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エコロジーレポート

注目される地球にやさしい繊維 アテンダント制服などで大活躍
エコロジー繊維が使われているユニホーム

【写真1】エコロジー繊維が使われているユニホーム

 万博の歴史をひも解くと、ナイロンなど時代を先取りする繊維が万博を契機に普及しました。この愛・地球博では、地球にやさしい「エコロジー繊維」が大活躍しています。協会職員の制服はもちろん、企業パビリオンで使用される制服にも大量採用されています。万博に見るエコロジー繊維の今を探ってみました。

竹の繊維を使い涼しさ実現

 会場内のサービス施設で活躍している、会場サービスアテンダントたちの制服には、竹繊維が使用されています。制服は75%のウールと、25%の「バンブーレーヨン」の布地からできています。「バンブーレーヨン」は、日本人になじみの深い竹から抽出した成分で作られたエコロジー繊維。夏物衣料を中心に開発が行われ、実用化も進んでいます。通気性が良く、清涼感のある着心地が特徴です。麻のように通気性が良く、また麻よりもきめの細かい生地ができます。

 布地を扱う担当者は「竹の繊維は径が太く、織り込んだ際にできる繊維同士のすき間が綿などに比べて大きいため、通気性が向上します」と、その秘密を説明します。制服の通気性、着心地について、アテンダントの瀬古尚子さんは「インナーは柔らかくて着心地がよく、ジャケットは通気性が良くて涼しく感じます。ごわつきも感じないので、集中して仕事ができます」と満足気な様子です。

 また、吸汗性や速乾性にも優れ、おにぎりなどの食品を竹の皮で包むと日持ちするのと同じように、竹の繊維には抗菌、防臭の作用もあります。


グローバルコモン4案内所 会場サービスアテンダント 瀬古尚子さん

【写真2】グローバルコモン4案内所 会場サービスアテンダント 瀬古尚子さん

「デザインが気に入っていて、毎日『着ること』を楽しんでいます。ユニホームの色やデザインは『会場サービスアテンダント』ということが、お客様から見てひと目で分かるようで、どこにいてもお客様から声を掛けられます。お客様のサポートになれるよう、笑顔でいることはもちろん、身だしなみに気を配ることを常に心掛けています」

環境への負荷が大きい合成繊維

繊維の種類

天然繊維 動物性繊維 羊毛、アンゴラ、カシミヤ、モヘヤ 動物の体毛から作られています。やわらかさ、温かさを持ち、湿気をよく吸収します。
蚕のまゆから作られた繊維。さらっとした風合いや光沢を持っています。
植物性繊維 綿、麻 紙と同じ「繊維素」といわれる成分でできています。熱に強く水分をよく吸収します。
化学繊維 再生繊維 レーヨン、キュプラ ほとんどが天然の「繊維素」を取り出し化学処理で繊維にしたものです。合成繊維と混紡し、丈夫にして使います。
半合成繊維 アセテート、トリアセテート 天然の原料に化学薬品を反応させて作ります。ネクタイ、衣服の裏地などに使用されています。
合成繊維 ナイロン、ポリエステル、アクリル 破れにくく、濡れても型崩れしません。染色しやすく、発色性が良いのが特徴です。

 博覧会協会がエコロジー繊維を採用したのは、愛・地球博が廃棄物の発生抑制(リデュース)、再利用(リユース)、再資源化(リサイクル)の「3R」を掲げ、自ら積極的に実践しているからです。

 非常に細長く糸に紡ぐことができるのが繊維です。繊維は糸となり、糸から布が織られますが、繊維は天然繊維と化学繊維に大別されます。天然繊維は、毛や絹などの動物性繊維、綿や麻などの植物性繊維に分けることができます。

 一方、化学繊維は再生繊維、半合成繊維、合成繊維に分類されます。再生繊維は天然繊維を繊維として再生したもので、レーヨンが代表的です。アセテートといった半合成繊維は天然繊維から合成しています。化学繊維といっても、再生繊維と半合成繊維は、パルプといった天然素材を化学的な処理で繊維にしたものです。

 これに対して、ナイロン、ポリエステルといった合成繊維は石油などから化学的に作り出されました。天然繊維になかった新たな特性、機能も持つため、急速に天然繊維にとって代わっています。しかし、合成繊維は石油を消費し、廃棄すれば環境への負荷が大きいのも事実です。

