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堺屋太一最高顧問の米国からのレポートについて(第1回)

1 3月27日、アメリカに到着以来、万国博覧会関係の調査に邁進しております。

2 3月29日には、ワシントンで北島信一公使と面談。
北島公使はかつて経済局総務参事官として愛知万国博覧会の誘致に当たられた方で、当時からの経緯を詳しく知ることができました。今まで「経緯」については、大勢の方から何回もお聞きしていましたが、これまで語られていなかった部分もよく知ることができました。

3 ワシントンでは、米国政府とBIEとの関係は必ずしも円滑ではないと言われています。但し、ハノーバー博への不参加は、ハノーバー博のコンセプトが不明で、テーマ、演出、会場の何れにも特別の魅力が無かったためとされています。
米国では、米国の経済人や芸術家から参加意欲の湧き上がるようなものであって欲しい、との見解が多く述べられています。

4 3月31日、ニューヨークでパイン博士と会見。
パイン博士は「経験経済学」の共著者で、米国における新しいサービス産業の研究家であり、私の著作をしばしば引用しておられるニューパラダイム派エコノミストです。
同博士の説では、新サービス業として成功するには、
  ①驚き ②非日常 ③耽美 ④文化教育
の四要素が必要との指摘がありました。確かに全米各地の新産業は凄まじいばかりの驚きと非日常性を競っている観があります。
テーマレストラン、ディズニーゲームセンターなど博覧会にも参考になるものが多いので、日本の関係者にも勉強して貰いたいと思っています。

5 4月1日、テネシー州ナッシュビルからチャタヌーガに旅行。
同州は1982年に「環境国際博」を開催しています。チャタヌーガは三年前に「全米で最も住みよい町」に選ばれた環境改善都市で、街の中心部を巡回する木製電気バスが有名です。車体がベニヤ板というのは聞いていましたが、運転手さんの教育に力を注いでいるのには感心しました。
駅舎と寝台車を改良したホテル(チャタヌーガ・チューチュー)など町を挙げての呼び物が沢山あります。

6 4月3日、マイアミ。
大観光地だけに集客産業は発達しています。十万トン級のクルーザーなど、いわば「万国博のライバル」が一杯で、いくつか参考になりました。

7 日本での報道に、私が「市民参加に消極的」といった主旨の記事があるのに驚いています。私は顧問就任を望まれた時に、市民代表の方々のお話を伺い、私との間に全く意見の違いのないことを確認した上で引き受けることにしたほどで、市民参加こそ重要と思っています。また日本万国博(大阪)では、約三千の団体が参加してくれました。特に私がプロデュースしたセビリア万国博日本出展でも(政府出展としては異例に)沢山の市民代表の参加を呼び掛け、大勢の方がセビリアまで来られました。

また、目下開催中の「インターネット博覧会」では、NPO等市民団体や個人の方に多数参加していただいており、成功の要素の一つとなっています。私が関与した行事は、すべて他よりも市民参加を重視しています。

市民参加のためには、組織・技術・経済の実現性が不可欠であり、参加のための国際的全国的組織化、実現可能な技術性、実行の経済的基盤を早急に具体化すべきだと考えています。

上記の様な私の実績と思想をご理解頂きたく存じます。

2001年4月4日

堺屋太一