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2005年日本国際博覧会(愛知万博)の基本的枠組み

Ⅰ 基本的考え方

愛知万博は、21世紀の人類が直面する課題の解決の方向性と人類の生き方を発信するため、国際博覧会に関する条約に基づく登録を受けて開催されるものであり、多数の国々の参加のもと、地球時代の新たな国際貢献として日本が主導的役割を果たすことにより、自然の叡智をテーマとした新しい文化・文明の創造をめざすものである。

開催期間の前後を通じて地球規模での市民参加を得、人類と自然の関係に関する意識の大きな転換点となることにより、子どもから高齢者まであらゆる国の人々が生きる喜びや将来の夢を語り合うきっかけとなり、またこの地域に愛知万博の理念が受け継がれ、新たな付加価値を生み出す世界的な産業技術の中枢圏域が形成される契機となる、未来への希望に満ちた博覧会となることをめざす。

会場構想では、両地区の特質を生かした会場づくりをすすめるとともに、環境負荷の抑制をはかる。また、来場者の視点に立ち、安全性・利便性・快適性の確保、バリアフリー化をはかり、会場への多様なアクセスルートの確保に努めるものとする。

2005年日本国際博覧会(愛知万博)の主なBIE登録事項

1.名称 2005年日本国際博覧会

2.テーマ 自然の叡智

3.サブテーマ

  1. 宇宙、生命と情報
  2. 人生の“わざ”と智恵
  3. 循環型社会

4. 開催期間 2005年3月25日~9月25日

5. 会場 愛知県瀬戸市、長久手町、豊田市の約173ha
(海上の森、青少年公園、科学技術交流センター予定地)

Ⅱ 時代背景

21世紀初頭の国際博覧会として、次のような新たな時代性と課題を十分認識して開催する。

1. 地球環境問題、資源問題等の深刻化

地球温暖化などの地球環境問題、資源制約や水・食糧問題などが深刻化する中、世界各国が地球的な視野で、その解決のための知恵を持ち寄る必要がある。

2. IT時代の本格化

インターネットをはじめとするIT(情報技術)が急速に発展する中、社会構造・産業構造や社会生活の新たなあり方の提案が要請されている。

3. 視野の飛躍的拡大

ボーダレス社会、過去から未来、遺伝子から宇宙までの果てしない視野の広がりが日常化している中、広い視野からの取り組みが求められている。

4. 価値観の多様化

人々の価値観が多様化する中、人類の共通課題の解決に向けて、また興味関心事の違いを前提として、如何に多様性を生かしたアプローチが可能かを追求する必要がある。

5. 市民参加、NPOの大きな潮流

社会を構成する要素としての市民やNPOの役割が増大する中、新たな市民参加のあり方、さらには地球市民としての連帯のあり方が要請されている。

6. 高齢社会への突入期

高齢社会が本格的に始まる中、福祉・介護の面のみならず、生きがいをもって長寿を楽しむ社会意識の醸成、社会システムの追求が必要である。

Ⅲ 開催目的

時代背景と日本の現状をふまえ、愛知万博の主な目的を以下のとおり認識して開催する。

1. 壮大な文化・文明創造事業

環境問題等が地球規模で深刻化し、人・モノ・情報の交流が地球規模で活性化する現在、独特の風土と特性に基づき培われた世界各地の文化・文明は、その多様性をアイデンティティとして継承しながらも、一方では地球規模での新たなアプローチが求められている。

愛知万博ではその一回性のゆえに、あらゆる事象、あらゆる分野において果敢に新たな挑戦と実験に取り組み、時代の先端的な社会モデルとなる文化・文明の創造と提案を行うことを目的とする。

2. 日本から世界への発信

日本は戦後、平和主義に徹し、産業技術に力を入れ、驚異的な経済発展を遂げ、豊かな社会になった。IT・ロボット・マイクロマシン・バイオテクノロジー・ナノテクノロジーなど高度な技術力は、今や世界の産業発展に貢献しつつあるが、同時に人類が直面する地球環境問題・資源問題などの解決にも大いに貢献することが期待されている。

愛知万博では世界に対して21世紀の人類が直面する問題の解決の方向と人類の生き方について発信し、国際社会における日本の存在価値を高めることをめざす。

3. 現在から未来への発信

もはや大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済発展が望めなくなりつつある現在、過去の成功体験の強い日本人は自信を失いつつある。しかしながら、今後、循環型社会を構築し、自然と共存するしくみができれば、新たな発展、真に豊かな生活を期待することができる。

愛知万博では日本でも有数なものづくりの中心地であるこの中部地域の底力を発揮して積極的に未来に対する発信を行い、日本人の自信と夢を回復し、今日の日本が置かれている閉塞状況を打破することをめざす。

