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エコロジーレポート

交通環境を改善するITS 情報の一元管理で渋滞回避

すでに1500万人が訪れた愛・地球博。1日20万人以上の来場も記録しており、来場者への的確な交通情報提供は、無用な渋滞、混乱を事前に回避するために欠かせません。21世紀の交通システム革命の主役として期待されている高度道路交通システム(ITS)は、最先端の情報通信技術を使い、さまざまな交通情報の収集、提供を行なうことで、道路交通環境改善に貢献しようとしています。21世紀初の万博とITSとの関係を考えてみました。

愛・地球博会場内ITSセンター

愛・地球博会場内ITSセンター

・メモ
ITS=Intelligent Transport Systemの頭文字をとったもので、「高度道路交通システム」と訳されています。渋滞緩和や交通事故削減に貢献するため、ITS推進は国家戦略として位置づけられています。

最新情報を来場者に即時提供

長久手会場にある万博の管理運営拠点・西管理棟にある「ITSセンター」の壁一面のスクリーンには、万博に関係するあらゆる交通情報が集約されています。会場までの公共交通機関である鉄道、駅シャトルバスの運行状況、マイカー来場者用の駐車場利用状況、駐車場シャトルバス運行状況だけでなく、周辺道路状況、鉄道運行状況がほぼリアルタイムで入ってきます。

これらの最新交通情報は、パソコンや携帯電話から即座に入手できるほか、会場内外の情報表示装置、カーナビゲーション、FMラジオにも交通情報が提供されています。また、会場内にはマイカー駐車場を設けず、会場周辺など6カ所の駐車場からシャトルバスで会場を結ぶ大規模なパーク&ライド方式を採用しているため、主要道路20カ所にある駐車場案内表示板には、駐車場が満車状態なのか空車ありの状況なのかという最新の満空情報が表示されます。

ITSセンターであらゆる交通情報を集約し、即座にインターネットや情報表示装置などに送り込む

ITSセンターであらゆる交通情報を集約し、即座にインターネットや情報表示装置などに送り込む

携帯電話で自分のプラン持ち運び

駐車場の満空情報を伝える看板

駐車場の満空情報を伝える看板

国土交通省の調べでは、万博開催地の愛知県は自家用車を使って移動する割合が73%。東京都の20%、大阪の36%と比べて極端に高く、来場客が利用する会場への移動手段にも自家用車が多く使われることが予想されました。そこで、できるだけ自家用車利用から公共交通機関利用へとシフトさせることが重要課題となっていました。同センターでは「当初予想ではマイカー利用など道路系を41%としていましたが、6月25日までの実績では39%に抑えることができています。的確な情報提供ができているからでしょう」と話しています。

また、システム構築では、最先端の通信技術が駆使され、博覧会協会公式ホームページには、センターで集約された最新交通情報が自動的に配信されています。博覧会協会が管理する駐車場の満空情報は、入庫・出庫車数の自動計測によるものです。

さらに、万博の事前プランニングから、帰宅までの移動を支援する「サポートナビ」というサービスが提供されています。お薦め往路、帰路を参考に自分のプランを決めるだけでなく、プランを登録すれば携帯電話で持ち歩くことができます。事前プランと実際の交通状況を比較することで、状況に応じたプラン変更が可能となり、無用な混乱を回避することができます。携帯電話のインターネット機能を使ったこうしたサービスは万博史上初めてです。

「サポートナビ」では来場の際、事前のプランニングから帰宅までの移動を支援

「サポートナビ」では来場の際、事前のプランニングから帰宅までの移動を支援

愛・地球博の交通輸送 これまでの実績(6月25日現在)

愛・地球博の交通輸送 これまでの実績(6月25日現在)

無視できない渋滞中の二酸化炭素排出

無駄な交通渋滞を回避すれば、環境改善に大きな貢献となります。下のグラフを見ても分かるように、環境省の調べでは地球温暖化の原因となる二酸化炭素総排出量の21%は輸送部門から。そして輸送部門の中心である自動車による排出量のうち11%が渋滞中に排出されています。さらに、交通渋滞による社会的損失も大きなものがあります。2002年度の年間損失は38.1億人時間(交通渋滞で損失をこうむった人の損失時間の集計)、金額換算すると約12兆円にもなるという試算もあります。

