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エコロジーレポート

世界の温度を2度下げよう 新しい打ち水 進化中

日本にまだエアコンが普及していなかった時代には、夏は庭や道路に水をまき、縁台で夕涼みという風景が、どこでも見られました。そして今、水をまく、すなわち打ち水という、極めてシンプルな行動が、見直され始めています。愛・地球博会場でも「打ち水大作戦」が展開され、来場者にも打ち水復活を呼びかけました。自治体も巻き込んで静かに、着実な広がりを見せている現代の打ち水事情を調べてみました。

打ち水をするマリ・クリスティーヌさん(写真中央)とジョン・ギャスライトさん(写真右)

打ち水をするマリ・クリスティーヌさん(写真中央)とジョン・ギャスライトさん(写真右)

愛・地球広場に集まった来場者も参加して、打ち水は大盛況

愛・地球広場に集まった来場者も参加して、打ち水は大盛況


2年前に始まり全国に広がる

打ち水をどこでも誰でもできる楽しいイベントとして提案

打ち水をどこでも誰でもできる楽しいイベントとして提案
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打ち水大作戦は「東京の気温を2度下げよう」を合言葉に、2003年8月25日に、東京で34万人(主催者調べ)が参加してスタート。水問題と取り組む環境団体を中心とした活動が、全国展開し始めています。

約1500人が参加した「打ち水大作戦2005in愛・地球博」は7月27日、合言葉も「世界の温度を2度下げよう」に進化して、愛・地球広場を中心に行われました。33度を超す地点もありましたが、平均で1.3度の気温低下を確認。事前調査で、人工芝はコンクリートやアスファルトのように、効果は大きくないことがわかっていましたが、それでも50度だった人工芝の温度は37度まで下がりました。

水道水は使わず2次利用水のみ

愛・地球広場に用意された下水再生水。木の桶で楽しさと風流をアピール

愛・地球広場に用意された下水再生水。木の桶で楽しさと風流をアピール

以前の打ち水と現代の打ち水との、最大の違いは、すでに使われ捨てられる水(二次利用水)のみを使用すること。水道水をそのまま使いません。愛・地球博での打ち水の際にも「風呂の残り湯など、使い終わってもう使わなくなった水を使ってください」と打ち水作法が伝授されました。生活排水が用意できない万博会場では、下水再生水3000リットルを使って、一般来場者や外国館アテンダントも加わり、打ち水を行いました。

・メモ
下水再生水=通常の下水処理に加え、さらに高度な滅菌・ろ過を施した水。飲むことはできませんが、水洗便所や道路散水などに有効活用できます。名古屋市では、打ち水大作戦用に無料で提供しています

深刻さ増す都市部の高温化

打ち水が新しい形で復活した背景には、深刻さを増す都市部のヒートアイランド現象があります。地表がコンクリート化されている都市は、熱が蓄積するうえ、エアコンやOA機器の普及に伴う排熱の増加、さらに産業活動、自動車の排熱も加わります。

こうした高温化は、データにも裏付けられています。20世紀に入り、地球温暖化の影響で世界の平均気温は、百年間で0.6度上昇しましたが、東京や名古屋などの日本の都市部では、それを上回る2~3度の上昇が確認されています。しかも、日本の都市部の高温化は、ここ20~30年で急速に進んでいます。気象庁の観測では、1980年に東京で168時間だった30度を超す時間帯が、2000年に357時間に、名古屋は227時間が434時間になっています。

また、最低気温が25度以上の熱帯夜日数は、最近10年間(1995年から2004年)の平均は東京が30.6日で、30年前(13.8日)の2倍以上に。こうした高温化が冷房需要増となり、悪循環に陥っているのが、現代の都市の現実です。

一方、「暑い。よし打ち水をやろう」というシンプルな運動は、身近な活動といえますが、個人レベルでは大きな効果は期待できません。しかし、「大作戦」としてイベント性を持たせることで、楽しくコミュニティーを広げながら一人ひとりが環境問題を考えるきっかけになります。

