名古屋の暑い夏をいかに涼しく感じてもらうか、ということでいろいろな工夫が考案されています。「打ち水効果」で周辺部が涼しくなることは、随分と知られるようになってきましたが、愛知万博でもこの水の冷却効果を利用した施設がたくさんあり、ここではミスト(霧)を人工的に発生させてその周辺を涼しくする設備を紹介します。ミストの場合は水膜と比べて蒸発が早いのですぐに涼しさを感じることができます。なぜミスト周辺は涼しいか、は後掲をご覧ください。
万博会場の中では、
(1) | コモン5建物 | 建物まわり全体に渡ってミスト |
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(2) | ワンダーサーカス電力館 | 入場待ちエリアにドライミスト 電力館前広場にミスト |
(3) | ループ上のテント部 | テントを支えるポール部からドライミスト。1,824個のノズルを使用 |
(4) | 三菱未来館 | 観覧出口の壁面緑化部からミスト |
(5) | バイオラング | グローバルハウス側の壁面よりミスト。清涼感の演出も兼ねる。 |
(6) | 名古屋市館(大地の塔) | 塔の3辺からミスト(地上から約1/3の高さまで) |
(7) | コモン1デッキ部 | エントランスデッキ周辺部よりミスト |
(8) | 日本広場の竹プランターベンチ | ベンチ上部の噴射機よりミスト |
(9) | こいの池北側の大花壇 | 花壇の中の数個の噴射機よりミスト |
(10) | 日本庭園 | 庭園奥の巨大岩付近(サツキとメイの家方面)の橋の下部よりミスト |
(11) | 長久手愛知県館 | 入場待ちエリアの屋根の端からミスト |
(12) | ガスパビリオン | 屋上の休憩エリア中央部からミスト |
(13) | 瀬戸ゲート | ゲート横の庭園エリアからミスト |
(14) | 地球市民村前 | 北側入り口向かい側の象の足元にある石の下からミスト |
(15) | 風の広場 | 滑り台下部よりミスト |
(16) | コモン2 | アンデス共同館の正面全体から滝とミスト |
などで体感することができます。ただし、ミスト噴射実施時期や条件はそれぞれの施設で異なります。
「水の三態」が「固体」「液体」「気体」というのは小中学校で習ったと思います。それぞれの状態が変化しない間は、熱を加えた分だけ温度が上がっていきます。しかし、状態が変化する時点、たとえば液体から気体へ変化するときは熱を加えて(奪って)も水自身の温度は変わりません。このとき奪った熱を「気化熱」といいます。霧状のミストはまだ水の状態で、その水の周りの熱を奪って水蒸気(気体であって目に見えない)に変化します。奪った熱の分だけ周辺の温度が下がる、という理屈です。
これを実感する方法があります。両手の甲を出して、どちらかを舐めてみます。そして「ふぅー」と吹いてみます。舐めたほうが冷たく感じますね。これは舐めた水分が手の体温(熱)を奪って蒸発したためです。森林を歩くと涼しく感じるのは、陽の光をさえぎっていることだけではなく、木々の葉から水分が蒸発しているわけで、全く同じ原理です。
初めてこの万博会場に足を踏み入れた方は、まず「木」が至るところに使われていることに気づかれるでしょう。会場全体の面積の約半分は森林ゾーンであり、「自然との共生」を謳う万博としてはふさわしいシチュエーションではないでしょうか。ここでは建築物だけではなく足元にも「木」が使われている例をご紹介します。
