚無への供物』“デルジベット”のアルバム、ライブビデオ等をプロデュース。デイズ設立前の主な参加映画作品は『TOKYO POP』『孔雀王』『ジュリエット・ゲーム』『どついたるねん』『帝都大戦』『獅子王たちの夏』『ワールド・アパートメント・ホラー』等。
96年よりバンダイグループが推進する大型次世代映像製作構想“デジタルエンジン・プロジェクト”にプロデューサーとして参加。近年のプロデュース作品は、押井守監督作品『Avalon 』 (01年1月日本、同年2月韓国公開。02年3月以降、欧米各国にて順次公開。01年カンヌ国際映画祭特別招待作品)、第11回PFFスカラシップ作品『IKKA:一和』(02年/川合晃監督)、東宝製作ガン&アクション・オムニバス映画『KILLERS』(03年/押井守・きうちかずひろ・大川俊道・河田秀二・辻本貴則監督)など。近日公開予定の作品としては『黄泉』(仮題)小松隆志監督/05年夏公開予定がある。

■映像演出:林 弘幸 / Hayashi Hiroyuki

1958年生まれ。大阪府出身。京都市立芸術大学美術学部卒業後、株式会社リクルート入社。
株式会社トーヨーリンクス(現:株式会社リンクス)に入社し、CG制作を始める。88年、リンクスとディレクター契約し、大型CG映像、CM等の演出を担当。91年、海亀事務所(株)を設立。
97年よりバンダイグループが推進する大型次世代映像製作構想“デジタルエンジン・プロジェクト”の押井総監督作品『G.R.M.』にデジタル監督として参加。以後、デジタルエンジン・プロジェクトの各種デモ映像の他、『Avalon』のデジタル・アートディレクターを務め、押井監督作品のデジタル・ディレクターとして欠かせない存在となる。
その他、CAPCON『鬼武者』や光栄『決戦2』『三国志8』などのムービー・コンテや数多TVCF制作を手掛けて現在に至る。押井監督最新長編アニメ『イノセンス』にも参加している。

■音楽:川井 憲次 / Kawai Kenji

1957年、東京都出身。幼い頃より、父親の影響で、海外の映画音楽を聞く。東海大学工学部原子力工学科在籍中、MAZDAカレッジサウンドフェスティバルで優勝。大学中退後、ギタリスト、作曲家としての道を歩み、現在に至る。
87年、押井守監督作『紅い眼鏡』で映画音楽デビュー。以降、『めぞん一刻』『デビルマン』『無責任艦長タイラー』『赤ちゃんと僕』『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』『RAVE』等々のアニメ作品は数知れず、近年は『リング』『リング2』『ガラスの脳』『さくや妖怪伝』『修羅雪姫』『仄暗い水の底から』等々の実写映画にも関わる。押井守監督作品にはアニメ・実写問わず、そのほとんどに参加し、『Avalon』の音楽が高く評価され日本はもとより公開各国で話題になったことは記憶に新しい。押井監督最新作『イノセンス』にも参加している。

■美術:磯見俊裕 / Isomi Toshihiro

1957年生まれ。有限会社ウォーターメロン代表。87年より、松本雄吉主催の劇団維新派の美術スタッフとして公演に参加。1989年より舞台監督。汐留の空き地に建てた広大なセットが話題となった劇団〈維新派〉のプロデュースも手掛ける。
『風の谷から』の美術スタッフとして初めて映画の現場に参加。木に関するイベントを手掛けていた時に山本政志に出会い、『てなもんやコネクション』(山本政志監督/90年)に参加。以後、『水の中の八月』(石井聰亙監督)『BeRLiN』(利重剛監督/95年)、『Helpless』(青山真治監督/96年)、『ユメノ銀河』(石井聰亙監督/97年)、『ワンダフルライフ』(是枝裕和監督)などの美術を担当。映画『白痴』に先駆け『NARAKUHE』『NUMANITE』の手塚眞監督2作品の美術も担当。97年より、諏訪敦彦監督のデビュー作『2/デュオ』をきっかけにプロデューサー活動を始める。他、『JUNK FOOD』『ランデブー』などでプロデューサーとしての手腕を発揮。
是枝監督『ワンダフルライフ』で毎日映画コンクール美術賞を受賞。最近の公開作品だけでも、石井聰亙監督『五条霊戦記』、松岡錠司監督『アカシアの道』、是枝裕和監督『Distance』、塩田明彦監督『害虫』、深作欣二監督最新作『バトル・ロワイヤル2』、崔洋一監督『血と骨』など、話題作を数多く手掛けている。

■システム設計:山口泰弘 / Yamaguchi Yasuhiro

1965年、東京出身 1987年ヒビノ株式会社に入社、主に大型特別プロジェクトの現場を経験。短期レンタル(コンサート)から博覧会まで、音響、映像、制御関係のシステム設計及び現場施工を担当する。
入社途中より米国”HIBINO USA”にテクニカル・ディレクターとして出向、現地の人間と共に、海外の展示会、システムインテグレーションを経験する。帰国後は海外担当として外人アーティスト及び、国際的イベントのAV機器コーディネート、海外AVブランドの輸入業務をこなす。
2001年AVマルチメディアの技術担当ディレクター/コーディネーターとして独立後、国内/海外顧客及び海外イベントのサポート業務を行う。
主な担当作品
(国内) :即位の礼、特別中継イベント及び宮殿内AV機器設置 トヨタ・ショールーム「AMLUX Tokyo」 GAP Japan 店鋪AV機器システム XEROX赤坂ショールーム、ディズニーランド東京 ワーナー・ブラザース・スタジオストア 東京モーターショー
(海外)COMDEX FALL Microsoft/Wordperfect/HP(USA) CES Panasonic(USA) NTT DoCoMo USA show room(USA) Disney world Fantasia event(USA)
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