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エコロジーレポート

参加と体験通じ環境考える 

NPO、NGOが地球的課題に挑戦

愛・地球博は万博史上で初めて市民参加を重視しています。これまで、企業や行政では対応しきれない社会的な課題については、ボランティア活動など市民の力が柔軟にカバーしてきましたが、21世紀の地球的課題の解決には、そのような市民の力がますます重要になると期待されているからです。

市民参加の中心となっているのは、一般にはNPOと呼ばれる民間非営利団体やNGO(非政府組織)ですが、市民の参加と体験を促すことによって、長久手会場「地球市民村」、瀬戸会場「市民パビリオン・海上広場」では、これまでの万博とは一味違った成果をあげています。

  • NPOとは…Non-Profit Organizationの略。「民間非営利団体」。
    社会的な問題に取り組む非営利の民間団体。
  • NGOとは…Non-Governmental Organization の略。「非政府組織」。
    環境、平和などの国際的な課題に取り組む非営利の組織。
    ※日本では国際的な団体をNGO、主に国内で活動する団体をNPOと区分する場合もあります。

持続可能な社会実現に向け30組出展

地球市民村の画像

竹のパビリオンが並ぶ地球市民村

長久手会場の「地球市民村」は、博覧会協会の市民参加事業の中核として企画されました。竹でできたパビリオンが並ぶ「体験と交流のゾーン」と、映像シアターや協賛企業の展示ブースなどがある「出会いのゾーン」で構成されています。周りは茶畑や竹林に囲まれ、アジアの田舎を思わせるような温かみのある風景の中にあります。

地球市民村では、5つのパビリオンに公募で集まったNPOやNGOが月替わりで出展し、展示や体験型ワークショップを展開しています。

出展団体は「持続可能性への学び」をコンセプトに2003年に募集。国内ホスト団体と海外パートナー団体の組み合わせで出展することが条件で、最終的に決定した30組のうち、約半数が環境問題に取り組む団体です。その他は、国際協力、文化、平和、福祉など広い意味で「持続可能な社会」の実現を目指しています。

地球市民村事務局では、単なる展示やアトラクションにとどまらず、来場者が参加・体験を通じて楽しく学べるようなプログラムを用意することを出展の基本としました。また、出展者は事前の会議や研修を通じ、運営技術やコミュニケーション能力に磨きをかけました。

自主的交流で新たな発見や感動

来場者とメッセージの画像

来場者のメッセージを撮影しインターネットで公開(エコプラス)

環境をテーマにした出展内容は、森の素材を使ったものづくり体験(どんぐりの会)、トイレを題材に世界の水問題を紹介(日本トイレ協会)、粘土のイルカ作り(国際イルカ・クジラ教育リサーチセンター)など、実にさまざまです。

環境教育プロジェクトを推進しているECOPLUS(エコプラス)は、パビリオンにパソコンを配置して、世界各地で環境活動に取り組んでいる子どもたちと来場者の間で「未来への環境メッセージ」を交換しました。またアラスカとインドの少数民族を招き、その暮らしや文化を通じて、自然と調和する知恵を学びました。

地球市民村の出展者らは、お互いの活動内容を学び合う自主的交流により、新たな発見や感動があったといいます。エコプラスでは、出展期間が終わったあとも月に1、2回地球市民村を訪れ、その月の出展者や海外からのゲストにインタビューし、団体のホームページに掲載するなど、出展を機に活動の幅を広げています。

ハイテク駆使とは一味違う感動

地球市民村は、企業パビリオン、外国館から離れているため、当初は地球市民村を訪れる来場者数は伸び悩みました。しかし、万博報道や口コミにより人気が高まり、来場者にリピーターが多いのも特徴です。

小中学校の校外学習の場としても活用され、「自分もエコライフに気をつけようと思った」「NPOスタッフの熱意に感動した」といった感想が、児童・生徒たちから寄せられています。一般の来場者からも「参加や体験ができて面白い」「人とのコミュニケーションが魅力」との声があがっています。ハイテク装置を駆使して楽しませる人気パビリオンとは、一味違った感動を味わいながら、環境問題について学ぶ場になっています。

8月8日には地球市民村の出展団体が中心になって、「ピースリング」という平和を願うイベントを実現させました。7月にロンドンでテロが起きたことから、出展者同士が協力し合って他のパビリオンスタッフや来場者に呼びかけ、3500人の協力を得てグローバル・ループに光の輪をつくりました。地球市民村でのNPOやNGO間の交流が大きな力となり、新しい活動へ発展しました。