水の大切さ、環境問題に関心も

高度な科学技術に頼らず、活動に伴う新たな環境負荷が発生しない点が、「打ち水大作戦」が支持される大きなポイントです。その中には、水道水は一切使わず、生活の中で出た二次使用水を用いるということも含まれています。炊事や洗濯、風呂の残り水、ためた雨水での打ち水が、水の無駄遣い、水の環境問題に関心を持つことにつながります。

涼しさ計測で盛り上がり

万博会場での打ち水イベント後の8月8日、名古屋では各地で「名古屋打ち水大作戦」が展開されました。

名古屋市西区の押切商店街では、60人ほどが参加し、一斉に打ち水をすると、スタート時33.5度だった気温が32度まで下がりました。西区まちづくり推進室の兼松龍治さんは、「0.2度単位で表示できる温度計で、打ち水の最中に、徐々に気温が下がるのを確かめました。打ち水した場所から涼しくなるのがわかり、参加した皆さんも感心していました」と話します。

この日兼松さんらは、名古屋市の下水処理場から約200リットルの再生水を分けてもらいました。 「約20リットル入りの缶を10個会場に運び、水を使い切りました」と兼松さん。楽しそうに打ち水をする参加者を見て、「来年以降はもっとイベントの日数や規模を増大していきたいですね」とも続けました。

2004年、名古屋市内の広小路通りにて

2004年、名古屋でも打ち水大作戦が始まる

2005年8月8日西区押切商店街での打ち水大作戦

2004年、名古屋市内の広小路通りにて

2004年、名古屋でも打ち水大作戦が始まる

2005年8月8日>西区押切商店街での打ち水大作戦

活動組み合わせで大きな可能性

名古屋打ち水大作戦本部事務局(財団法人・河川環境管理財団内)の川瀬宏文さんも、「水を大切に、ということを伝えながら、単にイベントとしてだけでなく、日常的につなげていくことが大切です。個人での打ち水は小さな活動ですが、愛・地球博で行っている新しい都市緑化の試み(バイオ・ラング)や、夏場の屋外での人工霧の噴霧など、さまざまな環境活動と一緒に続けることで、大きな可能性になると思います」と抱負を語ります。

世界への浸透を視野に入れた活動へ

万博会場での打ち水に際し、名古屋打ち水大作戦本部が、打ち水に関する宣言をしています。宣言では「いちばん人の感覚に正直な地球温暖化対策が打ち水です。そして、その対策の成果を直接肌で感じられるアクションが打ち水です。日本古来の文化を今に伝える打ち水大作戦のムーブメントは、参加された人々を通じて広く世界に浸透していくことでしょう」としています。今や、打ち水は「UCHIMIZU」として、世界を視野に入れた活動へと進化し始めています。8月30日には、愛・地球広場で「打ち上げ打ち水」が開催されます。

●参考資料 打ち水に使う水について

二次利用水が生活排水である以上、衛生面から考えて、どの程度までが使用可能か?という点も考えてみましょう。

原則としては、人体に影響のない範囲で一度使用された水、あるいは現在の自然の環境の中で生まれた水であることが前提です。

入浴剤を入れた風呂の残り湯、米のとぎ汁など、またエアコンの室外機にたまった水はどうなのか……?

打ち水では、衛生面だけでなく周囲に不快感を与えない配慮も大切ですが、「打ち水大作戦本部」が想定しているものは下図の通りです。

●打ち水に使える水の例

【個人、一般家庭で行う場合】 お風呂、シャワーの残り水、エアコンの室外機から出る水、雨水、台所のすすぎの残り水、米のとぎ汁、二層式洗濯機のすすぎ水、雑巾がけのすすぎ水、子ども用のプールの残り水など
【商店街、地域、団体で行う場合】 個人、一般家庭で取り上げた例のほかに、製氷機の期限切れの水と氷、井戸水(飲料水でないもの)、銭湯など浴場施設の残り水、近隣の公共施設、幼稚園、保育園、学校、スポーツ施設などのプールの水、池や噴水などの水、川や池の水など

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