会場整備工事について、工事用沈砂池の検討をすすめ、環境保全措置の検討及び周辺河川への影響についての検証等を行った。
予測の前提とした工事用沈砂池の配置・規模等を別添の 図1 及び 図2 に示す。
海上地区及び青少年公園地区における会場整備工事に伴い降雨時に発生する濁水の浮遊物質量(SS)について、環境影響評価書(平成14 年6月公告。以下、「評価書」という。)と同じ方法で予測を行った。
工事用沈砂池に流入する濁水の濃度を、表1 に示す。
表1 発生浮遊物質量の条件
発生浮遊物質量(mg/l) | 備考 | |
---|---|---|
改変部 | 1,000(C1 )* | 造成による裸地部分をシートで養生するなど対策を施し土砂の流出をできる限り少なくした場合 |
未改変部 | 210(C2 ) | 現地の降雨時調査で測定された浮遊物質量の最も大きな値 |
*(出典)「建設工事における濁水・泥水の処理工法(小林勲、昭和58年、鹿島出版会) 」
流域の改変部及び工事用沈砂池面積は表2 に示す。
表2 改変部、未改変部及び工事用沈砂池の面積
改変部面積(m2) | 未改変部面積(m2) | 工事用沈砂池(m2) |
---|---|---|
33,780 | 18,130 | 1,518 |
*注)海上地区内ゲートゾーン(図1 の海上1号~3号の沈砂池を含む区域)においては
改変前よりすでに裸地であるため、評価書同様、今回の計画によって新たに影響を受ける
ことはないと判断し、予測対象とはしていない。
降雨量が多いほど発生する濁水も多くなることから、降雨時の現地調査結果において、降り始めからの24時間降水量が最も大きかった平成7年10月1日15時~10月2日14時の観測結果をもとに予測した。
表3 予測に使用した降雨事例
降雨量(mm) | 放流河川における浮遊物質量( mg/l ) | ||
---|---|---|---|
時間最大雨量 | 10 | 最大濃度 | 210 |
24時間雨量 | 50 | 24時間平均濃度 | 38 |
*(注)浮遊物質量は平成7年10月1日15時~2日14時の観測結果を基に設定した。
工事用沈砂池の流出口等における浮遊物質量の予測結果を表4 に示す。
流出する濁水の浮遊物質量は、時間最大値で47.5mg/l、24 時間平均値で17.6mg/l を示し、降雨時における放流河川の実測値の時間最大値210mg/l、24 時間平均値38mg/l を下回っている。さらに評価書の予測値の時間最大値58.6mg/l、24 時間平均値21.8mg/l を下回っている。このため、降雨による造成工事(切土・盛土)箇所からの濁水による周辺河川への影響は小さいと予測された。
表4 浮遊物質量の予測結果
(単位:mg/l)
今回の予測値 | 評価書の予測値 | 吉田川における実測値 | |
---|---|---|---|
時間最大雨量 | 47.5 | 58.6 | 210 |
24時間雨量 | 17.6 | 21.8 | 38 |
工事用沈砂池に流入する濁水の濃度を、表5 に示す。
表5 発生浮遊物質量の条件
発生浮遊物質量(mg/l) | 備考 | |
---|---|---|
改変部 | 1,000(C1 )* | 造成による裸地部分をシートで養生するなど対策を施し土砂の流出をできる限り少なくした場合 |
未改変部 | 510(C2 ) | 現地の降雨時調査で測定された浮遊物質量の最も大きな値 |
*(出典)「建設工事における濁水・泥水の処理工法(小林勲、昭和58年、鹿島出版会) 」
流域の改変部及び工事用沈砂池面積は表6 に示す。
表6 改変部、未改変部及び工事用沈砂池の面積
改変部面積(m2) | 未改変部面積(m2) | 工事用沈砂池(m2) |
---|---|---|
532,400 | 645,600 | 20,181 |
降雨量が多いほど発生する濁水も多くなることから、降雨時の現地調査結果において、降り始めからの24時間降水量が最も大きかった平成12年5月27日9時~5月28日8時の観測結果をもとに予測した。
表7 予測に使用した降雨事例
降雨量(mm) | 放流河川における浮遊物質量( mg/l ) | ||
---|---|---|---|
時間最大雨量 | 5.5 | 最大濃度 | 510 |
24時間雨量 | 44.5 | 24時間平均濃度 | 196 |
(注)浮遊物質量は平成12年5月27日9時~28日8時の観測結果を基に設定した。
工事用沈砂池の流出口における浮遊物質量の予測結果を表8 に示す。
流出する濁水の浮遊物質量は、時間最大値で88.2mg/l、24 時間平均値で40.7mg/l を示し、降雨時における放流河川の実測値の時間最大値510mg/l、24 時間平均値196mg/l を下回っている。さらに評価書の予測値の時間最大値106.8mg/l、24 時間平均値49.3mg/l を下回っている。このため、降雨による造成工事(切土・盛土)箇所からの濁水による周辺河川への影響は小さいと予測された。
降雨時の濁水については、工事用沈砂池の保全対策を徹底することにより、環境への影響は評価書における計画(基本計画)より低減できるものと予測された。
さらに、評価書の回避又は低減のための方針にあげた保全対策(造成法面の早期緑化など)の他に、土砂を効果的に沈降、除去するため、工事用沈砂池の構造には「矢作川方式」といわれる流路及び竹そだろ過柵等の沈殿処理対策を実施することなどにより、環境への影響は低減が図られるものと判断した。
「矢作川方式」とは、矢作川沿岸水質保全対策協議会(1966 年設立)が提唱し、構築された民間主導型の流域管理の手法。濁水の処理施設である工事用沈砂池については、流路を設け流れを均一にしたり、自然素材である竹そだを利用することにより、排水の濁りを効果的に除去でき、全国的にも高く評価され、多くの実績がある。