来場者と地球市民村出展団体スタッフの画像

ピースリングへの参加を来場者に呼びかける地球市民村出展団体のスタッフ

「地球の愛しかた」でさまざまな催し

トークイベントの画像

↑ストップ・ザ・温暖化キャンペーン実行委員会のプロジェクト「みんなつながっているんだよ」。環境団体「ネットワーク地球村」代表の高木善之さんによるトークイベントなどが行われ、一人ひとりができる温暖化対策について訴えました

菜の花プロジェクトの画像

対話ギャラリーに出展した「菜の花プロジェクト」

瀬戸会場の「市民パビリオン」と「海上広場」では、“あなたの「地球の愛しかた」見つけてください”をコンセプトに、日本全国から、また世界からも市民参加のプロジェクトが集結し、毎日入れ替わりでイベントを開催しています。

市民パビリオンには収容人数400人の「対話劇場」と、展示スペース「対話ギャラリー」が、また、海上広場にはワークショップのスペースや野外劇場があり、多様なスタイルの催しが可能です。

期間中に行なわれる235の市民プロジェクトはすべて、公募で集まった個人やNPOやNGOが企画しました。テーマは平和、環境、福祉、アート、生涯学習、伝統、まちづくり、ものづくり、健康、チャレンジの10種類です。地域の個人を対象にしたプロジェクトの1次募集には360人の応募がありました。

2次募集は範囲を海外にまで広げ、組織や団体も対象としました。最終的に235に絞り込み、愛・地球博のイベントとしてふさわしいものに練り上げていきました。その結果、環境問題の専門家を招いてのトークイベント、環境にやさしい素材を使ったものづくり体験、平和への祈りを込めたコンサート、環境破壊の実態を訴えるパネル展示など多彩な催しが、半年の会期を通して毎日繰り広げられています。

来場者からは「地球のことを考える時間を増やします」「自分にできることを確認し、周りの人と協力して環境問題に立ち向かいます」などの声も寄せられています。そして、9月8日に市民パビリオンの入場者は100万人に達しました。

市民プロジェクトの活動の中には、万博を機により大きな広がりをみせるケースもあります。「菜の花プロジェクト」は、地域で菜の花を育てて菜種油を絞り、油かすや使用済みの油をリサイクルする活動を進めています。3月25日から7月3日まで対話ギャラリーでパネル展示などを行い、その活動を紹介しましたが、これがきっかけで愛知県との協働で新たな取り組みが始まりました。現在、セミナーの開催、ハンドブックの作成などが進められています。

柔軟に新しい時代の芽を先取り

地球市民村事務局は「企業は利益を追求する、行政には公平性を保つという使命があります。NPOやNGOはそうした制約を離れて、柔軟に活動を進めることができます。そのため、まだ小さくても新しい時代の芽となるような課題を先取りして取り組むことができます」と強調します。

さらに「持続可能な社会を実現するには、行政や企業だけでなく、市民一人ひとりが当事者となって取り組まなければなりません。行政や企業とパートナーシップを組んで市民が力を発揮するために、NPOやNGOの存在は欠かせません」と話します。

また、市民プロジェクト事務局は「地球温暖化、民族対立など、世界が直面している課題は、もはやひとつの視点、ひとつの価値観による方策では解決できません。地球上には無数の価値観がある、つまり世界の中心はひとつではない。お互いが中心であることを認め合いながら交流することができるのが、市民です」と市民参加の意義・重要性を説明します。

異分野で活動する団体との新鮮な交流

シンポジウムの画像

9月10日に行われたシンポジウム「地球市民村から生まれた『持続可能性への学び』」

日本では阪神・淡路大震災を契機に、組織的に活動できる民間非営利団体の法人化の必要が叫ばれ、平成10年に「特定非営利活動促進法」(NPO法)が施行されました。これは、ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動に、比較的簡単な手続きで法人格を得られるように法律面から配慮したものです。

NPOやNGOの活動は重要性がますます高まっています。地球市民村や市民プロジェクトに参加したNPOやNGOからは「異分野で活動する団体とは知り合う機会が少ないので、共感したり、お互いに協力しあえる部分を見つけたり、新鮮な体験でした」(環境教育を推進しているエコプラス)と万博の市民参加を評価しています。

地球市民村では9月3日から3回にわたって、総まとめシンポジウムを開きました。9月10日は「持続可能性への学び」と題して出展者らが出席。「不特定多数の人に関心を持ってもらうプレゼンテーション方法を学べた」「地球市民村をモデルとして、今後も同様のイベントができるよう、成果をまとめて発表するべき」といった意見が出されました。

愛・地球博の市民参加事業をきっかけとして、持続可能な社会実現に向けたNPOやNGO、市民の取り組みが、ますます充実し、広がっていくことが期待されます。