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堺屋太一最高顧問のレポートについて(第3回)

1 3月22日、浅野秀弥、宮本倫明、吉田望の三氏の顧問補佐を指名(事務手続きのため任命はずっと遅れて、発表の機会がありませんでした)。
以来、昼夜を分かたぬ猛作業を続けています。
この間に三名がそれぞれチームを作り、記録読会、現地視察、現況イメージ模型の観察、関係者からの教授、市民団体代表、元委員らとの懇談、一般市民の聞き取り調査、技術研究などを精力的に行っています。この結果、当初の予定を繰り上げ6月中にもコンセプトを完成し、ストーリーの粗筋を策定すべきだ、と考えるようになりました。

2 愛知万国博は、危機的な状況にあります。
その最大の理由は「誤ったコンセプト」が浸透していることです。
「誤ったコンセプト」とは次の4つです。

  • 万国博は公共事業(土木建設事業)である。従って場所と交通手段を造れば出展者と観客は来るはずである。
  • 万国博は、19世紀以来変わらず「技術と珍品の博覧会」である。従って、「月の石」のような珍品が客引きになる。
  • 万国博の人気競争力や観客安全性への配慮がない。
  • 万国博のグローバリズムが理解されていない。

の4点です。
これらの「誤ったコンセプト」を排除して頂くと、自然環境への貢献や国際的拡がりのある市民参加の重要性がお分かり頂けるでしょう。

3 コンセプトとは「概念」であり、キャッチフレーズやキーワードだけではありません。
例えば、

  • 万国博は(公共事業ではなく)地球的規模の文化行事である。
  • 愛知万国博は新文明を拓く行事である(テレビ時代からインターネット時代への転換)。
  • 現在の閉塞感を克服し、新時代へ突破する象徴となるべき事業である。
  • 自然環境の回復や循環型社会への前進を実現する行事である。

等々もコンセプトの基本となるものです。

4 コンセプトの重要なのは、言葉で終わらせず、広く関係者から一般市民にまで浸透させることです。このためには「誤ったコンセプト」を追放し、正しいコンセプトを注入する条件を作らねばなりません。報道機関のみなさんのご支援をお願いするところです。

5 ストーリーのほうは、文化事業の筋書きです。映画のシナリオや絵画の下書きと同じく「芸術」の分類であり、原則として途中で公開したり、部分宣伝をしたりできる性格ではありません。多方面の接触は必要です(映画のシナリオ書きが、ロケハンや技術問題を研究するのと同じです)が、そのすべてがストーリーに加わるわけではありません。この点もよろしくご理解頂きたく存じます。

2001年5月15日

堺屋太一