Ⅳ テーマ「自然の叡智」及びサブテーマ

21世紀においては、自然の一部である人類が「人類の叡智」が及ばない「自然の叡智」を謙虚に再認識することが大前提となる。今や自然の摂理、地球環境の許容量を超えようとしている人類文明は、自然からの様々な厳しい警告を受けている。人類と自然・地球が存続可能な発展の方向へと転換し、素晴らしい未来社会を築いていくことがすべての国にとって必須の条件となっている。そのために、IT革命を含め、これまでに人類が獲得してきた経験と知識と知恵のすべてを傾けて、「自然の叡智」(自然のすばらしいしくみ)に学んで創る素晴らしい21世紀社会のモデルを愛知万博で実現する。

テーマ「自然の叡智」は3つのサブテーマにより展開する。

第一サブテーマ

「宇宙、生命と情報」においては、最先端の科学により、自然を探求するとともに、地球温暖化・エネルギー・環境・水・食糧などの地球的問題を解決する指針を示す。

第二サブテーマ

「人生の“わざ”と智恵」においては、今までも自然の中から工芸・芸術・文化を生みだしてきたように、自然の中から喜び、楽しみ、生き甲斐の世界を創造し、21世紀の人々が生き生き暮らしていく方向性を提示する。

第三サブテーマ

「循環型社会」においては、新エネルギーの導入、3R(リデュース・リユース・リサイクル)等を実行することによって循環型社会の構築を試みる。

Ⅴ 事業の基本方針

1. 事業の基本諸元

① 入場者数は1500万人を確実なものとし、更にそれ以上の入場者の確保に努力する。

② 予算については、採算性を必須条件とする。会場建設費1350億円については、当初予算を出来得る限り抑制し、追加的な費用を吸収する。運営費550億円については、資金計画を再度見直し、効率的な執行に努める一方、出来得る限り収入を増加する方向で運営する。

③ 営業時間は、午前9時から午後10時を原則とする。

2. 事業展開の基本的考え方

万博事業の展開にあたっては次の各点に重点をおく。

(1) 事業企画の重点

① 生命、宇宙など未知の自然へのアプローチ
生命科学、宇宙科学、ナノテクノロジーなど、自然科学の最先端技術を提示することにより、自然の叡智(自然のすばらしいしくみ)に触れ、その偉大さを体感し、自然と共存することの重要性を深く再認識する。

ex.各民族の宇宙観、宇宙開発の最前線、宇宙生活の仮想体験、宇宙食食堂、ミクロコスモスからマクロコスモスへの壮大な旅、自然と生命の神秘、生命科学、生命起源の謎、最新医療技術、医療技術の倫理、子供の科学する心、バイオコンピューター、食糧生産システムの最前線

② ITの徹底した実用化と新たな実験
会場運営、展示・催事、交通アクセスの円滑化など様々な分野で、インターネット、携帯端末技術、映像情報技術をはじめとした情報関連技術の徹底した実用化を図り、また最先端技術の実験を行う。

ex.来場者の携帯端末による交通アクセス選択・入場予約・人ナビゲーション・問い合わせ・クレーム・評価、インターネットによる会場へのアプローチ、会場映像の発信、バーチャルパビリオン、宇宙や世界の映像をリアルタイムで写す野外スクリーン・ITの最前線

③ 自然と共にある暮らしの喜び
自然の一部であるという人間の原点に立ち、衣食住、文化、生活環境等様々な面において、豊かで幸せな自然との調和を提唱する。

ex.自然に調和した衣食住、自然とのかかわりが生んだ工芸・芸能・芸術、宗教、自然と共存した都市建設のモデル、自然を体感するインタープリテーション、自然や生命が作り出すアート、環境共生住宅

④ 楽しく魅力的な高齢社会のモデル
高齢社会が現実のものとなる21世紀において、高齢者が楽しく生き甲斐をもって生活できる社会のモデルを、諸外国の経験も踏まえ、ハード・ソフト両面から追求する。
長い人生経験で培った生活の知恵が後世へ受け継がれていくような世代間交流の場も設置する。

ex.待ち時間と歩行距離の短縮、便利で快適な休憩場所・バリアフリー、歴史・宗教・住宅・医療などのエデュテイメント(楽しみながらの学習)、88か所ミニュチェア寺めぐり、世界の食文化、高齢者ファッション、高齢者元気コンテスト、万博金婚式・銀婚式、万博同窓会、高齢者の知恵と若者の感性による共同芸術

⑤ アジアの国々を可能な限り包含した世界各国の文化・文明の対話
地球温暖化など地球規模での問題の発生は、世界の人々に地球は一つという意識を益々強く抱かせるに至っている。国際博覧会の最大の特長である世界中の様々な国民・民族・文化の集結・交流の必要性は益々高まっている。愛知万博は、互いの文化の違いを認め合いつつ、地球規模の環境を意識し、人類の叡智を結集して未来に備えるまたとないチャンスである。アジアの参加を積極的に促進し、できるだけ多くの国々・国際機関の参加を求め、文化・文明の交流をはかる。

ex.各国の伝統芸能・まつり・ストリートパフォーマンス・食文化・住まい方・世界各国のNPOの交流、アート、宗教、ファッション、先端技術、手の技、世界大道芸人コンテスト、仮想エコツーリズム

