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「2005年日本国際博覧会」(愛・地球博)日立グループ館にて燃料電池、iVDR mini、ミューチップリーダを搭載した情報表示端末を実用化

2004年11月11日

2004-209

株式会社日立製作所(執行役社長:庄山悦彦/以下、日立)は、このたび、「2005年日本国際博覧会」(愛・地球博)に出展する日立グループ館において使用する情報表示端末「Nature Viewer」を開発しました。今回開発した「Nature Viewer」には、ユビキタス情報社会の一端を担っていく技術であるモバイル機器向け燃料電池、iVDR(*1)mini、ミューチップリーダを基幹部品として搭載しています。「Nature Viewer」は、携帯型の情報表示端末で、情報を表示する3.5インチの液晶ディスプレイと、2つの選択ボタンがついています。来場者は、日立グループ館のプレショーにおいて、世界最小クラスの非接触ICチップであるミューチップを内蔵した展示物へ「Nature Viewer」かざすことによって、液晶ディスプレイに表示される希少動物に関する映像コンテンツ(動画/静止画)を鑑賞することができます。
日立グループ館では、このようなITを活用したサービスの提供を通じて、情報をいつでも、どこでも、誰でも活用できるユビキタス情報社会の可能性を体感することができます。
近年、燃料電池、小型ハードディスクドライブ(以下、HDD)、ICタグの分野ではそれぞれ急速に市場が拡大しており、今後も更なる成長が見込まれています。日立グループでは、今後も、各々の分野において積極的に技術開発を進めていきます。

「Nature Viewer」の特徴

  1. 携帯型の情報表示端末で、3.5インチの液晶ディスプレイと、動画/静止画の画面送り/戻りを操作する「A」と「B」の2つの選択ボタンがついています。来場者がミューチップを内蔵した展示物へかざすと、「Nature Viewer」に搭載されたミューチップリーダが読み取った固有のIDに対応する情報が液晶ディスプレイ上に表示され、希少動物に関する映像コンテンツを鑑賞することができます。
  2. 日立グループの3つの技術(モバイル機器向け燃料電池、iVDR mini、ミューチップリーダ)を結集し、実用化しました。CPUには株式会社ルネサス テクノロジ(会長&CEO:長澤紘一)製の「SH-Mobile(*2)」を採用しています。
  3. 燃料電池とリチウムイオン電池のハイブリッド方式とすることにより、13時間連続稼動が可能です。

モバイル機器向け燃料電池の特徴

  1. 発電の際に炭酸ガスと水蒸気(水)しか排出しない、環境にやさしい直接メタノール形燃料電池(*3)を採用しています。
  2. ナノテクノロジーを活用し、メタノールを透過しにくい電解質膜(*4)、室温でメタノールから効率良く電気エネルギーを取り出すための高活性電極触媒(*5)を開発しました。さらに、これらを組み合わせて高性能な膜/電極接合体(*6)を製造する技術を開発しました。
  3. ディスポライター(*7)のトップメーカーである株式会社東海(代表取締役社長:本門俊一)と共同でモバイル機器向け直接メタノール形燃料電池用の燃料カートリッジを開発し、カートリッジの量産化に向けて、実用化設計の推進に取り組んでいます。

iVDR miniの特徴

  1. iVDRコンソーシアム(*8)が定めた規格に則った、プラスチックケースに収納した小型で軽量な可搬型HDDであり、製造は日立グローバルストレージテクノロジーズ(CEO:成瀬淳)が行っています。20ギガバイト(ギガは10億)の記憶容量をもち、高速なランダムアクセスが可能です。
  2. インタフェース(信号送受部)はシリアルATA(*9)に準拠しており、 最大毎秒1.5ギガビットの高速データ転送が可能です。

ミューチップリーダの特徴

  1. リーダモジュールは八木アンテナ株式会社(取締役社長:鈴鹿和男)が開発しました。従来のミューチップリーダ回路の一部を集積したLSIを採用し、大幅な小型化を実現しました。さらに、基板一枚で構成される薄型アンテナと貼り合わせ、一体化することで端末への組み込みを容易にしています。

用語説明

(*1)iVDR:
Information Versatile Disk for Removable usageの略。ハードディスクドライブの持つ小型、大容量、高速アクセス性能を活かし、AV機器において利用される映像コンテンツ等、あらゆるデータを取り扱うデータプラットフォームとして中心的役割を果たします。情報家電機器、ホームサーバ、ビデオレコーダ、車載機器などのAV機器からPCまで、幅広い分野で映像、音楽、プログラム等の多様なデータ共有を実現し、新しい標準メディアとして注目されています。

(*2)SH-Mobile(SuperHTM Mobile Application Processor):
携帯電話システム向けに、ベースバンドLSIと接続して、音声や動画などのマルチメディア・アプリケーションを専用に処理する株式会社ルネサステクノロジ独自のプロセッサです。

(*3)直接メタノール形燃料電池:
メタノール水溶液を燃料とした高分子電解質膜を利用した燃料電池で、メタノール水溶液と空気を直接電極に供給することで発電します。携帯情報端末やモバイルPCなどのユビキタス電源として期待されており、駆動の際に炭酸ガスと水蒸気(水)しか排出しないため、環境にも優しい燃料電池です。なお、燃料電池の開発にあたっては独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の「携帯用燃料電池技術開発補助事業」の成果を利用しています。

(*4)電解質膜:
燃料電池開発のコアとなる材料です。燃料極と空気極を隔てている膜のことで、高分子で成り立っています。メタノール水溶液を直接燃料とする直接メタノール形燃料電池では、燃料極側で生成する水素イオンのみを透過し、メタノールは透過させない性質が要求されます。

(*5)高活性電極触媒:
燃料電池の作動温度としては比較的低温である室温でも、燃料極でメタノール燃料から水素イオンを生成させる反応を、少量で効率よく起こさせることができる触媒です。触媒として用いる貴金属の量を減らせるので、低コスト化が可能です。

(*6)膜/電極接合体:
高分子電解質膜をはさんで両側に触媒を含む電極層を形成した、燃料電池の特性を支配する基本構造となる部材です。

(*7)ディスポライター:
ディスポとは「Disposable=使い捨て」の略で、「使い捨てライター」のことです。

(*8)iVDRコンソーシアム:
2002年3月5日に設立された、iVDRの規格策定作業と、その普及を行う標準化団体です。2004年9月29日 現在、国内外57社が参加しています。

(*9)ATA:
ANSI(アメリカ規格協会)で制定されているHDDのインタフェース規格の一つで「AT Attachment」の略です。シリアルはその信号送受を直列に行う方式です。

以上