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エコロジーレポート

バイオ・ラングはハイテク緑化壁 地球温暖化防止に貢献する自然のクーラー

 愛・地球博長久手会場の中央部に世界最大規模の緑化壁がそびえています。その名は「バイオ・ラング」。生物を意味する「バイオ」と肺の「ラング」を組み合わせたものです。この緑の肺は、光と水と空気の健全な循環を復活させる、新しい都市緑化の切り札となる可能性を秘めています。

 都市に緑が戻れば、都市部の気温上昇が避けられ、冷房依存が一層の依存につながるという悪循環を断ち切る助けになります。従来の化石燃料の消費増は、大気中の二酸化炭素を増やし、地球温暖化に拍車をかけています。植物は、空気中の二酸化炭素を吸収し、緑化は都市に安らぎを与えます。バイオ・ラングには、こうした「一石三鳥」効果が期待されています。

樹木が二酸化炭素を固定・吸収する仕組み

 植物は、太陽の光の力をかり、空気中から吸収した二酸化炭素と根から吸収した水を使い、自分で養分を作りだし、酸素を放出しています。植物は、水と光と空気の健全な循環に不可欠な存在です【図1】

【図1】光合成の仕組み

光合成の仕組み

【写真1】花と緑で埋め尽くされるバイオ・ラング

バイオ・ラング回廊

最新ハイテク造園技術で実現

 センターゾーンの愛・地球広場「エキスポビジョン」の奥にあるバイオ・ラングは、長さ150メートル、2本のシンボルタワーの高さは25メートルにもなります。垂直花壇による総緑化面積は約3500平方メートルと世界最大級の規模です。約200種20万株の草花や樹木で埋め尽くされ、季節の花々が来場者の目を楽しませています。

 しかし、水平な地面に垂直に生育する植物を、垂直な地面に育てるのは容易ではありません。バイオ・ラングは、給水方法など数多くの最新ハイテク造園技術があって、初めて実現しました。

 壁に必要な土壌を確保するだけでなく、緑化壁が高くなれば、新しい給水方法や草花の安全な設置方法の開発が不可欠です。こうした栽培技術は、造園、建設業界だけでなく、金属やプラスチック業界など、さまざまな18の企業が知恵を出し合った結果です。

 バイオ・ラングを観察すると、20種類の緑化パネルがあることがわかります。この巨大な垂直緑化壁は1125枚のパネルで組み上げられています。

カセット式壁面
 工場での大量生産化を実現し、平屋根、傾斜屋根、壁面などの多用途に使えるシステムです。パネル内部に軽量土壌が使用され、均一に給水できる構造を持っています。リサイクルプラスチックも使用し、パネル1枚あたり10キロ程度と軽いのも特徴です。

カセット式壁面

特殊セラミック壁面
 外壁タイルそのものが、土壌機能を持っています。多孔質なため、土と同じように保水性、排水性、通気性があります。石炭灰や屑ガラスを主原料とするリサイクル材料から作られますが、断熱・防音・耐久性に優れ、施工やメンテナンスの簡単さも特徴です。

特殊セラミック壁面

ポケット型壁面
 パネル本体と植栽ポケットを一体化したシステムです。ポケットに広く植えられる植物は、本体の土の中まで根を張るため、草花から低木まで多くの植物を自然に生育させることができます。本体の土は布に詰められ、保水機能を高めているため、維持管理が簡単です。

ポケット型壁面

新たな都市緑地景観を創造

 大都市では、緑化対策として屋上緑化などが推進されています。しかし、屋上庭園は、あくまで高いところにある水平庭園です。これに対し、垂直庭園は、土地の効率的利用に加え、新たな都市景観を創造します。

 バイオ・ラングでは、庭、野辺、里山、奥山といったテーマに沿って、植物が計画的に配置され、豊かな日本の植生を再現しようとしています。中央の一段と高くなっている2つのシンボルタワーは「天空鎮守の森」と名付けられています。サトザクラなどが植えられ、日本の照葉樹林の美しさ、豊かさを表現しています。

 会場で説明にあたるスタッフが、「バイオ・ラングは自然の中に人間の居場所を作るという日本人の自然感に裏打ちされています」と話すように、大自然の凝縮を都会で味わえる魅力があります。【写真2】

人工の霧噴射で涼しさ倍増

 植物は、水分を空気中に放出、その気化熱で気温を下げる力を持っています。豊かな緑は自然のクーラーといわれるゆえんです。バイオ・ラングは、夏の暑さ対策として自然の気化熱だけでなく、1000カ所から霧が人工的に噴射されます。緑化壁の間の回廊は保水性舗装を施し、気温を下げる効果を一層高めています。【動画1】

【写真2】バイオ・ラングのシンボルタワー

バイオ・ラングのシンボルタワー

【動画1】回廊は、来場者にとっても“癒やし”の空間

動画1の画像
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【写真3】夜は緑化壁の照明と大型スクリーン映像とによる光の競演「バイオ・ラングシンフォニー ~環~」があり、都市空間にふさわしい演出も好評です。

バイオ・ラングシンフォニー ~環~

その場でわかる環境改善データ

 バイオ・ラングでは、ヒンヤリ効果のみならず、防音効果、植物の育成状況などを観測、隣接する「水と緑のパビリオン」では刻々と変化するデータを見ることができます。21世紀の新しい都市緑化の実力を先取り体感できます。

4月9日の温度変化 ※左端の非緑化面と、緑化壁の温度差が顕著に数字に表れています

 

環境問題 用語ミニ解説

地球温暖化
 二酸化炭素をはじめとする熱を蓄える温室効果ガスの濃度が上昇することで、地球の気温が高くなること。温室効果ガス濃度が下がれば、地球は宇宙空間に熱を放出でき、温暖化傾向を抑えることができます。しかし、化石燃料の大量消費による二酸化炭素の排出増に加え、二酸化炭素を吸収してきた森林破壊が同時進行しており、温暖化防止対策が急務となっています

ヒートアイランド現象
 都市部の温度が、周辺部より高くなる現象。特に風のない夏の夜間に顕著で、建物や道路への蓄熱、緑地面積の減少による水分の蒸発量減、都市活動に伴う排熱量増大が原因です

化石燃料
 太古の生物が大地の中で生まれ変わったもので、石炭、石油、天然ガスなどが代表。非常に便利だが限りがあり、これらのエネルギーを大量に燃やすことで、地球温暖化などの環境問題が起こっています。