会場内の4ヶ所ほどに自然にやさしい
「木チップ舗装」
と呼ばれる新しい技術を用いた舗装が紹介され、実際にその上を歩いて体感することができます。この木チップ舗装は、万博会場から発生した間伐材など、従来は廃棄焼却されていた木材を5cm以下のチップに破砕し、型に入れ180℃の高圧水蒸気で約30分間プレスすることによって舗装用ボードとして作られました。原理は木材に含まれるセルロースの結晶構造が変化し、チップが永久変形(形状記憶)することによって、チップ同士が絡まったまま型通りの形状に仕上がるわけです。化学物質は一切使用しておらず、材料は天然の木質材のみであり、環境にやさしい技術です。
万博会場で実際に敷き詰められているのは、30cm×50cm×3cmの大きさのもので、歩くと適度な柔らかさを感じ、「とっても気持ちいい」と多くの方からの評価です。柔らかさのある舗装を「弾性舗装」といい、安全で快適に通行できる適正な硬さについて様々な調査研究がなされ、それによると万博会場に敷設された木チップ舗装は衝撃加速度80±10Gで、最も安全で快適と感じる硬さの弾性舗装になっているとのことです。特長を列記しますと
(1) | 天然の木材のみを使用しているため環境にやさしい |
(2) | 安全に分解して、環境に負荷を与えることなく自然に還る |
(3) | 保水性に優れており、気化熱効果が継続しやすい |
(4) | 転倒しても比較的安全な硬さ |
(5) | 歩きやすい硬さ |
(6) | 車いすでも走行しやすい硬さ |
などです。
森の自然学校遊歩道
表面の拡大写真
瀬戸ターミナル
この木チップ舗装用ボードをガーナの砂漠周辺に敷き詰めて、砂漠の拡大防止や緑化を推進する実験研究プロジェクトが岐阜大学農学部を中心として進められています。このように自然との共生を目指した様々な国際的な活動が展開されつつあります。
木チップボードを使用していない所
木チップボードを使用した所 (ガーナ)
太陽光発電は、自然エネルギーを利用した発電システムとして、大人はもちろん子供たちにもすでに馴染みのあるものではないでしょうか?古くは卓上計算機(ソーラー電卓と呼ばれた)が思い浮かびますし、最近では住宅の屋根や、腕時計などにも採用が広がってきています。
愛知万博でも、各所に太陽電池パネルを利用した発電システムが展示され活躍しています。
グローバル・コモン5近くのグローバル・ループ上から左右を眺めてみますと、いくつかの太陽電池パネルを見ることができます。西ゲート付近とスペイン館付近には大きな太陽電池システムが、またグローバル・ループの外周側フェンスには小型の太陽電池システム(日立グループ館に設置されているものと同じ)が設置されています。これらは発電のための構造の違いから大きく3つに分類されます。
それぞれに長所短所があり、ニーズに適合した分野で使われています。特徴を相対的に表わすと、
などです。
(1)と(2)西ゲート付近
(3)スペイン館付近
愛知万博会場に設置されたこれらの太陽電池パネル群は、NEDO技術開発機構が実施する新エネルギー等地域集中実証研究の一環として、燃料電池などと共に新エネルギー発電プラントの一つとして設置されているものです。これら3種類の太陽電池パネル合計で330kWの発電能力があり、新エネルギー発電プラントでの予定総発電電力の15%程度を担う予定です。そしてその電力の大半を長久手日本館で使用します。
どれくらいの大きさのパネルで、どれくらいの電気が作れるのでしょうか?