日本では、渋滞などの道路交通情報を自動車に搭載された端末にリアルタイムで送信する道路交通情報通信システム(VICS)が、東京圏で1996年にサービスを開始、2003年に全国展開が完了しています。近年ではカーナビゲーションの普及も加速化しています。こうしたことから、2000年ごろにITSは創生期を迎えたといわれています。

二酸化炭素排出量の部門別構成比(2002年度、環境省調べ)

二酸化炭素排出量の部門別構成比
(2002年度、環境省調べ)

無人自動運転は2010年を先取り

国土交通省道路局は「ITSは第2フェーズの2005年ごろから情報内容が拡充され、2010年ごろの第3フェーズになると本格的な夢の自動運転が実用化される」と予測しています。  その2010年を長久手会場で体験することができます。会場内移動手段の一つとして、最先端ITS技術を活用した「IMTS」(Intelligent Multimode Transit System)」がそれです。一見すると変わったデザインのバスのようですが、専用道に敷かれた磁気マーカーに沿って自動操舵をすることができる「非連結の隊列走行バスシステム」です。また、圧縮天然ガスを使用しており、有害物質の排出が少ない低公害型も特徴です。

IMTSは、物理的に連結していないため、輸送需要の変動に応じた運行が簡単にできます。また、専用道走行時は高速性・定時性が確保でき、一般道は有人運転するため、専用道・一般道の組み合わせが自在にできます。バスは、鉄道に比べ小回りがきき、レールや変電設備も不要となることから、経済性も含めて期待されています。

バス間の相互無線通信、地上信号装置などにより制御された3台が一緒に並んで3駅を無人自動運転しているほか、途中から枝分かれする部分は有人運転を行なうなど、実用化に向けた実証実験を繰り広げています。ITS関係者の視察だけでなく、一般来場者の乗車も多く、静かな人気を集めています。

愛・地球博会場で活躍するIMTS

愛・地球博会場で活躍するIMTS

万博にあわせて「ITS EXPO」

万博開催地の愛知県は、自動車関連産業が集結しており、ITSの先進地です。万博開催に合わせて「ITS EXPO」も開催されています。コア月間とされた7月には、長久手会場のロータリー館でITSに関する展示会があり、4日間で約8000人の来場者を集めました。また、展示会で紹介されたITS事例には、万博を舞台に実証実験が行われているものも少なくありません。未来の環境に優しい交通システムは、愛・地球博で知ることができます。

7月に行われたITS EXPO

7月に行われたITS EXPO

尾張瀬戸駅-会場間の駅シャトルバスで行われている「スマートプレート(電子ナンバープレート)」の実証実験

尾張瀬戸駅-会場間の駅シャトルバスで行われている「スマートプレート(電子ナンバープレート)」のデモンストレーション

●参考資料 愛・地球博で展開されているその他のITS

・バス停などに最新運行状況提供

尾張瀬戸駅-会場間の駅シャトルバスでは、「スマートプレート(電子ナンバープレート)」のデモンストレーションが行われています。ナンバープレートに取り付けられたICチップから、情報を無線でやりとりすることで、発車時間・所要時間や座席数、車いす対応といった情報を、バス停やインターネットで知ることができます。

・障害者や高齢者の歩行を手助け

長久手会場西エントランスでは、障害者や高齢者が安全に移動するための、携帯端末を利用した誘導・案内システム「障害者ITバリアフリープロジェクト」、瀬戸会場では、点字ブロックに埋め込んだ案内情報を、白いつえに取り付けた端末で読み取らせ、音声による案内をさせる「自律移動支援プロジェクト」が行われています。

・ICカードで駐車場の出入りが楽々

長久手会場の身障者専用駐車場では、ICクレジットカードで自動決済や入庫管理をするシステムの実証実験がされています。これは、高速道路のノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)を応用したもので、駐車場の発券や料金支払いの手間をなくすことで、スムーズな入出庫を可能とします。