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愛・地球博 給水塔ペインティングアートコンテスト審査講評

審査委員長

原田 鎮郎

愛知県青少年公園内には給水を目的として昭和45年に建設された受水槽施設があり、数年ごとに塗装塗り替え工事が行われて来た。その塗り替え時期を向かえるにあたり愛・地球博開催を記念して塗装デザインを広く募ってはどうかとの提案が関係者から出され、2005年日本国際博覧会協会主催、愛知県共催の形で昨年11月末デザイン公募が実施された。

応募者は52名。海外在住の日本の方2名を含め、北は北海道、南は沖縄まで全国規模での応募があり、また年齢層も14歳の中学生から68歳の方までと、その巾の広さと関心の高さに愛・地球博関係者の一人として嬉しさを覚えた次第である。

作品の傾向は、愛・地球博のテーマ「自然の叡智」を主催者側から提示しているので当然「自然」「宇宙」「地球」をデザインテーマにしている作品が多く見られた。そのような作品をデザイン性、博覧会のテーマ性、実現性、環境への配慮などの観点から第一次審査をおこなった。この結果29点が選定され、さらに3月17日、8名の審査委員により5段階採点にて最終審査が実施された。

最優秀賞に選出された田中真さんの作品は、CGを巧みに用い、水を大空が支えているイメージを高度な技術で美しく表現していて、デザイン性、テーマ性、独創性で高得点を集めた。

次点(優秀賞)に選出された鈴木りえこさんの作品「手花音」は、手をモチーフにして人間と自然の触れあい感と音楽用語カノンからくるリズム感や清楚・優しさを簡潔に表現して最後まで田中真さんと最優秀賞を競った。

優秀賞に入選した安藤義治さん、田中博士さんの作品はそれぞれ噴水、水、樹木、太陽をテーマにシンプルな配色でデザインをまとめ上げたデザイン力が評価
された。

同じく優秀賞に選ばれた高柳弘之さんはロンドンからの出品であり、温度に反応して色彩が時間とともに変化して行く提案はそのユニークさで注目を集めたが、蛍光塗料を使用しているなど実現性と環境の面から難があった。

久保田毅楽さんの作品は、賛否両論のある中、自然界の森羅万象をテーマに、赤色の塔の中に人間、動物。植物等まさに森羅万象を表現する発想と力強いグラフィック技術が高い点を集めた。

今回のコンテストの特徴は、個性豊かな作品それぞれに自然の叡智という本博覧会基本テーマをしっかりとふまえていただいたことである。
その中で最終選考まで残る作品は、いずれも明確なテーマ、コンセプトと同時に簡潔にテーマを表現するデザインを併せ持った作品である。
最優秀案は、CGによる巧みなデザインであり、現実の巨大な給水塔のペインティングでどれだけデザインを再現できるかという課題も残されているが、博覧会の会期中は給水塔の近くに最優秀案、優秀案のパネルを展示して、参加していただいた方の労をねぎらいたいと思う。

最後にお忙しい中、愛・地球博の為にデザインを応募していただいた全ての方々に感謝申し上げます。