太陽から地表に届く光のエネルギーは、快晴、垂直受光の条件で1m2当たり約1kWです。実際には装置の変換ロスがあり、また曇りであったり、斜め受光であったり、表面に汚れがあったりするので電気になるのはその一部です。
電気で取り出せるエネルギーを、入射する太陽光エネルギーで割った数字を「変換効率」といい、現在これが10~20%といわれています。仮に変換効率15%とした場合、住宅の屋根に太陽電池パネルを設置して、その家一軒の電力(3kWとして)をまかなうには20㎡が必要となります。実際には曇りの日もあり、常時3kWが得られるわけではありません。
日立グループ館では、両面で受光するという新しい構造の太陽電池パネル(単結晶シリコン型)を、パビリオンのウェイティングスペース付近に設置し、映像展示機器の電力をまかなっていきます。もちろん発電量を常時計測し、その結果を映像機器で表示し、来場者に実感していただきます。
従来の太陽電池パネルは片面受光のため、光を最大限受けられるように傾斜させて設置しますが、両面の場合は垂直に設置する(両面の合計で最大)ことができるので、取り付けのための架台などの材料が大幅に削減できます。また、取り付け方向の自由度も向上します。しかも片面のものと比べて年間発電量能力は約1.3倍あります。傾斜設置の場合は雪や土埃、鳥の糞などが付着して遮光され、発電量変換効率が落ちることがありますが、垂直の場合はその点では有利でしょう。垂直設置ではそのままフェンスなどにすることもでき、利用分野が広がりそうです。
西ゲート付近のグローバル・ループ外周部フェンスにもこのパネルが設置され、新エネルギー発電プラントに組み込まれています。
垂直に設置された太陽電池パネル
建設中のパネル群
太陽電池パネルは、すでに珍しいものではなくなっていますが、いろいろな技術革新が続けられており、万博会場の中でいろいろ見たり聞いたりして、体感していただきたいと思います。
近年、「燃料電池」という言葉をよく耳にするようになりました。英語では<Fuel Cell>といいます。火力発電やガソリンエンジン車のような化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出す現在の方式は、大量の二酸化炭素を排出し、大気汚染・地球温暖化を招いている事はすでによく知られています。
一方でクリーンエネルギーといわれる、汚染物質の排出が少ないエネルギー技術が進展してきています。よく知られているものとして風力発電・太陽光発電などがありますが、その中の一つにこの「燃料電池発電」があります。
万博会場では、コモン5にあるNEDOパビリオンで、NEDO技術開発機構が実施する新エネルギー等地域集中実証研究の一環として、燃料電池発電などを組み合わせた新エネルギーの実証実験が行われます。燃料電池は、基本的には水素と酸素から電気を作り出すことは同じですが、5種類ほどの方式があり、NEDOパビリオンでは下記3種類の方式を実験します。(実証実験の詳細は
実証プラント
をご覧下さい)
会場から排出された生ごみなどでメタン発酵させ、そこから水素を取り出し、燃料電池で発電して、その電気を長久手日本館全館とコモン5の一部へ供給します。予想消費電力は約2,200kWで、その2/3の電力を燃料電池で発電し供給します。西ゲート付近のグローバル・ループから見下ろしますと、コモン5の建物の横に化学プラントのような設備が見えますが、これらが燃料電池発電を中心とした「新エネルギー発電プラント」です。これは、燃料電池発電設備のほかに、燃料を取り出すためのメタン発酵システム、高温ガス化システム(木質を高温でガス化)、そして発電した電気を蓄えておくためのNaS電池電力貯蔵システムなどから構成されています。
燃料電池発電は化石燃料を燃やして発電するのと比べて、高効率で、低騒音・低振動、二酸化炭素などの排出が少ないなど環境にやさしい近未来の技術です。
コモン5以外でも燃料電池で発電してパビリオン電力の一部を賄う実験が行われます。是非立ち寄って、将来の発電がどう変わっていくのか実感してみてください。
新エネルギー発電プラント
MCFC(コモン5の1Fに設置)
皆さんは「電池」というとどんなものを思い浮かべますか?
恐らく大半の方は懐中電灯やテレビのリモコンなどに使われている円筒型のものを想像されるでしょう。車の場合は「バッテリー」と呼んでいますが、それもれっきとした電池です。私たちの身の回りにあるこうした電池を分類してみますと、大きく2つに分けることができます。
