自分が食べている米や野菜がどのように生まれたか知っていますか?自給自足を営んでいたころは、時間をかけて土を耕し、天然の肥料を施し、季節に合った作物を栽培・収穫していました。しかし、時代の流れとともに、低価格で商品価値のある作物を作るために、化学肥料や農薬を使うようになり、安全性や土壌への配慮が後回しになってしまいました。このような化学農業に対し、1970年代後半にオーストラリアで生まれたのが「パーマカルチャー」です。「パーマネント(永久の)」、「アグリカルチャー(農業)」、そして、「カルチャー(文化)」の意味も含む造語です。自然の摂理を上手に組み合わせて、人と環境に負担の少ない「持続可能な、無農薬、有機栽培農業」を目指しています。この取り組みを愛・地球博の会場で紹介しているのが、地球市民村にある「オーガニックガーデン」です。【図1】
オーガニックガーデンでは、土地の斜面や高低差など、自然な地形を利用しながら行う農業のモデルが見られます。ミミズを使った「生ごみ処理機」や、植物の吸収作用を利用した「植物浄水器」、石をらせん状に積み上げた「3次元の畑」などなど。そこでは、パーマカルチャーの実践編に触れられます。
オーガニックガーデンの取り組みの一つである、ミミズコンポストは、生ごみを堆肥に変える“魔法の箱”です。縦60センチ、横90センチ、高さ50センチの木箱です。箱には、ココナッツの殻を原料としている保水用土(ココピート)と、およそ1キログラムのシマミミズが入っています。最上部に生ごみを置きます。最初は少なめに、そして少しずつ量を増やしていきます。“魔法の箱”の仕掛けは、いたって簡単。あとは、ミミズが生ごみを食べてふんをすると、栄養分を含んだ立派な堆肥ができます。
隣接するナチュラルフードカフェで出る生ごみは、1日7-8キログラム。このうち、約100グラムを箱に入れます。投入する生ごみの量に限界はありますが、毎日少し気にかけるだけで、約半年後には堆肥として使うことができます。ミミズコンポストは、電気を使わず、手軽に始められるというメリットと、何よりも、化学肥料と違い毒性がないのが一番の魅力です。難しいものではありません。ミミズを飼っていることを楽しめるかどうかがカギです。【動画1】
雨水や雑排水を、無数の穴が開いているセラミック多孔質の特性と水溶性植物の根を組み合わせ、浄化するシステムが「植物浄水器(バイオジオフィルター)」です。微生物が穴の中に住みついているので、排水中の有機物が分解されて、植物の根から吸収されます。浄化された水は、畑や水田で撒かれ、作物の成長に役立つことで循環します。オーガニックガーデンでは、高低差を利用して緩やかな流れを作り、セリやクレソンの力で浄水効果を生み出しています。【写真1】
パックに入った鶏肉からはイメージできませんが、餌をついばむニワトリのパワーは、トラクターが耕したような土を生み出します。人とニワトリ、飼育と恩返しの“まあるい”関係です。【写真2】
狭い面積を有効に使う例。高低差、方位を利用し、さまざまな作物を育てることができます。【写真3】
古タイヤをリサイクル。タイヤを重ねて限られたスペースを利用できるのもうれしい。黒いタイヤは集熱効果があり、収穫時期が早まるとか。【写真4】
オーガニックガーデンで栽培した野菜は、訪れる皆さんに観察していただくのを目的としていますので、実際に食べることはできません。でも、これと同じように有機農法で育てられた健康な野菜を、ナチュラルフードカフェで食べることができます。【写真5】
パーマカルチャーは、動植物との助け合いや、省エネによる節約、環境循環型の生活システムを作ることを目的としています。
ミミズコンポスト、バイオジオフィルターは、機械のようにスピーディーではありませんが、自然界の力を活かした一例です。スローなパーマカルチャーが必要な今、本当に必要とされているのは「一人一人の環境への意識」です。個々の意識を高めることが、次の世代にも安全な地球環境を持続する唯一の方法なのです。
それぞれの特性を生かしながら調和を取る「パーマカルチャー」の主張は、人間社会でも共通する大切なことではないでしょうか?【写真6】【動画2】
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