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エコロジーレポート

インタープリター、ただいま活躍中 通訳します 自然のメッセージ

インタープリターの画像

【写真1】インタープリターが自然へといざなう

 都市化などによって、身近な自然が失われつつある現代、子どもに限らず大人までも「自然との付き合い方が分からない」という人が多くいます。そこで、自然との付き合い方や自然の発する言葉を伝え、喜びや感動を分かち合う環境教育が近年、ますます重要視されています。

 愛・地球博では、開幕以前から、こうした教育の要となるインタープリターを養成してきました。そして、閉幕後も環境教育の将来を担う「人材」を社会に残そうとしています。【写真1】


約100年前、米国の国立公園で登場

 インタープリターとは、通訳者を意味します。環境教育では、自然の生態を説明しながら、自然のメッセージを人々に伝える仕事を指します。米国の国立公園で約100年前に登場し、日本でも1980年代後半から注目されるようになりました。

 愛・地球博では、長久手会場の「森の自然学校」や瀬戸会場の「里の自然学校」で、自然の中へと案内するスタッフをいいます。森や里山を歩くツアーでは、さまざまな自然体験を提供し、森の中に絵本のパネルを1ページずつ置いた「絵ものがたりの散歩道」(長久手会場)では、訪れる人に語りかけるなど、来場者を自然へといざなっています。【動画1】


【動画1】「絵ものがたりの散歩道」を歩いてみる

動画1の画像
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森の妖精になって思い思いの体験

 「森の中にはたくさんの妖精がいるんです。今日は皆さんが妖精になって、仲間に会いに行きましょう」。森の自然学校でツアーが始まりました。この日は「森人(もりんちゅ)」 と名付けた5センチほどの人形を森の中に置き、彼らの声を代弁するという体験学習。いつもと違う視点で森を見ることが狙いです。

 手渡された紙の筒で森をのぞくと、小さな森人が見る森が体験できます。森人には、すべてが巨大に感じられます。木の幹は、まるで大きな壁。葉っぱは、ふかふかのベッド。チョウは、空飛ぶじゅうたんか。

 そのうち、インタープリターの「ガー、ガー」というカラスに似た笛の音が響き、集合の合図。森人の人形が渡され、参加者は、森に散らばり、思い思いに森人を置きます。

「いい湯だなあ」と木株の水たまりに森人を置いたり、「朝は鳥 夜は星見て ねんねする」と句を詠む高年の参加者、「急に雨が降ってきた。逃げろ」と書く子どもらと、さまざま。最後は、参加者が、森人を自分の胸に当てて心を通わし、箱に返します。

 金沢市から家族で訪れた小学4年生の山本牧さん(9歳)は、インタープリターに向かって言いました。「私たちには小さく見える葉っぱや木も、森人にとっては大きくて大切なんですね」。【写真2】【写真3】【写真4】


【写真2】筒でのぞくと、森人が見る森が体験できます。木の幹は大きな壁のよう

筒でのぞくと、森人が見る森が体験できます。木の幹は大きな壁のようです

【写真3】さまざまな自然をのぞいてみる

くさまざまな自然をのぞいてみる

【写真4】葉っぱの上で日光浴する森人

葉っぱの上で日光浴する森人

環境教育は「教える」から「啓発する」へ

 こうした体験学習の目的について、森と里の自然学校の総合プロデューサー・川嶋直さん(52歳)は「これまでの環境教育は、自然や環境に対する知識を与え『教える』教育が主流でした。しかし、近年は、実際の行動や興味をどのように『啓発する』か、という能力が問われています」と強調します。

 インタープリターが行うプログラムが、啓発手法として、日本でも1980年ごろから注目され、国立公園や民間の環境教育施設に導入されています。現在は、自然と触れ合う機会の提供と「自ら考える」能力の育成を目的として、学習塾が、プログラムに取り組む傾向もあります。

 愛・地球博では、閉幕後も自分の住む地域で、環境教育に取り組む人材育成を目的に、2003年12月からインタープリターを育ててきました。会場内で活躍する100人のうち、70人が新たに養成された人たちです。大学生や主婦、公務員ら、経歴がさまざまな20代前半から70代までが、森と里の自然学校を支えています。

 メンバーが、インタープリターを目指したきっかけは、さまざま。「野生動物の保護を目指して研究を進めるうち、研究者だけでなく、人々にその重要性を伝える人材が必要だと気付いた」(横山恵美さん、27歳)、「芸術家としての感性をインタープリターの活動に生かしたい」(地元の陶芸家・松野外志子さん、56歳)など。

 愛知県は閉幕後も自然学校の拠点を残すことを決めており「万博の精神を引き継いで、地元の自然を語り続けていきたい」と話すインタープリターもいます。【写真5】


【写真5】子どもに自然を解説する横山恵美さん(右)

水のループ循環図の画像

問われるコミュニケーション力

 人に何かを伝えるのは、難しいことです。

 「参加者の環境への知識を高めたい」と門をくぐるインタープリターも多くいますが、求められる能力は、むしろコミュニケーション力。通常の自然体験学習では、元々関心が高い参加者が多いのに対し、万博では、40万人以上の参加者が見込まれているため、環境への関心が高い人ばかりとは限りません。

 そこで、インタープリターたちが課題としているのは「答えを期待しない問いの投げかけ」と「参加者同士の関係づくり」。共通の関心や経験に関連付けることで興味を引き、答えが一つではない問いに参加者同士が意見を交わすことによって、興味を持続させることを目指しています。

 「育て自然の通訳者」─。愛・地球博が社会に残す人材、インタープリターたちの挑戦は続きます。【動画2】

【動画2】森の自然学校をインタープリターと歩く

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