これらは取り扱いも容易なことから、生活の中に溶け込んで当たり前のように使われている製品といえます。
一方、新しい形の「電池」と呼ばれるものが出現しています。「太陽電池」と「燃料電池」です。同じ「電池」という単語がくっついていますが、一次・二次電池とは概念が違う、ともいえます。英語で表記しますと、一次・二次電池の場合は<battery>、太陽電池は<solar cell>、燃料電池は<fuel cell>となります。日本語では同じ「電池」でも、英語では<battery>と<cell>になり、燃料電池がなんとなく判りにくい所以がこの辺にありそうですね。
さて、燃料電池を判りやすく解説してみましょう。
小学校の理科の時間に行った「水の電気分解」を思い出してください。水の中に2つの金属板を浸し、その間を電池でつなぐと、マイナス側から水素が、そしてプラス側から酸素が発生するというものです。じつは燃料電池はこの逆を行っているのです。
【水の電気分解】 水+電気 →→→ 水素+酸素
【燃料電池】 水素+酸素 →→→ 水+電気
つまり、水素と酸素から電気(エネルギー)を取り出す事ができるわけです。しかも酸素は空気中にありますので、水素を供給出来れば原理的には発電ができます。排出物は「水」だけなので環境に悪影響を与える事が無いことはいうまでもありません。
燃料電池とは水素と酸素から水と電気を作り出す装置のことを言うわけで、一次・二次電池のように電気をためる機能はありません。同様に太陽電池も光から電気を作り出す装置のことを言い、電気をためる機能はありません。<battery>と<cell>の違いがここにあるわけです。
燃料電池の実用化としては、大きく3つの分野で期待されています。
愛・地球広場に巨大な緑化壁が出現します。その大きさはなんと長さ150メートル、高さ12メートル以上にもおよび、壮大なものです。これは「バイオラング」と呼ばれ、生物を意味する「バイオ」(bio)と肺の「ラング」(lung)を組み合わせた言葉で、「生物の力による都市の肺機能」という意味が込められています。
地球温暖化やヒートアイランド現象などの問題が顕在化する中で、住む人にとって心地よい都市づくりを進めることは、これからますます重要な課題となってきます。高層ビルが林立する都会にあって、緑を広げていくことは容易なことではありません。東京都では一定面積以上の建築物を建てる場合、「屋上等緑化」の義務付けを平成13年4月より実施し、緑化の推進に取り組んでいます。その結果、屋上緑化したビルも増え、そのための技術開発も積極的に行われるようになりました。
一方、国の法律として「景観三法」が平成16年2月に閣議決定され、良好な景観の形成のための規制がなされるようになります。景観と言う意味では壁面緑化は屋上緑化以上に効果を発揮し、加えて、環境面でも、地球温暖化やヒートアイランド現象を抑える効果があり、今後ますます期待されています。
愛知万博で見ていただく「バイオラング」は、植物のもつ環境にやさしい面と、美しい景観を同時に体感していただけます。製作に当たっては15社ほどの企業群が分割して担当し、最新の壁面緑化技術が一堂に会することになります。愛・地球広場から見える面だけでなく2枚の緑化壁で囲まれた花と緑の回廊を歩いていただき、美しさとうるおいを堪能していただけます。
中央の大型スクリーンの両サイドでは、光触媒をコーティングしたケナフ材で作られたテント生地にポケットを設け、バラなどの華やかな植物を植え込む方法を採用しています。他にも樹脂発砲体にセダム植生マットを貼り付けたもの、ピートモスの植生基盤に蔓性植物を植栽したもの、水苔に可憐な野生の草花を植栽したものなど、工夫を凝らした最先端の技術を見ていただくことができます。
セラミックにより活性水を生成してミストにして噴霧することも行われます。その周辺の気温低減効果も同時に得られます。このようにバイオラングは、植物の力によって、二酸化炭素の吸収・酸素の供給、夏季の気温の低減など、都市生活環境の改善、環境負荷の軽減を図る未来の環境装置を提案します。
(左)完成予想図、(右)試験中の壁面緑化
ケナフ(Kenaf)は麻の一種で、非木材として分類されます。一年草にもかかわらず成熟すれば下部が直径3~5cm、高さが3~4mにもなる植物で、広く東南アジアや中国、インド、アフリカ、中南米で多く栽培されています。
特徴として
などがあります。
利用分野は、まだ紙(紙コップ、壁紙など)・繊維(タオル、テントなど)・食品などに限られているが、自動車のドア内張りに使われたり、用途開発が広がり始めている。