 これに対し、製造工程での環境負担を抑えたもの、植物の特長を生かし、廃棄時には土に返るもの、資源を再利用するものなどが「エコロジー繊維」と呼ばれています。


トウモロコシ、ケナフから布製バッグ

 会場サービスアテンダントたちが普段持ち歩いている白いトートバッグは、トウモロコシなどのでんぷんから得られる乳酸を原料とした繊維と、成長が早い植物・ケナフの繊維が使われています。いずれも非石油系の新しい繊維であるため、バクテリアが分解することで土に返すこともできます。

 ただし、このバッグはまだ開発研究段階です。「150度以上の熱に弱い」「染まりにくい」などの欠点克服が課題となっています。また、竹繊維を使用したアテンダント制服も「難点は、すぐにしわになってしまうこと。外に出てお客様をご案内することも多いので、なるべくしわにならないよう、立ち居振る舞いには気をつけています」という声があります。さらにエコロジー繊維の価格が割高であることなど、解決すべき課題が残されているのも事実です。


【写真3】トートバッグとバイオマス食器

トウモロコシのでんぷんなどから得られる「ポリ乳酸」は、会場のレストランで使われている「バイオマス食器」の原料でもあります

トートバッグとバイオマス食器

一般的になった再生ポリエステル利用

 しかし、地球にやさしい繊維への期待、普及への動きが弱まることはありません。こうした課題克服への地道な取り組みがなされています。現に、協会職員向け以外でも、企業パビリオンを中心に、再生ポリエステルを使用した制服が一般的となっています。再生ポリエステルは廃棄されたペットボトルなどを原料としており、「3R」の一つである省資源化(リデュース)に貢献しています。さらに、この制服は閉会後には断熱材・防音材に生まれ変わります。

 私たちは、身に着けている衣服からも環境を考える時代を迎えています。人に彩りを与える衣服ですが、これからは、地球の美しい彩りを守っていくために、素材を選ぶことが求められています。

愛・地球博で見られるエコロジーユニホームのファッションショー

 愛・地球博では、企業館をはじめとするさまざまなパビリオン、レストランなどのユニホームに「エコロジー素材」が使われています。

グローバル・ハウス アテンダントユニホーム

【写真4】グローバル・ハウス アテンダントユニホーム

天然繊維と化学繊維の混紡生地を採用しています。天然素材である「綿」と原料が綿である再生繊維の「キュプラ」により、機能面、耐久性、速乾性を持ち合わせたユニホームとなっています。これらの生地は、廃棄時に燃焼しても有害なガスを出さず、バクテリアによって分解されるので、土に返ります。

【写真5】JR東海 超電導リニア館 アテンダントユニホーム

「超電導リニア」の車体カラーであるブルーとホワイトを基調とし、エッジの効いたデザインが施されています。素材は、ペットボトルなどを原料とする「再生ポリエステル」を使用。会期終了後に不要になったユニホームは、可能な限りフェルトなどの断熱材や防音材へのリサイクルが行われます。

JR東海 超電導リニア館 アテンダントユニホーム
わんパク宝島 「熱帯!バナナ村」 バナナファイバーエプロン

【写真6】わんパク宝島 「熱帯!バナナ村」 バナナファイバーエプロン

すき紙体験ができる「熱帯!バナナ村」では、体験時、子どもたちが「バナナファイバー」で作られたエプロンを着用します。「バナナファイバー」は、バナナの樹皮の成分を抽出した繊維で生地を作り出します。

  • トヨタグループ館・・・・・・ペットボトルを再生した再生ポリエステル素材を使用
  • ガスパビリオン・・・・・・会期終了後は、防音材へのリサイクルを計画
  • 夢みる山・・・・・・ペットボトルを再生した再生ポリエステル素材を使用

愛・地球博から普及が加速!?

 万博で広くお披露目され、20世紀の「衣」を変えたといわれるのが合成繊維のナイロン。ナイロンストッキングは1939~1940年に開催されたニューヨーク万博で初展示され、1940年5月にアメリカの主要都市で発売されました。絹の代替品として開発されましたが、絹の透明性と綿毛の強じんさを併せ持つ繊維として、たちまち市場に受け入れられました。愛・地球博で活躍する「エコロジー繊維」も、これを契機に一気に普及するか、大いに注目されています。