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エコロジーレポート

理想的な水循環を提示 

センターゾーンに体験散歩道など

 水は雨として大地に降り注ぎ、雨は森林や土壌から染み込み地下水として蓄えられます。また川を下り、海に注ぎ、蒸発して再び雨となって戻ります。水はさまざまに形を変えながら地球を循環しているのです。

 しかし、都市の拡大化に伴い、水循環の悪化が叫ばれています。水は、家庭・工場排水で汚され、汚濁物質を含みながら循環。さらにはアスファルトやコンクリートの増加により、雨水の地下浸透効果の低下が問題視されています。

 現代の地球では、「水の悪循環」が進んでいるのかもしれません。悪循環がはびこる地球の水……私たちはこれをくいとめることができるのでしょうか?

地球の水循環図

最新のセラミック膜で浄化

 環境に優しく、水を大切にするために、愛・地球博会場では水の再利用の工夫がされています。

 センターゾーンでは、はす池の水がバイオ・ラング横にある水質浄化施設に運ばれ、「セラミック膜エレメント」という最新設備で浄化。1ミリメートルの千分の1(1ミクロン)の穴を水が通ることによって、水中の細かな汚れをろ過します。この穴の大きさは、従来使用されていた砂ろ過設備の千分の1。これが、池の水から飲み水程度にまで変化する秘密です。

 きれいに浄化された水は、愛・地球広場の周囲を回る「水のループ」となり、循環しています。【写真1】【写真2】


【写真1】水質浄化施設の「セラミック膜エレメント」ろ過機

ろ過機の画像

【写真2】左:ろ過した水(浄化後) 右:はす池の水(浄化前)

浄化された水の画像

「くねくね体験散歩道」で活躍

 水質浄化施設できれいになったはす池の水は、「水のループ」を通り「くねくね体験散歩道」に運ばれます。ここは雨の力や水の働きを、水と遊びながら体感できる施設。暑い日には、涼を求めてたくさんのお客さんが散策にやってきます。使用された水は再び「水のループ」を通り、はす池へと戻ります。【写真3】

「水のループ」循環図

水のループ循環図の画像

【写真3】「くねくね体験散歩道」

くねくね散歩道の画像

高浸透性土壌の実験も

 自然界では、雨水は地下浸透する過程で浄化されます。しかしながら、水がほとんど浸透しないコンクリートやアスファルトが増加した現代社会では、浸透率が低下。さらに水の浄化機能が低下しています。水と大地の良い循環を取り戻す第一歩として、地下浸透を回復させる必要があります。

 「くねくね散歩道」では、低下した地下浸透性を回復させるために開発された、環境に優しい高浸透性土壌「ガラスカレット」の浸透実験が行われています。【写真4】

 日本では、リサイクルの難しい「着色ガラス瓶」が年間200万トン以上廃棄されており、これらの廃棄ガラス瓶を粉砕して作られたのが「ガラスカレット」。土と混ぜ合わせて使いますが、その浸透性は、造成土壌と比べても、大幅な増大が見られます。ガラスカレットは、リサイクルにも大きく貢献する上に、スムーズな雨水の浸透を促進します。すでに、学校のグラウンドなどで実際に使用されています。【写真5】


【写真4】地下浸透実験装置

地下浸透実験装置の画像

【写真5】ガラスカレット

ガラスカレットの画像

ガラスカレットをみてみよう

ガラスカレットモニュメント
廃棄着色ガラスをモニュメント展示

 透明なガラス瓶はリサイクルされ再び瓶になりますが、色のついたものは色ごとに分別するのに大幅な手間やコストが掛かるためほとんどリサイクルされません。「くねくね体験散歩道」にはガラスカレットになる前の大量の色つき瓶の廃棄ガラスが、リサイクルへの願いを込めたモニュメントとして展示されています。【写真6】

花壇(土の団粒化)
通気性、通水性が良く 草花がスクスク

 「くねくね体験散歩道」にある花壇では、普通の造成土と、ガラスカレットが混ぜ合わされた土で、草花の成長の過程を比較実験しています。ガラスカレットが混合された土壌は通気性・通水性が良くなり、団粒を生成します。「団粒」とは、粉状の土がくっつきあい、直径1~10ミリメートルの粒になったもの。団粒の土壌では、土中の微生物が元気にはたらき、さらには草花の生育に役立つのです。【写真7】


【写真6】ガラスカレットモニュメント

ガラスカレットモニュメントの画像

【写真7】土壌比較実験中の花壇

土壌比較実験中の花壇の画像

まだまだあります、水を体感する施設

降雨体験施設
記録的な豪雨の体験も

 雨は、時に脅威へと変わります。ここでは、昨年、台風21号の上陸時に三重県宮川村で観測された、記録的な「1時間あたり119ミリの降水量」という状況を再現しています。傘をさしてトンネル内に降る雨の中を歩くと、傘に当たる雨音が大きく、声が聞こえないほどです。水の持つエネルギーのすごさを体験することができます。【写真8】

冷風機施設
気化熱を利用し、快適な空気を作り出す

 気化熱とは、水が蒸発する時に周りから熱を奪う現象。散歩道内の「冷風機施設」では、この気化熱を利用し、トンネル内に涼しい風を起こしています。湿度は約80%ですが、気温は約15度と低く快適な空間が演出されています。【写真9】

【写真9】冷風機施設 冷風機施設の画像

【写真8】降雨体験施設

降雨体験施設の画像

くねくね体験散歩道全体図

日本では雨水の利用率は降水量の12~13%

 雨は水資源として重要ですが、日本を例としてみると、年間降水量1700ミリメートルのうち、約40%(683ミリメートル)が蒸発。残りの約60%(1027ミリメートル)が河川や地下水として利用可能になります。しかしダムや貯水場などを通り、実際に利用可能となるのは、さらにその3分の1。年間降水量の12~13%程度しかありません。このため、気候の変動などにもよりますが、東京では3年に1度の割合で渇水が起きているのです。

 私たちは水を汚さないこと、水の循環を回復することはもちろん、限りある水を大事に使うこと――「節水」を心掛けなければなりません。【写真10】


問われている具体的な取り組み

 日本の家庭で使われる水は、一日あたり200~300リットルにのぼります。世界の平均144リットルに比べると、大きな差があることが分かります。

■私たちができる家庭での取り組み
  • シャワーは短めを心掛ける
  • 浴槽の残り湯を洗濯や掃除に活用する
  • 食器は水をためて洗う
  • せっけん、練り歯磨き、シャンプーなどの洗剤は少なめに使用
  • 台所のこし網や三角コーナーなどの網目を小さくし、ごみが排水に紛れ込まないよう注意する
  • 米のとぎ汁は庭の植木にまいたり、掃除用洗剤代わりにするなどの有効利用を心掛ける
  •  愛・地球博では「水のループ」で理想的な水の循環を提案しています。しかし、汚れた水を大地に流せば、そのツケは、やがて私たちの元に返ってきます。みんなが大量の水を使えば、やがて渇水の被害に見舞われるでしょう。汚れた水の排出を最小限に食い止めるため、そして水を浪費しないために、私たちができる具体的な取り組みの積み重ねが大切です。

【写真10】日本の降水量を示すモニュメント(くねくね体験散歩道内)

モニュメントの画像