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ユカギルマンモス情報

1. 調査行程

6月8日 :ヤク-ツクからティクシ(ヘリ基地)へ移動
6月9日 :チャ-タ-ヘリにて現場入り、キャンプ設営
6月10日 :現地調査
6月11日 :現地調査、キャンプ撤収、ティクシへ
6月12日~15日 :ヤク-ツクにて学術研究委員会

発見現場周辺の風景

発見現場周辺の風景

2.調査隊

サハ共和国の主催するユカギルマンモス学術研究委員会(委員長:サハ共和国教育科学大臣G. V. トルスティフ)のメンバーを中心とする総勢約30名。

メンバーは、同委員会副委員長鈴木直樹(日本)他日本隊員11名、同委員P. A.ラザレフ(サハ)、G. G.ボイスコロフ(サハ)、V. N.ポタポフ(サハ)、Y. K.ブルラコフ(ロシア)、B.ビュイグ(フランス)、D.モル(オランダ)、J.ショシャニ(エリトリア)他。

ユカギルマンモス発見現場への調査チームの到着風景

ユカギルマンモス発見現場への調査チームの到着風景

3.発掘現場と調査の概況

ユカギルマンモスの発見された現場は、ロシア連邦サハ共和国の北端のユカギル村から東方約30km離れた川の南側斜面である。川岸の平坦な頂上部から水面までの高さは約4mあり、頂上部から深さ約1mから下の部分の永久凍土から、頭部をはじめとするマンモス部位が発見されている。

今回の調査の時点(6月10日時点)では、河川付近の頂上部は、おおむね雪が融け、ツンドラ植生が露出していた。しかしながら、川岸の斜面は凍結しており、発見現場付近は2mから4mの厚さの雪と氷におおわれていた。このため、調査チームはこれらの雪と氷を取り除き、発見場所を露出させ、観察、測量を行った。

雪と氷を除去した後の斜面において、ユカギルマンモスの体毛や腸と思われる消化管内の食物などの内容が残されていることを確認するとともに、今後の発掘作業に必要な発見現場の測量や地形の記録を行った。

また、昨年秋に行われたサハ共和国を中心とする調査隊によって確認され、現場近くの永久凍土内に保存されていた左前肢を掘り出し、冷凍状態のままヤクーツクの応用環境研究所の冷凍庫まで輸送した。

発見場所の雪と氷の除去作業風景

発見場所の雪と氷の除去作業風景

発見場所の確認・測量作業

発見場所の確認・測量作業

4.これまでに確認されたユカギルマンモスの部位の状況と所見

前述のサハ共和国を中心とする調査隊によって発見された、完全な牙2本を有し軟体部が保存された状態の頭部の他、頭部に連続するほぼ完全な頚椎、胸椎の一部、数点の肋骨、肩甲骨、上腕骨、関節がつながった状態の左前肢を確認した。

このうち、頭部と左前肢先端部は、過去に発見された、ベレゾフスカマンモスやベビーマンモスの個体と比較しても、保存状態が非常に良いと言える。頭部には体毛を保持した頭皮が残されているだけでなく、左側にはまぶたを有する眼窩や完全な形の耳が残っていることがわかった。また頭部内の脳等の部位も非常に良い状態で維持されていることが予想される。左前肢も、特に先端部には、皮膚、筋肉がほぼ完全な状態で残されている。今後、X線装置やCT等による調査により、マンモスの頭部の内部構造や運動能力等についての研究が可能と考えられる。

発見場所で確認されたユカギルマンモスの体毛

発見場所で確認されたユカギルマンモスの体毛

発見現場近くの永久凍土内に保存されていた左前肢

発見現場近くの永久凍土内に保存されていた左前肢

各部位が発見された場所の状況から、ユカギルマンモスは体の背中、左側を下にし、体を仰向けにした状態で、凍土内に斜めに定置していたものと考えられる。現在のところ、相対的に上側にあった部分が発見されており、体の後半部分は発見されていない。これが、現場の永久凍土内に引き続き残されているのか、他に流出し、移動しているのか明らかでない。なお、今回の調査では地中レーダーをティクシまで持参したが、ヘリコプターの出発直前で使用不可となり、今回は残念ながら使用を断念した。今後の発掘作業行程の中で、地中内の調査も行う予定である。

ユカギルマンモスが今回発見された場所で死亡したのか、別の場所で死亡し、その後現在の場所に移動してきたのかは今後、周辺の地質調査により明らかになろう。

今後、8月末にも、再度現地調査を行う予定である。
また、今回開催された学術研究委員会で、以下の研究項目が合意された。

  • サイトの地質学的・土壌学的調査および化石化過程の研究
  • マンモスの外部形態及び非破壊手法を用いての内部形態の研究
  • マンモスの軟組織の組織学、細胞学、遺伝学的研究
  • 花粉及び古植物学的研究と古環境解析
  • 土壌及びマンモス遺体中の微生物学的研究

以上