通常の鋼板屋根に水を張ると球状になりますが、光触媒である酸化チタンを塗った鋼板の上では、水の表面張力が小さくなり、球状にならないで薄い膜になります。そのため太陽光による蒸発が早くなり、周囲の気化熱を奪って、屋根の裏側の室内温度をより早く下げるように働きます。
日本政府館では、気化熱が最大になるように流す水量を調整して実施します。そして、その効果を測定し、データを公表していきます。
光触媒屋根建設
水を流して試験中
光触媒鋼板(水滴にならない)
一般塗装鋼板(水滴が粒になる)
酸化チタンが触媒となって、光のエネルギーを利用しておこる分解反応です。
自らは変化しないので半永久的に使用でき、紫外線さえあればどこでも反応する廃棄物を出さないクリーンな材料でもあります。
光触媒の機能としては、(1)大気浄化、(2)脱臭、(3)浄水、(4)抗菌、(5)防汚があります。しかも、酸化チタンはチョコレートなどのコート材にも使用されている人体に無害のもので、環境にもやさしい物質であることも注目されています。
「名古屋の夏は暑い」とよく言われます。真夏を会期中に迎える万博では、来場者の方々に少しでも涼しさを感じていただけるような、いろいろな仕掛けが考えられています。特に屋外での暑さが問題で、この不快感を解消する一つに「ドライミスト」の技術があります。
ワンダーサーカス電力館では、パビリオン入場待ちの屋根付き屋外300平方メートルの場所と、前庭イベントステージ周辺60平方メートルに、このドライミスト発生装置を設置します。現在、愛知県日進市の郊外に立つ巨大なテントで実験が行われています。
これはパビリオンの外で順番待ちをしている方々に少しでも涼しく感じていただく為のもので、地上4メートルのところから超微粒子の人工の霧を発生させ、その霧が蒸発するときに周囲の空気から熱を奪い、冷却された空気が下に降りてきて涼しく感じるわけです。霧は極めて細かな粒で蒸散が早く、体に当っても濡れるという感触はほとんどありません。
実験では、温度は平均して2~3度下がる結果が出ています。エアコンでこの効果を出すには20倍のエネルギーが必要になります。まさに環境にやさしい冷却(冷房)装置といえます。
ドライミストの技術的な詳細は
をご覧下さい。
ノズルからの霧の発生
実験用巨大テント
ケージ(Cage)とは「かご」のことで、竹で編んだ巨大なかごをご想像ください。長久手日本館の建物全体をこの竹かごで覆い、遠くから見ると繭が横たわっているような幻想的な雰囲気をかもし出します。大きさは縦90m、横70m、高さ19mです。
(左)竹ケージ外観、(右)内側から見たところ
建設途中(2004.10.25)
建築物としてみると、この竹ケージは3つの構造体から構成されています。
(左)屋根に乗せる前の竹トラス、(右)竹メッシュ
今、日本では竹が増えすぎて、竹害対策が指摘されています。成長スピードが早く(1日に1mも伸びることがある)、きちっと手入れをしないと異常繁殖してしまいます。この竹ケージはこうした竹の有効活用を進める一例を示すもので、長久手日本館では約23,000本の竹が使われます。また暑い夏の日差しを遮って、館内の温度を下げ、空調負荷を軽減してくれます。
詳細は日本館(竹ケージ)をご覧ください。
特に強度や精度が必要な歯車(ギヤ)に、木材を使うという技術が紹介されます。
「木質プラスチック」と呼ばれ、これまでにも木材とプラスチックを複合させたものはありましたが、今回の万博で紹介されるのは木材100%の歯車です。使用される木材は木屑やチップを使い、高温蒸気釜で200度に熱して木の繊維を分解し、一旦乾燥して粉末にした後、再加熱してプレス成型します。このとき粉末の木材が熱流動を起こして飴状になり、冷えると固化してプラスチック状になります。これに歯切り加工を加え、歯車を完成させます。強度はプラスチックのものと比較してもほとんど差はありません。
この歯車は「中部千年共生村」に展示される巨大な千年時計に使われます。歯車の直径は100~900mmで、合計55個使われます。素材は木材で、木工家具などを生産している企業から出る削りクズなど、従来は焼却処分していたものをリサイクルして活用しています。もちろん間伐材や建築廃材の利用も可能です。また、歯切り加工したときに出る加工カスもそのまま再利用できますし、古くなったものは粉砕して再利用したり、土に返すこともできます。生産工程での廃棄物がほとんど出ない、環境にやさしい技術です。
木質プラスチックの歯車
「千年時計」の完成予想図
「中部千年共生村」 についてもあわせてご覧ください。