⑥ 環境負荷の低い社会、循環型社会のモデル
地球環境問題に対応して、3R(リデュース・リユース・リサイクル)システム、会場におけるゼロエミッションを目指した取り組み、新エネルギーシステムの最先端を示す。

ex.太陽電池・燃料電池・風力発電・バイオマス等の新エネルギー活用、環境未来型住宅・リサイクル技術・環境保全・再生技術などの最前線、CO2固定化・利用技術、会場のゼロエミッション、環境モニタリングシステム、地球市民手帳の発行、EXPOルール、地球環境レポート、環境産業技術の最前線

(2) 事業実施の重点

① 多様な形態による市民参加
かけがえのない地球を未来に引き継ぐためには、今地球に生きる市民一人ひとりが自ら地球市民としての自覚を持ち、広く連帯し、考え、行動していくことが必要である。
また、21世紀の社会活動における新たな主役となりつつある市民・NPOに対して、博覧会の計画策定に関する意見提案、会場運営への協力、展示・催事の企画運営等への参加を促し、また、様々な活動成果の情報発信の場を提供する。

② 中部地域の発展と技術力の活用
中部地域は日本のものづくりの中心地として発展してきたが、その高い技術力は今後、宇宙・生命・情報・資源・エネルギー・環境問題などのあらゆる分野でまた新しい生活文化においても、世界に大きく貢献することが予想される。
万博での果敢なパフォーマンスを通じて、中部地域が世界への発信力を強め、世界的な交流を深め、産業面ばかりではなく、文化面においても発展する契機となるよう、中部地域の潜在的な力を十分に発揮させる。

③ 広域連携のネットワークの構築
万博の開催前の各方面の様々なプレイベントを推奨し、または開催中においては開催会場以外の地域においても自治体・企業・市民団体等、幅広い広域連携のネットワークをつくり、これらを総合して来場者の満足度と万博による活性化効果を最大にする。

④ 楽しさ、おもしろさの演出
展示・催事は多くの場合教育性・文化性を柱とするが、実際に経験することの価値の高まりを踏まえ、非日常性、まつり性による盛り上げ、もてなし・おもしろさ、楽しさの経験などの魅力づくりをする。そのためには、展示・催事のみならず、営業活動についても高い洗練性や魅力を備えたものとする。
また、昼間とは趣を異にした夜間開催時の楽しみと魅力の仕掛けを創造する。

Ⅵ 会場づくりの方針

(1) 会場の位置づけ

① 海上地区は愛知万博の原点として、国、県により整備される恒久施設も活用し、国内外の市民・NPO活動や瀬戸の焼き物などを活用した人と自然が交流する会場とする。

② 青少年公園地区は主要施設を収容する賑わいのある会場とする。

(2) 会場づくりの考え方

① 愛知万博会場の自然豊かな特色を生かし、会場全体をオープンな展示場とみなし、自然との調和をはかるとともに、高齢者や障害者をはじめとして多様な来場者が不便を感じることなく楽しめるよう、魅力的に設計・建設・運営する。

② 自然環境に配慮しつつ、必要かつ十分な展示・催事、その他施設のための面積を確保するため最大限の努力をする。

③ 自然の保護のみならず、積極的に自然創造(ニュー・ネイチャー)への取り組みをはかる。

④ 安全・快適で楽しい会場内動線と多彩な会場内移動システムの実現をはかる。

⑤ リスクマネージメント(テロ・災害等)のため、会場のゆとり、位置方向の明確性、視界の広さと情報提供などに細心の注意をはらう。

⑥ 万博のグローバル性・国際性にかんがみ、ホストである政府館、テーマ館、メインホールとゲストである外国館との調和や、外国来場者へ特段の配慮をはらう。

⑦ 展示場、催事場などの一過性の施設は、可能な限り短工期、低コストとするとともに、撤去とリサイクル容易性を確保する。

⑧ 愛知万博の会場の印象をより鮮明にし、かつ2005年の開催の精神を語り継ぐため、永久記念碑となるシンボルを建設する。

(3) ソフト面の重視

① 一つの主役一つの目玉で大勢を一挙に集めることを過度に狙わず、各々の展示場、催事場が固有のテーマ、コンセプト、ターゲットを明確にすることにより、多様な来場者の多様なデスティネーションプレイス(目的地)をめざす。

② 集客力の魅力の重点は、展示、催事のソフトに重点をおき、全体との調和とバランスを重視する。

③ 会場におけるゼロエミッションを目指し、省エネルギー・新エネルギー設備の導入、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の徹底をはかる。

④ 展示・催事は勿論、会場管理・サービスを含めてITの徹底活用をはかる。

(4) 会場へのアクセス

① 会場へのアクセスは出来得る限り多様なルートを準備し、各ルートのバランスのとれた利用体系を作る。

(5) 環境アセスメント

① 環境アセスメントについては、経済産業省要領に基づき対処する。