「自然の叡智」をテーマに掲げる愛・地球博は、自然豊かな丘陵地の会場設計自体に「環境万博」の精神を貫いています。従来の万博のように新たな敷地に会場を造るのでなく、愛知青少年公園の地形や施設を生かして建設し、閉幕後に公園に戻すことを前提に会場設計をしました。そこに「リデュース(ごみになるものを減らすこと)」「リユース(再利用すること)」「リサイクル(再生して原材料とすること)」の「3R」のコンセプトが見えてきます。
会場マップを広げると、「グローバル・コモン」と呼ぶパビリオンの集合体と、「グローバル・ループ」というひょうたん型の回廊が目に入ります。
会場は、元の地形を生かして、森や池はそのまま残し、野球場やテニスコートなどに「グローバル・コモン」を作り、「グローバル・ループ」で結びました。
このように、自然環境を保全し地形を有効活用した会場づくりがスタートしました。【写真1】
敷地を調査すると「点在するグラウンドなどの造成地」「10階建てのビルに相当する40メートルの高低差」「稀少生物の生息域の存在」など、会場設計にあたってさまざまな問題が浮上しました。このため、老若男女を問わず会場を初めて訪れる人々を想定し、会場を一望できる構成、バリアフリーの快適性、安全に楽しめる環境を重視。会場の各施設を結ぶメーンルートとして、大回廊の「グローバル・ループ」を用意しました。【図1】【動画1】
1. 鉄扇構造
支柱を減らすため、約200カ所の扇状に開いた柱(鉄扇)で約2.6キロメートルのグローバル・ループを支えています。支柱を大幅に減らすことができ、土地への負担を軽減しています。ループにはトラムや緊急車両も走りますが、震度7の地震にも耐えうる耐久性をもっています。【写真3】
2. スチール杭(くい)
鉄扇を支える地中に埋め込んだ杭は、リサイクル・リユースできるスチール素材を使用しています。再利用しやすいように、先端に羽の付いた特殊な形状をしており、逆回転で引き抜くことができる工夫を施してあります。
3. 木の触感
歩行者が疲れず歩きやすいよう、グローバル・ループの表面は、2種類の木材をふんだんに使用しており、真夏の日差しの照り返しを押さえることにも効果があります。幅21メートルのうち、グローバル・トラムや自転車タクシーなどが通る中央部6メートルに再生有機性木材(木チップとプラスチックの廃材で合成)、両端には植林されたユーカリを使用しています。【写真4】
愛・地球博には、100を超える国々が参加しています。それらを6つの大陸別に分類して「グローバル・コモン」に集約しました。外国パビリオンが集まる「グローバル・コモン」は、青少年公園の平らな土地を最大限活用しています。
土地配分方式を採用してきた従来の万博と異なり、資源の有効活用の観点から、規格化した土地と建物を用意する「モジュール方式」を初めて採用しました。内装を施すだけで展示空間を作れる方式です。伝統的日本建築のお座敷のように、空間を何にでも使用できることをヒントにしました。参加国の負担を減らして多くの国が参加できるように考案したものです。1モジュールは、縦横それぞれ18メートル、高さ9メートルです。広いスペースが必要な場合は、複数のモジュールを組み合わせて使います。
それぞれの建物は、解体・再利用がしやすいので、閉幕後、スクラップとせずに仮設住宅や商業施設などへの転用が可能です。具体的な利用方法については、参加各国と地元自治体との間で検討が進んでいます。【写真5】
パビリオンでも「3R」のコンセプトが随所に生かされています。
建物全体を、軽量で再利用しやすい「竹」で覆っています。独自の燻煙(くんえん)処理でカビや割れを克服した竹によるケージは、熱負担を低減する効果があります。また、外壁は、トウモロコシを原料としたプラスチック、発泡緩衝材とエアキャップを組み合わせた「生分解性プラスチック」を活用し、構造材には「間伐材」の束ね柱を開発するなど、館全体に自然に還る素材を積極的に取り入れています【動画2】
一般的な建築物に使用される軽量鉄骨規格材を使用して、鉄骨に穴を開けたり溶接をせずにボルトで鉄骨を挟み込む「摩擦締結工法」で組み上げています。また、外壁には「古紙再生紙」を使用し、内壁の一部には、育成が早くCO2吸収率が高いことで森林資源の保全や地球温暖化防止に役立つといわれる植物の「ケナフ材」が使用されています。閉幕後は、すべての建築資材をリユース・リサイクルすることで建設廃棄物をゼロとします【写真6】
外壁は、建築の「仮設用単管」を利用し、5000カ所以上の接合部は既製品バンドで単管ジョイントを固定しています。単管・ジョイント・つかみ金物すべてに既製品またはリース品を利用し、閉幕後には建築現場で再利用されます【写真7】
パビリオン内の一部の柱で、木のチップを固めた支柱にエゾマツの皮を巻き付ける方法を用いています。閉幕後は解体して持ち帰り、イスタンブールの歴史博物館の一部に使用する予定です
公園施設を最大限に利用した会場は、閉幕後、ドーム・ホール・迎賓館などの施設をできるだけそのまま残す「リデュース(ごみになるものを減らすこと)」、パビリオンなどを移築する「リユース(再利用すること)」、やむを得ず解体した具材を有効活用する「リサイクル(再生して原材料とすること)」の「3R」の道を探ります。コンクリートなどの廃棄物については、リサイクル率の目標を95%としています。
「環境万博」は、3R(リデュース、リユース、リサイクル)をコンセプトとした会場づくりに徹底して取り組み、その理解と重要性を世界に発信し愛・地球博の使命を訴えます。【写真8】
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