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ユカギルマンモス発見地点現地調査(9月)の概要

1.調査日程

9月4日 :ヤクーツクからティクシ(ヘリ基地)へ移動
9月5日 :チャーターヘリにて現地入り、現地調査
9月6日~7日 :現地調査
9月8日 :現地調査、ティクシへ
9月9日 :ヤクーツクへ
9月10日:ヤクーツクにて調査のまとめ、および採取した標本の整理

2.調査隊

サハ共和国の主催するユカギルマンモス学術研究委員会(委員長:サハ共和国教育科学大臣G. V. トルスティフ)のメンバーを中心とする総勢約15名。
メンバーは、同委員会副委員長A.ティホノフ(ロシア)、同委員P.A.ラザレフ(サハ)、G.G.ボイスコロフ(サハ)、Y.K.ブルラコフ(ロシア)、B. ビュイグ(フランス)、D.モル(オランダ)、D.フィッシャー(アメリカ)ほか。日本からは博覧会協会山田宗範参事ほか2名が参加。

3.現場での作業

  • 今回は、残存物の捜索を主目的とし、頭部や前肢が発見された場所周辺の未捜索の部分について、より範囲を広げ、また、より深い部分へと発掘を行った。
  • 捜索にあたっては、現場には雪や氷はなく地表が完全に露出していたため、表層はシャベルやコテなどを利用し、永久凍土の部分はツルハシなどを利用して、慎重かつ注意深く発掘と捜索を行った。
  • 水面下の部分についても、小規模なダムをつくり、水底部分を掘り下げるなどして捜索を行った。
  • 最終的には、表土を排除し、骨格等の捜索を行うとともに、新鮮な断面を利用して周辺の地層の観察を行った。
  • 上記の他、頭部等の発見場所及びその周辺の土壌や花粉分析用の試料採取も実施した。

4.発見物

今回、新たに発見されたものは部分的な骨格を含めると以下のとおり。

  1. 骨格:胸椎10点、肋骨8点(右7点、左1点)、右上腕骨
  2. 多量の体毛
  3. 皮膚の一部(既にミイラ化した状態で発見)
  4. 腸壁とみられる組織(今後の研究による部位の特定が必要)の一部およびその内容物

これらの標本は、現場で採取し、ヤクーツクに運搬し、マンモス博物館において収蔵されている。

5.調査の結論

今回水面下まで調査したが、体の前半部の骨しか発見できなかった。調査場所付近は、河川の浸食によって形成された崖であり、国際学術研究委員会の専門家の意見として、体の後半部については流された可能性が高く、発見は困難であるとの統一見解を得て、今回の調査をもってユカギルマンモスの発掘調査を終了することを確認した。

過去に発見された部分をあわせたユカギルマンモスの発見物の全体像は以下のとおり。

  1. 頭部(2本の牙あり)
  2. 頚椎の全て、大部分の胸椎
  3. 左前肢(ヒジから先は軟組織が残存、上部は骨格)
  4. 右前肢の一部
  5. 肋骨の一部(特に右胸に相当する部分)
  6. 皮膚の一部(既にミイラ化した状態で発見)
  7. 腸壁(今後の研究による部位の特定が必要)の一部およびその内容物
  8. 体毛

発見物は、体の前半部に相当する部分である。また、発見された部位のうち、崖の奥にあった部分(地表や湖からはなれた部分)のみに、軟体部が残されている。

6.今後の研究方針

今回の調査でユカギルマンモスの現地調査は終了し、今後は室内での研究を進めることになる。次のような項目についての研究の実施を予定している。

  • ユカギルマンモスの外部形態および内部形態の非破壊三次元計測による研究
  • ユカギルマンモスの生活史の解明
  • 当時の植生など古環境復元
  • ユカギルマンモスの化石化過程の研究
  • DNAによる系統解析や組織学的研究  など

7.展示の考え方

ユカギルマンモスは、グローバル・ハウスに隣接して設置する冷凍展示室内に、頭部、左前肢及び骨格等その他の発見物をまとめて展示する予定である。
グローバル・ハウス内の展示ゾーンにも、マンモス関連展示を行うことを予定しており、ここではマンモスとその時代の地球環境に関する一般的な研究成果に加えて、ユカギルマンモスの全身を再現した模型や、調査発掘の模様、CG等を活用した最新の研究成果などの映像も併せて展示する予定である。

愛・地球博マンモス学術研究・展示検討委員会

博覧会協会は、ユカギルマンモスについての学術研究の推進と展示監修を行う機関として、これまでの「愛・地球博マンモス発掘・展示学術研究委員会(鈴木 直樹委員長)」と「愛・地球博マンモス発掘・展示実施委員会(餌取 章男委員長)」を統合するとともに委員を拡充し、「愛・地球博マンモス学術研究・展示検討委員会」を立ち上げることとし、本日9月22日、その準備会合を実施する。

委員候補者

<委員長>

濱田隆士 :(財)日本科学協会理事長(東京大学名誉教授、放送大学名誉教授)

<委員長代理>

鈴木直樹 :東京慈恵会医科大学高次元医用画像工学研究所 教授
餌取章男 :江戸川大学社会学部 教授

<委員>

遠藤秀紀(ひでき) :国立科学博物館動物研究部 研究官
小澤智生(ともお) :名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻 教授
三枝春生(はるお) :姫路工業大学自然・環境科学研究所 助手(兵庫県立人と自然の博物館 研究員)
中村俊夫 :名古屋大学年代測定総合研究センター 教授
福田正巳 :北海道大学低温科学研究所 教授
渡邉和男 :筑波大学遺伝子実験センター 教授

これまでの経緯

2003.7.17「愛・地球博マンモス発掘・展示実行委員会」を発足し、8月に調査チームをロシアに派遣することを発表。
2004.1.16ロシア連邦サハ(ヤクーチア)共和国との間で、同国内ウスチ・ヤンスク郡で発見された「ユカギルマンモス」について、日露共同事業という枠組みの下で、万博展示を行うべく共同で努力する旨の覚書を調印。翌17日、アキーモフ サハ共和国副大統領が出席し、共同記者会見を開催。
2004.2.16~25北海道内(上川郡東川町内 忠別ダム建設工事共同体事務所)にて、掘削実験を実施。
2004.5.22サハ(ヤクーチア)共和国大統領令により、「ユカギルマンモス学術委員会」(委員長:トルスティフ G.V.サハ共和国教育科学大臣)が発足。副委員長に鈴木直樹 東京慈恵会医科大学教授が就任。
2004.5.27シュティロフ サハ共和国大統領が来日。ロシア連邦、サハ(ヤクーチア)共和国及び博覧会協会の3者間において、日露共同プロジェクトとして、「ユカギルマンモス」を博覧会協会のパビリオンで展示することについて合意。記者会見の席上、発見された「ユカギルマンモス」頭部の写真を公開。
2004.6.8~15 「ユカギルマンモス」発見地点現地調査(6月)を実施。
2004.6.21「ユカギルマンモス」発見地点現地調査(6月)概要を発表。発見済みの左前肢の写真を公開。
2004.9.4~10ユカギルマンモス発見地点現地調査(9月)を実施。
2004.9.22ユカギルマンモス発見地点現地調査(9月)概要を発表。

以上